よいこの為の韓国ノワール
よいこの皆〜!!!こんにちは〜!!!
韓国ノワールの時間だよ〜〜〜!!!
今日は、最近韓国ノワールの魅力に取り憑かれて咽び泣いているオタクが皆におすすめの韓国ノワールを紹介していくよ!普段は健康に良いアイドルを嗜んでいるんだけどあまりにジャンクな韓国ノワール映画達に我慢が出来なかったんだ!我慢は体に良くないからね!それじゃあ、韓国ノワールが初めての皆〜〜!!!オタクに習ってやってみよう!!!元気にシェアハピしていくよー•*¨*•.¸¸☆*・゚
そもそも韓国ノワールって?
ノワールとは、フランス語で黒と言う意味です。小説や映画においては、人間が持つ心の闇や社会の裏事情を描き出した作風の事を指します。つまり韓国ノワールとは、韓国を舞台とした裏社会の様子を描いた映画や小説という事になりますね。よいこの皆、落ち着いて。そんなに興奮されるとこちらも相応の対応をしなくてはいけません。次項からは、私がおすすめするそんな韓国ノワールを語り出していきたいと思います。おすすめ度は順不同です。片っ端から見てほしい。
①アシュラ
アンナ厶市の刑事ドギョン(チョン・ウソン)は、街の権利を牛耳る市長ソンべ(ファン・ジョンミン)の為に裏の仕事を引き受けていた。しかし、市長の逮捕に燃える検事チャイン(クァク・ドウォン)がドギョンを脅し、市長の不正の証拠を掴もうと画策。事態はドギョンを慕うソンモ(チェ・ジフン)をも巻き込み、生き残りを賭けた欲と憎悪が剥き出しの闘争へとなだれ込んでいく。
Huluのあらすじを引用させていただきました。この時点でトキメキを感じるよいこは多いのではないでしょうか。この物語では、上記で名前の上がる男達が欲と憎悪を剥き出しにして血で血を揉み洗いしてるレベルの闘争を繰り広げてデスパレードな人生を突き進むしかないんですよね。登場人物全員、後がないんです。
アシュラと言う言葉を聞いて思いつくものと言えば、多くの方は「阿修羅」かと思われます。基本的に3つの顔と6本の腕を持つ三面六臂の形で仏像が作られ、日本で最も有名な阿修羅像と言えば国宝にも指定された奈良県の興福寺に所蔵されているものではないでしょうか。この阿修羅像のお顔ですが、実は表情に異なりを持っているんです。右から下唇を噛んで溢れる思いをこらえる表情。左の顔は少し厳しい表情で前を向く。正面の顔は眉をひそめ、下まぶたが膨らんで涙をためているように見える。決意と葛藤の狭間で揺れ動く繊細な心を表してると言われています。見る人や角度によって感じ取る物が違う事も特徴に上げられていますね。そんな阿修羅像のお顔なんですがCTスキャンによって判明した内部の凹凸を再現した所、作成途中の段階では異なる3つの顔をしていたと判明してるんです。内と外で異なる顔を持つ阿修羅像。なんだよどこまでも楽しませてくれやがって人生と同じかよ。
阿修羅の説明は長いので割愛させていただきますが本映画、“アシュラ”においては2つの顔を持つと言う事が重要な意味を持っていると個人的に解釈をしています。見る人によっては、アシュラの世界は悲惨で救いのないものだと思うかもしれません。彼等の居る場所は正しく修羅道。怒り、奢り、愚かさに満ちた中に希望の光が差す事はありません。しかし修羅道と地獄の違いは、苦しみを自らの手で断ち切る事が出来る点だと言われております。地獄は自分がどう足掻いても地獄ですが、修羅道は自分の行動で決定した結果なので彼等に後がないのは誰のせいでもなくそういう選択を自分自身が続けてきたからなんですよね。他者に勝ろうと驕り、相手を下に見て慢心したり謙虚なフリを見せても腹の中では妬みや嫉みを持つ心の表裏が彼等にはあるんです。阿修羅像と同じ二面性がある。そう言った生き方しか知らない主人公のドギョンが、最後に何を選択するのか。かなり見応えのある作品で、見終わったあと少し放心して泣いてしまいました。それくらい強烈なインパクトで全てをかっさらっていく映画です。血みどろ具合は韓国ノワール映画内でもトップクラス。容赦のなさは監督は人の心を失くした経験があるとしか思えないぬめりのある悪烈ぶり。私の推しはそんな世界においても常に笑みを絶やさない男です。見れば誰の事を言っているのか分かると思います。なので全員アシュラを見てください。
②新しき世界(新世界)
韓国最大の犯罪組織に潜入して8年になる警察官ジャソン(イ・ジョンジェ)。自分と同じ中国系韓国人である組織の№2、チョンチョン(ファン・ジョンミン)の信頼を得て、その右腕となったが、いつ潜入がばれるかわからない恐怖の中、警察に戻る日を待ちわびていた。ある日、組織の会長が急死。勃発する後継者争い。この隙に一気に組織の壊滅を目論み、ジャソンの願いを無視して潜入捜査を継続させ、「新世界」と名付けた作戦を開始させる。警察官の正義と、チョン・チョンとの情の間で葛藤するジャソン。ジャソンが最後に選び取る「新しき世界」とは?
