アニメ『葬送のフリーレン』にどハマりした理由
少し前の話なんですけど、『葬送のフリーレン』を観たんですよ。
ご存知ない方のために設定だけ雑にご紹介しておくと、エルフの魔法使いがベタベタな中世ヨーロッパ風世界で仲間と共に冒険するお話。
以前なら絶対観ませんでしたね。
僕はアニメそこそこ好きだけど、異世界ものやモロにファンタジーな世界観は苦手で、どちらかと言えば攻殻機動隊とかキングダムとかゴールデンカムイとか、そっちの方が好みなんです。
主人公が銀髪の女の子 (年齢は1000歳超えてるけど) ってだけでうっすら拒否反応出るのに、そのうえ魔法? 冒険?
そういうのは昭和のRPGだけで充分だろw
って思ってました。でもやけにおすすめに出てくるし話題作でもあったので、まぁちょっとお試しで観てやるかと。
結果、1話目で不覚にも泣けた。
これはヤベェやつだと思いました。何がそんなハマったかと言うと……
※これ以降は第1話のネタバレを含みます。ご注意ください
フリーレンの魅力は、その「静けさ」にある
「静けさ」ですね。
最初からもう、静かで落ち着きすぎてる。あんな静かな冒険ファンタジー、僕はお目にかかったことがありません。
大きな事件とか魔物の大軍が攻めてきたりとか、何も起こらないんですよ。なんせ、すでに冒険が終わった後だから。
ここがまず衝撃でした。
物語ってのは通常、起承転結の「起」から始まります。ファンタジーなら何か良くないことが起こって主人公が立ち上がる。そこから何人かの仲間と出会い、さまざまな敵と戦って成長していくというのがセオリーでしょう。
その固定概念、ものの数秒でぶち壊されます。『葬送のフリーレン』の舞台は魔王を倒した後の世界であり、倒すべき相手のいない世界です。
第1話がココから始まっちゃってるんですね。
だから序盤はこんなふうに、とんでもなく平和に進みます。
王様にお褒めの言葉をいただき、
酒を呑みながら思い出話
夜空に流星が流れる
普通に考えたら最終話なのよ。こんなの最初に持ってきちゃダメでしょ。
ただこれが逆に強いメッセージとして効いてくるというのは、もう少し後でお話ししましょう。
全てを語らないセリフと間
その静けさを生み出すのに一役買っているのが、特徴的なセリフ回しと絶妙な「間」です。
魔王討伐から50年後。再び流星を見に行こうとフリーレンに誘われ、小さな冒険に出かけた仲間たち。50年の月日ですっかり老いてしまった勇者ヒンメルは夜空に光る流星群を眺め、自らの人生を振り返ります。
(間)
(間)
(フリーレンが一瞬微笑み、流星が流れるカットへ)
(長い間)
セリフを少なく抑え、不足している情報は映像と「間」に語らせる。締めはバシッと一言で。
こういったシーンが、フリーレンには数多く登場します。
『葬送のフリーレン』とはどんな作品なのか?
最後に『葬送のフリーレン』とはどんな作品なのか? について触れておきましょう。
勇者の死後、旅に出ようとするフリーレン。そこで交わされる戦士アイゼンとの会話が、このアニメの本質を表しています。
主人公のフリーレンはエルフであり、人間よりもケタ違いに長い時間を生きる。だから寿命の短すぎる人間はフリーレンから見れば「儚い存在」で、勇者たちと過ごした10年にも、これからの50年にも大した感情を抱いていない。
第1話の序盤ではこの点が執拗に強調されます。主人公は人間とほとんど同じ容姿を持ち、仲間として助け合える存在でありながら、寿命という点では理解し合えない「異質な存在」なわけです。
そのエルフが仲間の死をきっかけに、人間を知りたいと思うようになる。これが葬送のフリーレンの「起」であり、僕が感じた「静けさ」の理由でしょう。
魔王という絶対的で圧倒的な目的は不要なんです。なぜならこの物語が、バトル主体のアニメでも軽いノリの萌えアニメでもなく、フリーレンという異質から見た人間のドラマだから。
全員履修すべし
エルフを主人公に据えたのも、そのエルフが自然に溶け込めるファンタジー世界を舞台としたのも、詰まるところ「人間」に焦点を合わせるための仕掛けに思えてしょうがないんですが、あなたはどう感じるでしょうか?
まぁ細かいことはともかく、第1話の情報だけでこんな記事を書きたくなるくらいには魅力的なアニメですよ。ホントに。
僕自身まだ全話観たわけではないので、これから残り3話くらい履修します。
みんなもとりあえず観よう。もしくは原作を読もう。話はそれからだ。
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