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ラジオという秘密基地

あれは小学校の2年生ぐらいだったと思う。

近所の相沢公園の裏に雑木林があった。

公園から柵を超えたその先の雑木林で僕は友達と秘密基地を作った。

もうどんなものかほとんど覚えていないが、落ちている木や段ボールを集めて子供2、3人がしゃがんで入れる程度の、いやしゃがんでも結局体のほとんどははみ出していているようなとてもしょぼいものだったと思う。

そこにはこれまた拾い集めたBB弾、ビー玉や酒のキャップみたいな宝物を保管していた。もう既にゲームボーイを持ってポケモンの金銀をやってたとはいえ、なぜか秘密基地では僕らにとってこれが宝物だった。

結局、ある日いつものように秘密基地の場所に向かうと、僕たちの秘密基地は跡形もなくなり、宝物もどこかになくなってしまっていた。

今振り返って考えると、公園とは明らかに柵で境界線を区切られていたよそ様の土地に不法侵入して勝手に建造物、というにはおこがましいが、を作っていたのだから、よく誰にも叱られることもなかったものだ。いや、雑木林を歩いているときに怒られたっけ?まあいい。悪いことではあるので真似していいものではないが。

しかし、この恐らく2週間にも満たない秘密基地での体験は今でも心の片隅に残っている。


先日、ナインティナインの岡村隆史さんがラジオのコーナーの中で、リスナーからの「コロナで風俗に行けないからダッチワイフを買おうと思う」というメールに対して「コロナが収束すれば、美人さんが風俗で働くようになるからそれまで我慢しましょう」って返したもの。言葉の切り貼りになって正しいニュアンスが伝わらないからできればちゃんと最初から最後までラジオを聞くのが本当はいいんだけど。

まあこれがものの見事に炎上しましたね。


ただこれ「冗談」なんだよなぁ、っていうのが一番気になっていること。メールもそのあとのトークも。面白いかどうかとかそういうのはさておき。僕もこの番組のリスナーではないからちゃんと最初から最後までの文脈を理解しているわけではないけれども。これは間違いではないはず。

ラジオ番組っていうのはパーソナリティやスタッフ、そしてリスナー。番組に取り巻く人たちで構成される、悪く言ってしまえば大分クローズドな空間だと思ってる。個室というか私室、というのが近いかな。そういったプライベートな場であるが、去る者は追わず来る者は拒まずという人の出入りが大分自由というちょっと特殊な環境な空間。まあずいぶん排他的な空間ではある。

そして一人でも複数人でも、プライベートの中で楽しくやる分にはどんなことを喋っていようが、どんな思想を持っていようが、それは個人の勝手でしょう、犯罪でもない限り。それがネクロフィリアだろうが、ペドフィリアだろうが。お近づきになりたいとは思わないが。

この発言に関して、僕個人として好きな話ではない、というか苦手な話だけど、まあ客観的に事実だろうし、何かの犯罪であるとか、犯罪を助長するものでもない。性別による違いはあるけど、逆に男だったらいわゆる3Kのような、そういった劣悪な環境になるよ。これが例えば特定個人の女性とかに向けて言うならセクハラという犯罪になるけどそうでもないし。

発言した本人もスタッフもリスナーも普段からの冗談の一環として喋っているという認識で間違ってないはず。だから放送直後は別に大して反応はなかった。放送から数日後のネットニュースになってから爆発的に増えている。この件に関して怒ってる人ってほとんどこのラジオを聞いたことない人がほとんどだ。

「いやいやラジオってのは公共の電波を使って発信して、誰でも聴くことのできるものなんだから、個人が好き勝手にやっていいものではない」と言われるとは思う。んー、でもやっぱり現在のラジオとその取り巻く環境を考えるとどうしても、ねぇ?

子供の頃に作った秘密基地。あれは大人から見れば、秘密でもなんでもないバレバレのものだったろう。公園の片隅であるとか原っぱであるとか、雑木林であるとか、そういったパブリックな場所に作ったあの秘密基地の中は僕たちにとってのプライベートな場所であったはずだ。

子供の頃に比べると随分人数の規模も増えたし、みんながそれぞれの屋内に閉じこもってしまっているけど、それでもラジオ、深夜ラジオというのは秘密基地なのではないか。パブリックな空間の中に作られたプライベートなスペース。

そんな秘密基地の中だからこそ、大の大人がいい年こいてくだらない風俗の話とかしょうもない話を持ち寄って笑いあっているのではないか。そういったくだらないことを言えるプライベートな空間が好きだから人が集まってきているのではないか。厳密にいえば公の場なのかもしれないけれども、実態はどうなのかというと。

だから僕は岡村さんが世間に向けて謝罪するのはおかしなことだと思ってるし(謝罪も「番組を聴いていた人の中で」って言っていたと思う)、文句をつけてくる人たちも何に対して怒っているんだろう、あれはパブリックな場ではないんだけれども、という風に思ってる。ファンやリスナーは文句言ってもいいけど部外者が殴るのはどうなの?って。社会に害悪を与えるとかであるのならまだしも、これで何かが良くなるの?

上でも書いたが僕はこの番組のリスナーではない。だけど今のラジオ全体の空気はそのようなものだと感じている。いや「もっとラジオを発展させていくためにもこういうことは許してはならない」というのであればその方向性でいいんですけれども。排他的ではあるし、「こういう態度からラジオが衰退していくんだ」と言われたらそうなのかも知れないが。それでも今が気に入っているので。



思っていることを恐らく30%ぐらいしかちゃんと言語化できてないと思うけれど、今現在このnoteを書いているときの今回の騒動とラジオに対する僕なりの解釈でした。あくまでラジオ好き全員の意見ではなく、一個人の意見というのも悪しからず。

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