Amazonプライムビデオよりあらすじを引用させていただきました。韓国ノワール映画は、ヤクザの抗争や警察がヤクザに潜入捜査をする題材が多いです。その中でもこちらの新しき世界は、潜入捜査物が初めての方やよく慣れ親んだ方にも楽しんで頂けるかと思います。アシュラに比べると出血量と絶望感は少ないんですが、その分コンクリートと純粋な切なさが多いのでダメそうな方は頑張ってください。私は定期的に吹き替えと字幕を交互にレンタルして見てますが、必ず嗚咽を漏らしています。ですが購入をした方が長く見続ける場合はお得なので、購入をおすすめします。
新しき世界。または新世界。この映画のタイトルはかなり秀逸で、この映画における人物達は新しい世界を望んで葛藤していくんです。まず、主人公であるジャソンは危険な潜入捜査を辞めてヤクザの世界から抜け出して妻と新しい生活がしたい。しかし、兄貴分であるチョンチョンやヤクザの部下達の信頼を裏切る事が出来ない葛藤がある。そして、ジャソンの上司であるカン課長は韓国最大のヤクザ組織をコントロール可能まで追い詰めて新しい社会の基盤を作りたい。しかし、その為に自分の部下達を危険な目に晒し続けた結果ある事をきっかけに葛藤が芽生える。ジャソンの兄貴であるチョンチョンは、自分が会長の跡を継いで組織の新たなトップになる事を望んでいる。次期会長候補であるライバルのイ・ジュングと言う男がいまして、彼が会長になってしまうと自分の地位が危うくなる点もあると思うんですよね。しかし、ある事をきっかけに彼も深い葛藤を抱く様になる。
この様に主要人物達は新しい世界を望み、葛藤していくんですがこの描写がとても苦しい。喉と鼻に米が詰まった時の様に苦しく痛い。個人的にこの映画は、体力と精神力が整ってる時でないと見られない作品になっています。心のフィーリングがマッチしすぎてしまってたまに会社で思い出し嗚咽してしまうんですよね。映画を見てる時もフライング嗚咽してしまいそうになるのでこの映画を見る際にはバスタオルが必須です。この映画では幸福でありたい、より良くしたいと言う気持ちは皆同じなんですよね。しかしその形が立場によって違うので、他人の幸福が自分にとっての障害になってしまった。何でそんな切ない事するんですか?と監督に泣いてお礼を言いたいくらい韓国ノワール映画の中では至宝。傑作と呼ばれるべき作品だと思います。私はチョンチョンとジャソンのコンビが本当に好きで堪らなくて、役者さんが並んでるだけで涙腺に効いてます。ラストのシーンが賛否両論あるそうなんですけども、私はあれよりも綺麗な終わりを想像出来ませんでした。あのラストがあったからこそ、チョンチョンはジャソンを許したんですよね。お前だから許した。ジャソンだから、チョンチョンは許したんだと思います。それを理解した時、ジャソンが何を選択したのか。この映画の見所は、ヤクザ同士の派手な潰し合いや警察が持つ裏の顔の恐ろしさもそうなんですがチョンチョンとジャソンがお互いに与える影響にも注目していただきたい。兄貴キャラが大好きな私としましてはチョンチョンはパーフェクトヒョンニム。そして何だかんだ言いながらも兄貴と慕うジャソンとの師弟関係。この映画を見た後、諸事情あって麗水の文字を見ると号泣する体になってしまったんですがどうですか。見たくなってきませんか。むしろ私が早く世界に考慮せずクソでかい声で愛を叫び散らかしたいので皆さん新しき世界を見てください。正直もう辛いです。
③不汗党(名もなき野良犬の輪舞)
犯罪組織でナンバー1に成り上がる野望を持つジェホは、刑務所で野心的な青年ヒョンスと出会う。これまで一度も他人を信じたことはなかったジェホだが、ヒョンスによって窮地を救われて以降二人はお互いに信頼しあい、一緒に働くことを誓う。出所後、彼らはチームを組んで犯罪組織を乗っ取ろうとするが、次第にそれぞれの秘めた動機が見え始まる。信頼の下に潜む真実が姿を現すとき、二人は衝撃の結末へと向かっていく!
