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いでよ、寅

二〇一七年九月十日日曜日

晴れ

数珠を位牌のまえでおおきなまるを差し出しかき混ぜる。さっき喋った声とは違う喉の使い方をして唱えはじめる。そうして ぼうんっとばあちゃんはやって来た気がした。

と思ったくらいにのんさんはわあんと泣いた。ばあちゃんがのんさん見つけて、あらのんちゃんと駆け寄ったのかもしれない。その場の変化を察したのかもし」ない。帽さんが抱き「だいじょうぶだよー」と背中を撫でて落ち着いてゆく。帽さんのとわたしの数珠を両の手に持つと、もう平気だというようす。ぎゅっと握る柵のようにみえた。あっちとこっちの間が彼女にはみえるのか。

そのあとは目をつむる帽さんや伯母をみて「ねんね」と喋ったり、数珠の糸の部分でいすを撫でたり。あの空間で発話するのは住職さんとのんさんだけ。

線引きのないのんさんにきょうも救われる。

祖母と暮らしていた伯母がこの一年心の揺れがおおきかったのだろうと思う。両親が別れていなかったら伯母の心の行き場はあったのかなと思うと、うまくできているなあと思ってしまう。

晩ごはんは、とまと肉味噌スパゲッティー、冷奴。デザートになしと桃。

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