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算数も数学もいらない人生を歩みなさい。

私は笑えないほどに算数と数学ができないのです。

小学1年生の1学期。4月の段階で私は算数ができないんだなと痛感しました。

1+2はできる。

5+8もできる。

20+50もできる。

なのに、7-4になるとできなくなる。
引けないの。
減らせないの。

私はとにかく引き算がさっぱりとできなかったのです。

今でも二桁の引き算は苦手で、電卓を使わないと怪しい。

そのくらい、私は算数ができない。

見かねた母が

「手の指でも足の指でも使えばえいわね」

と言ってくれたけれど、それだと20を超えたら計算ができなくなるわけで…。

国語は誰よりも得意で、漢字に至っては漢和辞典を毎日1ページづつ書き写していたので麒麟でも薔薇でもさらっと書いてのける嫌なお子様だったのに、そこへ数字が入ると何を書いているのか…。

『太郎さんが11個の飴玉を持っています。花子さんに4個あげました。残りはいくつでしょう。』

これが解けない。

11-4が導けないし、偶然導けても引けない。

病的に理解ができませんでした。

今はできますよ!

それなのに、何故か割り算は得意でした。
どんな頭の仕組みなのか分からないんですが、割り算はできる。

でもどんどん難しくなる算数についていけず、万年「もう少し」の人でした。

でも別に困ることもないしいいや!って中学へ上がった時に私は3歳からの夢を諦めねばなりませんでした。

私はずっと看護師さんになるのが夢でしたが、あまりにも数学ができなくて、担任の先生に

「看護学科は理系。お前の数学ではどうにもならん!諦め」

と言われまして…。

頑張れば良かったんですけど、数学を頑張らないといけないくらいなら諦めよう…と。

そのくらい数学が大嫌いでした。

オンナの涙は重い

私の進学した高校は県下でもなかなか厳しい学校で

・体育、家庭科などは全て履修しないと上がれない

・5教科の赤点は1教科で留年決定

という進級条件がありました。

数学で万年30点台の赤点になりそうでならない感じを保っていたのですが、高校2年の2学期にとうとうやらかしたのです。

440人中430番台。

4点

4点でも私より悪い人がおるー!!やったねまだ下がおったー!って喜ぶ私を見て、藤原紀香そっくりの葉子先生が大きなため息をついて

「西岡…放課後…職員室にきなさい…」

大好きな葉子先生があんな顔をするなんて…。

まぁ…あの…午前中授業も受けずに脚本書いてる生活してたんじゃそりゃ…取れるもんも取れませんよね、えぇ。

ただ、大好きな葉子先生が私のせいで泣きそうな顔をしているのを見て、これは大変なことをしてしまったと、やっと気付きました。

放課後、広い広い職員室へ足を踏み入れると、待っていたのは数学科の先生全員。

ひぃ!!!!

怖い、生徒指導の先生より私にとってはこっちのが怖い!!

母校の職員室は、各科別に固まっておられまして、数学科、国語科、英語科、理科がそれぞれ並んでいました。

数学科の先生の中には1年の時の担任だった田村先生(タムタム)がおりまして、ヘラヘラしながらお伺いした私を見て

「こりゃ!お前は!!!」

と第一声。

そりゃ怒られるわな。
まともに授業受けてもないし、赤点やし、何より私のクラス、一応の進学クラスですもん。

「タムタム、私が数学できんの知っちゅうやん?怒ったところで出来るようにならんのもわかっちゅうろ?」

とまだヘラヘラ。

「元素記号さえ覚えきらんかったがで?私は理数系むーりー!」

化学と生物を高校では取りましたが、化学とかもうなんでしょうね、H2Oくらいしか理解してないです。

のくせに、生物になると学年でも上位に食い込むから…よく分からない。
学年1位の子でさえ解けない遺伝の計算を30秒でやってのけて、生物の先生に

「西岡はどんな頭の構造しちゅう?」

と聞かれるような不思議な構造なんです。

とにかく早く帰りたくてヘラヘラする私を見て、大好きな葉子先生が

「どうしたら理解してもらえる?」

と目に涙を溜めて聞くのです。

「どう聞いたら理解できる?」

と聞き返した刹那、その目からポロポロと涙が落ちて。

え?!えぇ?!泣く?!
ええええ?!大人の女の人が泣いた!!
え?!どうしよ!!!どうしたら?!

とオロオロする私を見て、他の数学科の先生が

「あーあ、なーかした!!」

とか大きめの声で言うもんで、もっとオロオロする私。

見かねて担任の黒岩先生がやってきて

「アンタねぇ…もーちょっと、国語の理解力を数学へなんとか持っていけん?」

「先生…それは無理」

「西岡!!!」

無理なもんは無理ですってぇ!!!!

困り果てる私に

「お願い…次は赤点取らんとって…」

とグスグスしながら葉子先生が言います。

いや、あの…取らんとってと言われましても…約束は…でき…いや、あの…。

期末テストの対策は

私のクラスは幸いに進学クラスで。
お利口さんが周りにたくさんおりました。

その中でも特に数学に強い男子2人を捕まえて

「アンタら、私が期末で赤点取らんようにして」

と無理難題を押し付けました。

1人はノンノン。
のび太くんのような男子で、私にそっくりな生徒会の副会長とお付き合いしていて、別れた後彼女から

「アナタにならノンノンあげるわ」

って言われたんですが、

「あ、ゴメン。私コッシーが好きながね、同級生に興味ないき押し付けられても困る」

とお断りした経緯がある男子でした。

もう1人は確か社会人になって銀行へ入行したと噂の坊主頭(あだ名がなかったわ、彼)

ノンノンとこの坊主頭の彼は仲良しだったので、2人まとめて指名しました。

2人とも流石にお利口さんの中でもトップのお利口さんなので、分かるんですよね…説明が。
私が理解できないことを一つ一つ紐解いてくれるんですよ。

そしたら、急に分かるように。

なんだ、こんなことか!
あー、じゃあこういうことね!
なーんだ、数学難しくないやん!!