Amazonプライムビデオより、あらすじを引用させていただきました。鳥は産まれてから初めて目にしたものを親だと認識すると言われていますよね。私にとっての韓国ノワールの親はこれです。アー父さん母さん(ヤイヤイヤイ)アー感謝してます(ヤイヤイヤイ)。アシュラ、新しき世界とはまた違うテイストの映画でしてこの三部作が韓国ノワール初心者を沼に叩き落とすのに適した作品だと思っています。信じる事の強さと難しさ。ヒョンスとジェホの間にあるものは果たして何だったのか。
ジェホは、非常に警戒心が強く常に人を信じる事が出来なかった。起こった状況のみを信じ、そこから自分に出来る手を打つ狡猾な男です。そんな彼の前に現れた人を信じる純粋な青年、ヒョンス。頭も良く、腕っ節も強くてぶん殴っても殴られても終始笑顔を見せる彼を見てジェホは高らかに笑いあげます。こいつは面白いと刑務所内で喧嘩をして問題を起こしたその日に、ジェホはヒョンスに接触するんですが出ちゃうよね嗚咽が。
ジェホ「この塀の中には2種類の人間しか居ない。刺激していい奴。そして、刺激したらマズい奴。今日お前と喧嘩したのは後者だ」 ヒョンス「じゃあ、アンタは?」 ジェホ「どっちだと思う?」
ここで、ヒョンスは「刺激したらマズい奴?」と聞くんですがジェホは自分を「違う。俺は線引きをする人間だ」と答えるんですね。よいこの皆さん今思った事があるでしょう。それが正解です。はい、刺激したら1番マズい奴ですね。線引きが出来ると言う事は、ジェホはそのどちらに属する事はなく状況をコントロール出来る力を持っていると言う事になるのでここで彼の刑務所内での位置づけが伺えます。トップの位置に居たいんですね。勝敗何てものに関わらず高みの見物をする絶対的な人間でありたいんですよ。「お前はアザも綺麗だな」とジェホがからかうシーン。この映画の素晴らしい所は、人物の魅力もそうなんですが無駄の無い伏線の数々だと思います。伏線がどんどんと回収されていきながらテンポの良い場面転換で終盤までフルスロットルで走り抜けあとからあのシーンはそう言う事か……と1人で部屋で泣くまでが視聴者の責務となっています。
人を信じないという事は、人に裏切られたくない事と同意義だと私は思っているんですがジェホはかなり慎重な性格で言ってしまえば臆病なんですよね。捨てられた野良犬の様な生き方しか知らなかった彼が、ヒョンスと出会い何を知ったのか。ヒョンスはそんな野良犬と過ごす事で何を知り、最後に何を選択するのか。少しだけ感想を述べさせていただくと、ジェホはあの瞬間。世界一幸せなのだと私は思いました。どのシーンの事を言っているか当ててみてください。縛る人間と縛られる人間の話が個人的に大好きで、それが一生解ける事の無い物だと凄く真っ直ぐその場に起立する発作を持っています。極度に興奮すると礼、限界を超えると着席してしまいますね。世界初、感情に突き動かされて礼儀を尽くしているオタクの様子です。韓国ノワールは最終局面の主人公の選択が一生記憶に残る程重く強い物語を持っているので沼なんですよ。日本語版でのタイトル、名もなき野良犬の輪舞(ロンド)。輪舞は、その名の通り輪になって踊る事ですが何故この邦題を付けたのか自分なりに熟考した結果は人類の皆さんが見た後で発表します。なので全員不汗党を見てください。感情限界ツイートでは我慢出来ず大きい声で不汗党について話したいのてブラジルに向かって発声練習してるんですけどそろそろブラジル在住の方々の耳に届いてるんじゃないかと思ってわくわくしてきました。
④MASTER
悪徳な金融詐欺テクニックで巨富を築き、今や政官界をも牛耳るチン会長。彼を追う知能犯罪捜査官のキム刑事は、会長の側近で天才ハッカーのパクに捜査への協力を承諾させる。しかし、裏切り者の匂いを察知したチン会長は大金と共に姿をくらまし、遺体となって発見されるのだが.。一歩も譲れぬプライドに突き動かされた男たちの戦いは、海を越えた異国の地で激化していく!!
