賞味期限なし


いつも、息が、言葉が、身体を離れた瞬間に壊れる気がしている。


なにもかも、空気に触れて、酸化する。

自分の胸に、喉に、耳の後ろにあった時とは色も形も変わっているけど、目の裏にふわふわ浮いているこれを渡すしかないみたい。



ずっと、言葉以外の方法を考えている。


体の中心で生まれたものを、拾って、重ねて、そのままの姿で包んで、あなたの身体に埋められたら。


そんなことはできないから、お腹に、背中に、指の先に、耳の先に、バラバラに広がったものを並べて、繋げて、目に見えるように、耳に聞こえるように、形にするの。


遠い。遠い。


それじゃあ、届くまでに、形が変わっちゃう。


近く、近く、



やっぱり言葉は最初に要らなくなるから口と口を塞ぐんでしょう。

中心で生まれて溶けてバラバラになったものを表面ギリギリに伝えているから体と体を重ねるんでしょう。

隅々までいっぱいになっているのを確かめるために指と指を絡めるんでしょう。




それでも、足りないものは、どうしても。





「今日のご飯、何がいい?」


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