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土ラジオ

二〇一七年九月二十一日木曜日

晴れ

帽さんを見送りながらたいようの光を背中に浴びて、身体があたたまってゆく。きょうは外で過ごすことにしよう、そう思わせてくれるあたたかさと爽やかな風だった。

夏と秋のいいとこどりのような気候。軽やかな風とコントラスト高めの日差し。三輪車をこいで、のんさんと隣の公園。だいたいこのあたりといういつものところにゴザを敷いておむすびとみそ汁。のんさんは三輪車と戯れたり、裸足になって枯れ葉のうえを歩いたり。しばらくしてゴザを敷いたまますこし歩く。長い枝を持ち、土や落ち葉と交信するのんさん。一年前、ここでざっくざくとイチョウのうえをハイハイしていたのだよと、毎年さまざまな黄色で覆われるちいさな坂のしたに着き、話す。

そこでは、銀杏を拾っている方がいた。初夏のむらさき色の実も、銀杏も、拾っているひとを見かける度、気にかかるも足を止められずにいた。やってみようかな、と銀杏を拾ってみる。ひとつ、ふたつ、みっつ、手でもてるくらいだけと思っていたら、拾っていたおじさんが「はい、これ」とビニール袋をくれた。「手がくさくなっちゃうからね。」「もういいのかい」といくつもいっしょに拾ってくれた。慣れた手つきでひょいひょい取ってはわたしの持つビニール袋にいれてくれる。「まだ早いからね、そんなに取りたくないんだけど」それがどういうことかまだわからなかった。

袋がずっしりとしたころ「このくらいあったらいいかな」と、手をふった。のんさんもしっかり手をふって、袋を持った。

家に着いてのんさんの眠るうちにと、調べながら実と種を分ける。わたしはぐじゅぐじゅしたのは取らず固い実ばかり摘んでいた。実が固いと外れにくくそんな実ばっかりつづくと、なかなか先が遠く感じる。おじさんが摘んでくれたのはじゅくじゅくしたものや潰れたもの。それは、シュルッと実と種が分かれやすい。早く取りたくないというのは、そういうことだったのかあとやっと分かった。やってみたらひとつひとつわかるが増えてゆく。銀杏拾ってよかった。ちょうど分け終えたころにのんさんは昼寝から起きた。

晩ごはんは、肉じゃが、ポテトサラダ、きゅうりのたたき味噌、ステーキ、ごはん。

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