Huluより、あらすじを引用させていただきました。血がいっぱい出るのは苦手、痛そうなのは苦手。コンクリートアレルギーだけど韓国ノワールに興味があるよいこの皆さん、お待たせ致しました。貴方の願いを全て叶えた初心者に優しい韓国ノワール、MASTER。救いの需要と供給のバランスが偏りすぎてる韓国ノワールにおいてMASTERの主人公達より強い存在はないと思います。
主人公のキム刑事は、頭がキレる冷静沈着なキャラクター。しかし、巨悪に対しての正義感は真っ直ぐで熱い。対して、会長の側近にして天才ハッカーの詐欺師であるパクは頭は良いが何処か抜けていて茶目っ気のあるキャラクター。人らしい欲深さに満ちていてとても愛らしい。このキム刑事とパクが、最初はいがみ合いお互いを出し抜こうと暗躍をしていくんですがある事をきっかけに信頼を築き上げていく。先程お話した不汗党も信頼の話でしたが、このMASTERにおいても信頼する事が非常に重要です。信頼し合った仲間だけが勝利の火を得る事が出来る。暗くじっとりとした救いのないテイストの映画と違い、間違ったとしてもひたむきに努力を重ねそれこそ死に物狂いで戦い続ける人間には必ずチャンスがやってくると教えてくれる映画です。私は初めてMASTERを見終わった時大きい声で「未来が!!!明るい!!!」と叫んでしまいました。未来が明るいです。
アシュラに比べれば血の量は実質0。不汗党に比べれば痛みの度合いは実質0。新世界に比べればコンクリート量は実質0。手に汗握る爆発も付いた熱い内容でカロリー消費が凄い。見ての通りダイエットに効果的な映画です。キム刑事とデカ仲間達、そこに加わる様になってからのパク・ジャングンの表情の変化を是非見てください。初めの頃はつまらなそうだったり、焦燥に駆られた表情をよく見せていましたがどんどんと明るく解れていく様は彼が真に必要だったのはお金ではなく信頼し合える仲間だったのだと私は思っています。ストーリーの波のバランスが非常に面白く、仕掛けられていく伏線を回収しきって迎えるラストの爽快感はサンテFXのCMに出てくる織田裕二になってしまうレベルのものです。少しでもネタバレをしてしまうと初見のわくわくとした好奇心や面白さが半減してしまいそうなのであまり深く語れないのが非常に残念。それくらいとても面白い作品ですので、お試しにキム刑事が「戦闘開始」と言って皆を見送る所までで結構ですから全員見てみてください。
⑤ドヒ(私の少女)
海辺の村にソウルから所長として赴任してきた若い女性警官ヨンナムは、14歳の少女ドヒと出会う。ドヒは実の母親が蒸発し、血のつながりのない継父ヨンハと暮らしていて、日常的に暴力を受けている。村人たちは老人ばかりの集落で、若くして力を持つヨンハの横柄な態度を容認し、ドヒに対する暴力ですら見てみぬふりをしている。ある日、偶然にもヨンハは衝突を繰り返していたヨンナムの過去を知り、社会的に破滅へと彼女を追いこんでゆく。ヨンナムを守るため、すべてをかけてドヒは危険な選択をするが……。
Huluより、あらすじを引用させていただきました。今まで紹介していた映画も含め、韓国ノワールは男女共にホモソーシャルの描写がえげつなくて私は好きです。人間が作るコミュニティにおいて起こる同情による絆と凄惨による絆。この2つがもたらす環境やその変化が、特にこの映画においては大切な物となっているのではないかと私は思います。
警察官であるヨンナムは、赴任してすぐにドヒと言う少女に出会います。ドヒは常に泥や傷だらけでとても良い環境に居るとは思えない状態なのですが、舞台である閉鎖空間的な村ではドヒが不幸である事が一種の絆を産んでいると私は思いました。突然ですが、オメラスと言う町を知っていますか?オメラスはこの世の最上の幸福を体現した理想郷の事でありとあらゆる祝福が約束された場所です。しかし、その祝福はオメラスの町の地下牢に閉じ込められたとある子どもが不幸である事を条件に与えられた栄華でした。子どもが少しでも優しくされたりすると災いが町に降り注ぐ。町の人々はある日、その事実を知り悩み葛藤しますがほとんどの人は子どもの事を知りながらも豊かな暮らしを手放す事はなく笑顔で暮らし続けるのでした。悲惨な秘密を共有し強固になる町に暮らす人々の絆は、村の人々が抱く絆と。ドヒはその子どもと同じだと私は考えます。継父であるヨンハは高齢化の進む町に若い働き手を連れてくる村人達にとっては祝福の様な存在。ドヒは、ヨンハのご機嫌を取る為に居る犠牲の様な存在。村人も村の子ども達も、そんなドヒを見ても見ぬふりをするかヨンハの真似をして虐めるかを繰り返していました。そんな時、ドヒの前に現れたのが警察官のヨンナムです。ヨンナムは暴力を受けるドヒを助け、警察官として以上の事はせずさっと背中を向けます。しかし酔ったヨンハに酷い虐待を受けるドヒを見て彼女は咄嗟にヨンハを取り押さえその日以来ドヒを深く気にかけるようになりました。自分を産んだ母と同じ性別でありながら、若くして毅然とした態度で暴力や差別を許さない彼女を見てドヒも徐々に変わっていきます。
