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ショーン・ニューカムと秘密のカーブボール

ニューカムに飛躍の兆し

補強が一向にやってこないのと、色々課題出し終わったので自軍にいる注目している選手を紹介しようと思います。
元々トッププロスペクトだったニューカムは昨年の8月に外野・内野で活躍していたトレトン・ブルックスとのトレードでジャイアンツからアスレチックスに移籍しました。皆様ご存じの通り投壊気味だったOAKのブルペンを15回で防御率3.00と無難な成績で一時期支えましたが、膝の故障で9月15日以降の登板はありませんでした。
今回はマイナーで燻っていたニューカムの短期間ながらOAKでの成績向上要因と今後の活躍について展望して行きます。

ニューカムは何を変えたのか

①投球配分の変更

まず、左から2022年カブス、2023年前半ジャイアンツ、2023年のアスレチックスに在籍した際の投球配分をグラフに表しました。

赤が4シーム、オレンジがシンカー、茶色がカッター、青がカーブ

2022年CHCではカッター、2023年のSFマイナーではシンカーと速球系の球種を投げていましたが、OAK移籍後はカーブと4シーム中心のシンプルな構成に変化しました。
確かにニューカムのカッターは2022年にはxBA.374、xSLG.731と極端に打ち込まれており、勝負できる球種しか投げないというアプローチは適切だと考えられます。

②カーブの球質変化

以前からニューカムの代名詞といえばカーブでしたが、今年のニューカムのカーブは球質が大きく変わりました。

ニューカムのカーブの縦変化の推移
ニューカムのカーブの横変化

上の図は各年のニューカムのカーブの変化量の推移です。こうして見ると縦変化が少なくなり横変化が大きくなったことは一目瞭然です。またこの横変化はvs AVG(近い速度、リリースポイントの選手と比較した際、平均より何インチ動いているか)ではMLBで2番目の数値を記録しており、なんと2倍以上平均よりも横変化しています。

横変化のvs AVG順

球速に関しても78.9マイルから80.6マイルと約2マイルほど上昇しています。
お股ニキ氏著の『ピッチングデザイン』では理想のカーブについて「なるべく速く、なるべく横変化が強い方が良い」と個人的な感想として取り上げ、「速球と回転軸が真逆な上記のような球は最後まで速球かカーブかの見分けがつかず打ちずらい」としています。

ニューカムの回転軸

ニューカムのカーブの回転軸をここで確認するとちょうど速球の回転軸と真逆であることがわかります。お股ニキ氏のいう「理想のカーブ」に2023年のニューカムは大きく近づいたと言えるでしょう。

③コマンドの向上

今年のニューカムは制球面でも優れていました。

メインで投げた2球種は多少真ん中よりながらも4シームは高め、カーブに関しては左投手の外角、右投手の内角を中心に集めていることがわかります。野球アナリストである森本崚太氏の『野球データ革命』でもゾーン別のデータを用いて「カーブに関しては上記のゾーンに投げることで空振りが最も奪える」ことを明らかにしています。低めにカーブをコントロールできたことも今年のニューカムの収穫と言えるでしょう。

今後の展望

①カーブをゾーン内に入れる

今年のニューカムのカーブはボールゾーンに投げ空振りや凡打を誘う球としての役割を果たしていましたが、今後はカウントをとりにいく球としても使われると考えられます。アスレチックスは昔からゾーン内にボールを集中させることを特に意識付けています。これに関してはニューカムも例外ではなく、コッツェイ監督もゾーンに投げ込める選手だと評価しています。

またニューカム自身も最大の武器であるカーブをストライクに入れることが大事だと記事で話しています。低めへの制球はできているので今後はカーブをゾーン内に入れられれば今年悪かった与四球率の改善が期待できるでしょう。

②速球の回転効率の上昇

ニューカムの4シームはムーブメントで言えば平凡です。速球の球速も落ちており昨年と同じようにカーブと4シームで勝負するとなると少し不安が残ります。
2023年のニューカムの4シームはActive Spin(変化に寄与する回転の割合)88%と改善の余地を残しています。Active Spinを上昇させ特に上方向に浮き上がる速球になれば高めの速球は更なる脅威になるでしょう。

③カーブの更なる高速化

先程も紹介した森本崚太氏の『野球データ革命』では「カーブは速球との比で91パーセント以内であれば速い方が有効である」としています。現在のニューカムの速球は93.4マイルの91%は85マイルあたりなので、現在80マイル台のニューカムのカーブは速くすればするほど有効になると考えられます。

④リリースポイントを低くする

一般的にリリースポイントを低くすることで高めの速球は速く見せることができます。

低めから高めに投げたほうが打者に速球浮き上がっているように見えやすいことが理由です。
リリースポイントを下げるにはそもそも腕のアングルを下げるという選択肢もありますが、メカニクスに大きく関わるため今回はエクステンションをあげるという選択肢を考えます。エクステンションとは日本語でいう「球持ち」に近く、プレートとリリース位置がどれくらい離れているかを表す指標です。今年のニューカムはエクステンションが下位6%と球持ちが悪く、この部分の修正に成功できれば速球を活かすことに繋がると考えます。
しかし、一方でどうすればエクステンションを改善できるかは素人の僕では到底指摘できないので、エクステンションの改善を実際に行なっていると考えられる球団を紹介します。
ミネソタツインズは、エクステンションの良い投手(バーランド、パダック、ロペス、オバー)やリリースポイントが極端に低い投手(ライアン、オルテガ)を多く補強しているチームです。
そんなツインズですが他の投手のエクステンションも一昨年から去年にかけて大きく改善されているケースが確認できました。下の表は2022年から23年にかけてエクステンションの伸び幅が多いものを集計したものです。(データの集計には鯖茶漬さん(@Eikura__Metrics)に協力していただきました。ありがとうございました)

上位10人をピックアップするとツインズの投手(黄色)が4人もおり上位5人のうち3人を占めています。ツインズがエクステンションに対して何かしらのノウハウを持っており、エクステンションを上昇させているとすれば所属は違えど当指標のニューカムの上昇も考えられない話ではありません。

おわりに

今回ニューカムの変化や今後の鍵について書きました。他にも下への落ち幅の強いシンカーの割合を増やす可能性もありすが、OAKも意図あって投げさせてないと思うので今回は割愛しました。膝の手術を受けていることは不安材料ですが、キャンプには戻れるそうなので万全の状態でシーズンに臨んで欲しいです。
ニューカムの活躍を期待するのももちろんですが、ニューカムを支えられるベテラン投手、捕手の補強もやはり期待して待ちたいところです

参考文献


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