そんなこんなでテスト期間、毎日彼らに補習をしてもらい、挑んだ期末テスト。

分かる、分かるぞ!!!!
ペンも軽い!!
イェーイ!!これで赤点はないわ!!

いつもなら死にそうな顔をして終える数学の試験の後、ニッコニコの私。

「2人ともありがと!できた!」

そういうと、クラスの中がザワッとしました。
そのくらい私は数学ができなかったんです。

試験が終わり、いつも通り部活が始まり廊下で壁と一体化する股割りをしていたら、

「西岡はどこ?!」

と背中から葉子先生の声。

後輩たちが笑いながら

「先生、壁になってますよ、椿さんなら(笑)」

と。

「何です?」

壁と一体化している私を見る目が、涙でいっぱいに。

(え?今度は何?!)

「西岡…アンタ…なんぼ数学ができんでも…カンニングはいかん!!!」

ぬーれーぎーぬー!!!!!(白目)

「ちょ!!!待って!!!してない!!絶対神に誓ってしてない!!毎日ノンノンと坊主頭くんに補習してもらったけど、カンニングはしてない!嘘やと思うなら2人に聞いて!」

「ホンマにしてない?」

「しちゃーせん!!!なんぼ何でもそこまで落ちてない!!」

「ホンマに?私に嘘ついてない?」

「ついてない!」

「○○先生からも聞いてもらったら本当のこと言う?」

「今、コッシーは全く関係ないやん…言うてもいいよ。完全に実力やもん。私は、葉子先生にだけは嘘はつかんよ。コッシーのことも一番先に言うたやん?葉子先生にだけは嘘つかんよ」

「そこまで言うなら信じるわ」

と帰って行った葉子先生。

「椿さん、数学よっぽど良かったがですかね」

「さぁ…でもあれだけ慌てるがやき、多分よっぽど良かったがやない?私前回4点やったし」

「留年しますよ…」

「本気出しただけながやけど…」

「いつも出して下さいね…同級生になるの嫌ですよ」

「頑張るわ…」

期末テストの結果

次の数学の授業で返されたテストですが、ワタクシ、人生において一度も見たことのない点数でございました。
満点にはちょっと届きませんでしたが。

「みんな、ちょっと聞いて欲しい。普段は絶対個人の結果は口外せんのやけど、聞いて。西岡が…94点取った…」

マジか!!!
おい、やるな私!!

「みんなも努力してみて。こうやって苦手でもちゃんと成績は伸びる!!」

イッェーイ!!!

大喜びの私と、満足げなノンノンと坊主頭くん。

クラスメイトは

「西岡さんが…赤点じゃないなんて」

とザワザワするし、親友のしずかは

「あんた、やればできるがやき、普段からやりや」

と痛いところをつくし、宇宙人なさやかちゃんが

「凄まじい追い上げやねぇ…」

と褒めてくれて、有頂天の私。

部活に向かう私のセーラ服の襟を後ろから掴んだのはタムタム。

「こりゃ、お前は!」

え?!なに?!

「カンニングしたがか!!!」

数学科の先生方の中でも有名だった私。
とにかく数学ができない私がいきなり90点を超えればそりゃ大騒ぎですよね。
カンニングを疑われましたが、職員室でちゃんと一問づつ自分で解いてみせたところ

「西岡が…あの西岡が…ちゃんと理解しちゅう…」

と驚かれ、ようやく無罪放免に。

ただ、ワタクシ、数学にのみ特化したせいでですね…他の教科はほとんど手をつけなかったため、他の先生たちから

「満遍なく勉強できんのか!」

とお小言をいただく羽目になりました。

みんなが大体良いお点を取れるはずの「保健」さえも下げてしまい、

「えいかや?女の子は自分の身体を守らんといかんことも出てくるき、ちゃんと教科書をもう一回読めよ」

と心配されました。

「安全日がないことだけは覚えてますよ!」

と微笑んだところ、大きなため息をつかれてしまいました。

それ以降の数学のテストは?

それ以降は一度も50点さえ超えない低空飛行をしていましたが、赤点は取らずに何とか卒業まで乗り越えられました。

大好きな葉子先生が授業を持たなくなり、頑張る目的がなくなっちゃって(笑)

そんな私にタムタムが贈ってくれた言葉は

「お前は算数も数学もいらん世界で生きていけよ」

でした。

先生、今はエクセルがあるから大丈夫だよ!!電卓もあるし、多少の計算は大丈夫!

三角関数も微分積分も私の中では何にも役に立っていないよ!!

でも、一生懸命数学や算数を教えてくれた先生たちには感謝しています。

科目としては大嫌いだったけれど、独特の考え方をした先生が多くて話をしていても飽きない先生ばっかりだったから。

大好きな先生たち、本当にありがとう!

1ミリも理解してなくてホントにごめんねっ!!!


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