この映画の好きな所は対比がしっかりとしていて、お酒を飲んで我を失い暴力に走るヨンハ。お酒を飲んでも冷静で正義を執行するヨンナム。感情を剥き出しにして村で自由に生きるヨンハ。感情を抑えて村を拒む様に生きるヨンナム。血の繋がりのない父親代わりのヨンハ。血の繋がりのない母親代わりのヨンナム。ここまで見聞きしただけだと、ヨンハや村人は加害者であり悪。ヨンナムとドヒは、被害者であり正義の様に感じる方もいらっしゃるかも知れません。一部ではありますが上記にあげたこの対比が、私の少女における重要なポイントだと思っています。ヨンナムの正義感は、一般的な感性で受け取れば正しいものです。しかし、ヨンハによって生活の成り立っている村はその正義感により危うくなっていく。かなり熟考させられる作品でして、見た後にこれはオススメは出来ないかもしれないと悩んだ程軽々しく楽しめる作品ではないです。しかしながら、見る機会があるなら是非見てほしい。余談ですが、オメラスの幸せを享受する事に悩み続けた人々の中には町を去り何も無い荒野へと歩き出した人も居たそうです。彼等は、何処へ向かったのでしょうか。
⑥工作 黒金星と呼ばれた男
頭脳と心理を駆使したリアルなスパイ戦を舞台に、知られざる北朝鮮の現実や、謎に包まれた金正日の実像を再現した真実のドラマ。演技派俳優による”心のバトルアクション”に世界が感嘆し、カンヌ国際映画祭で大絶賛&映画賞を総ナメにした超一級の最高傑作!核開発の実態を探るべく北朝鮮に潜入した韓国工作員パク。ソギョンは、実業家に扮して高官たちをだまし、最高指導者・金正日に近づこうとしていた。だが韓国機関が北朝鮮と裏取引に及んだことで、最大の危機を迎える。パクの正体がバレそうになるなか、運命の歯車は想像を超えて動き出す!!
Amazonプライムビデオより、あらすじを引用させていただきました。これまでは韓国という土地をメインに主人公達は暗躍して来ましたが、この映画では国と国を超えて男達が頭脳心理戦を繰り広げていきます。拳だけが武器ではなく、血を流すだけが戦いではないと教えてくれる作品でして実際に存在したとされる韓国の工作員の話を取り入れたフィクションです。
韓国の工作員、パク・ソギョン。彼は核開発の実態を探る為、軍を退職し事業家として北朝鮮の高官達と接触を計ろうとしていくんですが、そこに至るまでの抜かりない計算し尽くされた行動のシーンが凄く好きです。まず手始めに、飲んだくれます。酒に溺れギャンブルに励み、かつての仲間からお金を借りまくり借金を雪だるま式に増やして自己破産をする。そうする事で、韓国内に潜り込んでいる北朝鮮のスパイの目を欺いたんですね。この様に徹底された裏工作をしながら工作員パク・ソギョンでありながら実業家パク・ソギョンになっていくんですよ。工作員である時と実業家である時の雰囲気の違いがとんでもない事になっていて、実業家の時は抜け目のない飄々とした雰囲気を持っているのに対して工作員の時のパッケージに入れられた個としての人格を持たない人形みたいな顔をするんです。瞬きをほぼしていなくて、シーンの合間に入る瞳の描写のシーンで興奮して歯を食いしばってしまい顎と胸が痛い。ときめきを抑える処方箋ください。
そしてここからが本当に重要です。北朝鮮の対外経済委員会、リ所長。彼との出会いが、全ての始まり。回り出した運命の歯車は簡単には止められない。リ所長は勤勉な方で、共和国の為と忠義を尽くすんですが私は個人的に誠実な人が好きなのでこの2人の事が好きです。ソギョンも工作員として働いている理由は国家とそこに住む人民の為なんですよね。私腹を肥やす為ではなく、国の為に人生を捧げた。そんな2人が出会い、目を合わせて信頼を築き上げていく。この物語もまた信頼の話なんですよね。信頼と言うのは、ひたむきな事が重要じゃないですか。人智を尽くして天命を待つと言いますが、彼等の生き方はそこに通じる所があるかと思います。出会うべき相手なら出会う。こちらは作中の言葉なんですが、この2人の関係はまさにその言葉通りで出会うべくして出会ったのだと感じました。少し難しい内容を取り扱っていますが、当時の社会情勢等を知らなくてもテンポがよく役者さん達の演技力にどんどん惹き付けられる作品となっているので全員工作を見てください。あと映画の中で舞台となる北京の建物の形状が凄く良いです。建物や小物類にも注目して見るとめちゃくちゃ楽しい映画ですね。キャッチコピーである南と北の裏の裏の裏。黒金星、ブラック・ヴィースと呼ばれた希望の星が何を選択するのか。是非見届けてください。
