見出し画像

ビル風と共に殿方の偽毛も揺れてた話

ビル風とは高層ビル付近で吹く強風の事で建物に当たった風が上方から下方に向かう早い流れを作り局所的に急風を発生させるらしい。

またビルとビルの間を吹き抜ける強風もあるらしい。僕の場合はこのパターンだった。


学校の帰り、いつものようにコソ泥専用のような近道を使いビルの間を歩いていると向かい側からスーツの中年男性がこっちに向かって来ていた。

普段なら誰も通らないのに珍しいなと思っていると、唐突にビル風が吹いた。

するとなんという事でしょう!殿方の毛髪がみるみるうちにズレ始め、パカパカと上下しているではありませんか!しかも当の本人は気づいてないようだった。

それだけ殿方とカツラが固い絆で結ばれていたという事なのだろうか。

いや、風で離れている時点でそのような絆はないなと悟り我に帰る。

そしてこの日使う事はないだろうと思っていた劇的ビフォーアフターのアフターの際の「なんという事でしょう!」が自然と脳内に流れたのが自分でも驚きだった。

もし口に出して言っていたら、僕は申し訳なさで、殿方は恥ずかしさでこの世を去っていただろう。

風によって桃色に光る頭が勢いよく見え隠れする様はまるでハツラツと踊るチアガールのボンボンのようだった。

何も無かったと自分に言い聞かせ、接着剤のありがたみを噛み締めながらその場を後にするが数日間脳裏焼き付いた光景が頭から離れない僕であった。


*信じるか信じないかはあなた次第

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?