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最終稽古を終えて|西居澄


お芝居を作ってて尊い瞬間は、人間が、つまり役者がそこにいるというまさにそのときで、つまり、私が書いた脚本という、それはどこまで突き詰めていっても永遠に私の中での出来事という枠から逃れられないそれらが、その不可避的な枠組みから華麗にしかも当たり前に自然のこととして自ら逃げ出して、しかもそれが役者というあらゆる一通りを兼ね備えたひとりの人間であるということ、そしてその本人がまた芝居や役というものと全身全霊(文字通り全身全霊で)で向き合っているという逆向きの方向性が生じてるというそういうとこで、その均衡は、めちゃくちゃ日常生活、つまり世界と自分の関係性というものにどこまでもたちかえらせてくれて、そしてそこにあるのは新たな輝きというほど素敵なものじゃないけれど、なんらかのかけがえのない新鮮味のようなものをもたらしてくれるもので、私はそうやって、私の書いた脚本という固まった殻が破られ、壊れたその形から予想だにしない在り方で立ち現れてくるものたちが、愛しくて仕方ないな、と思う。つまり予想不可能なこれらを苛立たしいでなく愛しいと思えるということは、わたしペシミストではあるけれどロマンティストなんだよなー、と、思う。と、思えること、というのがまた奇跡っぽくて、この経験が起こってるこの場が尊くて、これが生じてるのはなにより作品と真剣に向き合ってくれる役者たち、ひとえに彼女たちが私にくれた(というと傲慢にきこえるけれど)つまり、一緒にそういう瞬間を作る事ができたことはほんとに嘘みたいにうつくしくて、でもまあ、本筋として、お客様を楽しませることなんだけど(芝居だからね)これは好き嫌いある主義だろうけど、私は、本番の舞台の上には、それまでのあらゆる積み重ねが息づいていると思うから、こういうことも含めて、観に来て欲しい観て欲しいな。

今日は最後の稽古を渋谷ミッションでしてきた。明日は小屋入り、本番は今週末。芝居の外も含めた芝居という芝居、を観に来てください!衣装とセットが可愛い。

2020.2.13 西居澄

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