⑦コンフィデンシャル 共助
北朝鮮の刑事イム・チョルリョンは極秘任務を遂行中、上官チャ・ギソンの裏切りにより仲間と妻を殺されてしまう。ギソン率いる組織は世界を揺るがす機密を盗み、韓国へと逃亡。それを秘密裏に取り返さなくてはならない北朝鮮はチョルリョンをソウルに派遣する。国際犯罪者の逮捕要請を受けた韓国側は庶民派熱血刑事カン・ジンテを任務にあたらせ、歴史上初の“南北共助捜査”を契約する。しかし、韓国は北朝鮮の真の思惑を探るべく捜査を偽装してジンテにチョルリョンの密着監視を命じていた。かくして出会うはずのなかった刑事コンビはそれぞれの思惑を持ちつつ凶悪な犯罪組織との戦いに身を投じていく
Huluよりあらすじを引用させていただきました。先程の工作は、北朝鮮に乗り込みましたが今回は逆で韓国に乗り込んできます。よいこの皆さんは、闇を背負ったイケメンと庶民派熱血デカおじさんのコンビが大好きですよね。みなまで言うな。大体把握しています。そんな貴方の願いを叶えるのがこの映画。血ばかりで火薬が全然足りないじゃないと泣いてたそこの貴方、涙はお拭きなさい。いらっしゃいませ。バリカタイケメンポンコツ刑事のせ火薬マシマシ〜悪役を添えて〜一丁入ります。
冒頭、チョルリョンはとある極秘任務を遂行していた所上官であるギソンに裏切られ仲間と妻を失います。怒りに燃えるチョルリョンは、ギソンを捕まえると決意しました。そこで、韓国に逃亡したギソンを捕まえる為に北朝鮮は韓国と歴史上初めてとなる南北共助捜査を極秘裏に始めます。共助捜査と言うのは、簡単に言うと自国から外国に逃げた犯罪者を捕まえる為に逃亡先の国で警察や治安を取り締まる機関と連携して捜査を行う事です。その捜査の相方として抜擢されたのがジンテ。ジンテはよく言えば情に厚い性格で、悪く言えば頭に血が上りやすい。今回の共助捜査は正義感から参加したのではなく、上司の命令と自分が直近でミスをした事件を挽回しようと参加したんですね。捜査に協力をするフリをしながら北朝鮮の警察官が自由に動かない様に監視しろとお達しが出ます。そして2人は本当の目的を隠したまま出会うんですが、どちらも隠し事が下手くそすぎて愛おしさしかなかった。チョルリョンは目的の為に勝手な行動ばかりするし、ジンテは嘘をついている事とチョルリョンを自由にさせたくないからと行動がぎこちなくて衝突を繰り返していく。そうして、育んだ絆がジンテの家族も巻き込んだ大騒動へと発展していく。
察しのいい方はもう気がついたと思いますが、この映画は陰湿と静謐であったこれまでの韓国ノワールとは違い笑いあり涙あり爆破ありの精神と画面が基本的に明るい仕様になっていて大変見やすいです。それでは困りますと言った方もご安心ください。甘いのがあればしょっぱいのも食べたくなる。明るいのがあれば暗いのもある。悪役が終始悪役で少しの同情の余地もないです。この映画も主人公2人の対比が素晴らしく、ジンテの家族とチョルリョンが仲良くなっていく様はぐっとくる人も多いのではないでしょうか。何より私が好きだったのはチョルリョンと出会ってすぐのジンテが出来る刑事かもしれない描写。そしてジンテの妻であるソヨンが普段はダメ刑事であるジンテをないがしろにする様な描写があるのに、怪我を不安視したりジンテにベタ惚れだという事が発覚したシーンですね。こちらを韓国ノワールと呼んでいいのか少し迷いましたが私が面白いと思ったので紹介します。なので是非見てください。
⑧1987、ある闘いの真実
国民の自由が許されない軍事政権下で、警察に連行された大学生が命を落とした。政府が事実をもみ消すなか、新聞社は「拷問中に死亡した」とスクープする。我慢の限界に達した人々から民主化を求める声が沸き起こり、それは革命へと発展。絶対的権力を相手に、悪政国家を変えようとする民衆が正義のために立ち上がった!
Huluより、あらすじを引用させていただきました。大変申し訳ありません。こちらに関しては説明出来るだけの知識と言葉を持ち合わせておらず、筆者は強く感情を揺さぶられてしまっている状態です。私はこの映画を民衆が巨悪に立ち向かった誇り高いものや綺麗な革命ものとして賛美する事が出来ません。上手く伝えられる気がしないので、短く紹介させていただきます。
これは史実を元にしたフィクションです。フィクションなので、真実かは分からない部分がある。しかしながら、この映画は元となった題材の歴史の一部であると私は感じます。歴史とは例えどんな事実がその時にあったとしても、記録がなければ存在しない事と同じだと思います。この映画が作成され、今日まで残り続けていると言う事実は歴史を忘れない為の行為だと私は感じます。覚えている、知っている人間が居なければ歴史は死んでしまいますからね。延命治療の様な行為だと感じています。その歴史がどんなに悲惨と呼ばれるものでも、どんなに素晴らしい革命だと賞賛されるものでも個人の感情は反映されないじゃないですか。行動があるのならば、過程があり過程を起こすきっかけは感情だと私は思うんですよね。この映画は、様々な感情がダイレクトに頭をぶん殴ってくる。私は、人の感情や行動を褒め称えて美しく消化しようとするがあまり好きではないんですがこの映画はそう言ったフィルターがなくありのままを伝えている様な気がします。実際の所は分からないので想像に過ぎません。ですのでどうか1度だけでいいので見てください。人によっては、かなりしんどいと思うので見る時は精神が安定してる時がおすすめです。私はラストシーンで深めに心を抉られました。
⑨生き残る為の3つの取引き
世間を騒がす連続殺人事件を解決するため、上司から「犯人をでっちあげろ」と命じられた刑事チョルギ(ファン・ジョンミン)。優秀だが学歴がないせいで出世できない彼は、家族や仲間のことを考え悩んだ末、裏組織でもある建設会社社長チャン・ソック(ユ・ヘジン)に「証拠作り」を頼んでニセの容疑者を仕立て、犯人逮捕に踏み切る。事態に気づいた検事チュ・ヤン(リュ・スンボム)の追及を逃れるため、刑事は逆に検事の汚職をつかみ取引を重ね、次第に底なしの泥沼にはまりこんでいく。連続殺人事件の驚くべき結末とは?そして刑事の運命は?
Huluよりあらすじを引用させていただきました。アシュラをご覧になり、好きだと感じた方や興味のある方はこちらもおすすめです。四方八方、救いはなし。警察も検察も汚職に塗れ、協力者は建設業者の皮を被ったヤクザと金で動くマスコミ。もう既に臭ってきますよね。よいこの皆さん、韓国ノワールに対しての興味が沸いてきていますね!このブログを見てから感想を呟いた際には私がすかさず突撃しますので気をつけてください。
刑事であるチョルギは、広域捜査隊と呼ばれる警察組織の中のチームに所属していました。能力は優秀ですが、学歴がないせいで昇進がなかなか出来ない彼は悶々とした日々を過ごしていました。そんな中、発生していた児童連続殺人事件の犯人を捕まえられず世間から非難を浴びていた警察が大統領直々の命令もあり本格的に焦り始めます。そこで、優秀だがツテもコネない事件の捜査に最適な人材であるチョルギに白羽の矢が立ちます。「犯人をでっち上げろ」と言われ、最初は葛藤していたチョルギですが考え抜いた末、犯人を偽装する事を決意します。そこからヤクザのソックを使って色々と証拠を捏造していくんですが容赦のなさがえげつない。このソックもチョルギに協力的ですが、無償の善意ではなくきっちりと保険をかけておく抜け目のない男です。偽物の犯人逮捕で盛り上がってきた所で、チェ検事が登場。このチェ検事も優秀な方なんですが、金で記者を懐柔したり大手企業のキム会長に擦り寄って賄賂を受け取ったりと汚職に手を染めているんですね。う〜ん、悪どい。そんな2人はでっち上げた犯人を通じて火花を散らしながら相手を陥れようと目論むんですが流石は韓国ノワール。死ぬ事以外はかすり傷。まだ自分に息があるなら必ず相手に反撃して地獄に引きずり落とそうとする半沢直樹もびっくりの倍返しっぷりはいっそ心地良い程です。
タイトルにある生き残る為の3つの取引き。この映画において、取引のシーンはかなり重要な鍵を握ります。主要人物達が相手に出し抜かれないように取引に取引を重ね、その際に必ず相手が不利になる証拠を残しておく。主要人物が全員頭のキレる悪党なのでテンポがよく、場面の切り替わりが少し早いんですが頭の中でシーンを繋げやすい作りかなと思います。生き残る為に必要な3つの取引きが何であるか、皆さんには是非それを探していただきたい。チョルギ刑事とチェ検事、生き残るのは果たしてどちらなのか。連続殺人事件の真犯人は誰なのか。リバーシブルの様にころころと変わる形勢に気がつくと惹き込まれているので取り敢えず皆さん最後まで見てください。
⑩華麗なるリベンジ
熱血検事ピョンジェウクは、取り調べ中の容疑者を死に追いやったという濡れ衣を着せられ、一夜にして検事から懲役15年の服役囚へと転落。身の潔白を晴らすことを心に誓った彼は、獄中で知り合った前科9犯のイケメン詐欺師ハン・チウォンに近づき、「俺の計画に協力してくれたら、お前を出所させてやる」と極秘取引を持ちかけた。バディを組むことになった二人、その空前絶後のリベンジ作戦の全貌とはー。
はい、はい。分かっています。よいこの皆さんの顔をじっくりと見てきた私には全てお見通しです。隠したってダメですよ。皆さんがご所望なのは堅物で頑固なワケありおじさんと、その美貌を利用して結婚詐欺をしてるチャラついたスケコマシのコンビですね?ご注文ありがとうございます。遠慮しなくて大丈夫ですよ。皆韓国ノワールに沈めてやるつもりでこちらもやってるので早く沈んでください。
検事であるジェウクは、リゾート地の建設を反対する抗議デモに参加していたイ・ジンソク容疑者の取り調べをしていました。彼は警察ともみ合いになり警察官1名を意識不明の重体に追い込んだ加害者として現行犯逮捕され、ジェウクは彼が環境保護団体を装った暴力団関係者であると睨み繋がりを無理矢理にでも暴こうとしていたのです。しかしながら、取り調べ中に心臓発作で容疑者が死亡。ジェウクが行っていた暴力的な取り調べが原因だと濡れ衣を着せられ、今まで犯罪者を刑務所に送っていた検事が同じ刑務所にぶち込まれる事になる。かつて同じ様に暴行をしてきたゴロツキ達に熱烈な歓迎を受けながら、ジェウクは自分を裏切った上司や同僚に復讐を誓います。刑務所内で地位を築き、自分に害のある囚人を排除しても判決を覆す決定的な証拠が出てこない。そんなおり、刑務所にまた新しい住人が増えます。背が高く、明らかにチャラついていて社会を舐め腐ってそうな顔した男。チウォンの登場です。初めは新人に見向きもしないジェウクが、チウォンが環境保護団体としてあの抗議デモに参加していたと知り彼に近づいていく。この時のチウォンは騙そうと目論んでいた彼女にアメリカ帰りの帰国子女と言う設定があったのでちょいちょい英語を挟んでくるんですがそれが物凄くチャラ度を増幅させていて最高でした。個人の趣味として、自信過剰で飄々としたチャラついてる人間が窮地に立って本気を出し始める伝統芸能が好きなのでどんどんやって欲しいです。
ジェウクが服役する事になった件に関しては確かにえん罪ではあるんです。しかし、彼は実際に暴力を振るい何度注意されても強引な捜査を進める野蛮な検事でした。チウォンも人を騙す事を悪いと思わず何度も犯行を繰り返し、ジェウクの手で刑務所の外へ出たあとも反省の様子が見られない困った奴でした。この困った2人組が出会い、本当の信頼を得た時に救いがやってくる。こちらも明るめの作風になっていて、間違った事をしたとしても立ち直る事は出来ると教えてくれます。作中でジェウクがチウォンに福音書の一節を諳んじるシーンが出てくるんですが、重荷を負う者は私の元に来なさい。休ませてあげよう。マタイによる福音書、11章28節。この発言が後に重要な役割を持つんですが、それ以外に言葉そのものの意味を捉えるとこれはイエス=ジェウク。つまり、救われたいなら俺(ジェウク)の言う事を聞けよと遠ましに言ってるんだと思いました。そして、その後ヨハネによる福音書16章33節とジェウクが言います。作中では内容までは語ってないのですが、この言葉の意味を調べて知った時私はスタンディング・オベーションで泣いてました。皆さんにも是非その意味の深さを知っていただきたい。本音を言えば心置き無くネタバレしたい。なので全員見てください。
いかがでしたでしょうか。取り急ぎ10本の韓国ノワールを紹介させていただきました。韓国ノワールなのかこれはと思ったものもありましたがここに挙げた映画はどれも傑作と呼ばれる作品なので是非見てほしいです。アシュラが見れたなら大概のものは見れるだろうと勝手に思ってますが、ご自身の体調とよく相談して体にあった韓国ノワールを摂取してくださいね。薬も飲みすぎては毒と同じです。お大事になさってください。これ以外にも、オールド・ボーイ。チェイサー、コクソン等の映画もありますしドラマも豊富で最近はもっぱら君を憶えてるで騒いでいます。めちゃくちゃ楽しいです。またやる気が出たら犯行に及びたいと思いますので、韓国ノワール初心者のよいこの皆〜〜〜!!!今日の体操はここまで!また次もオタクに会おうね〜〜〜!!!バイバイ〜〜〜!!!
終
制作・著作
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