ぽぽろの毛筆書写検定1級対策記録

こんにちは。
先日、5回目の挑戦でようやく毛筆書写技能検定1級に合格したぽぽろ(@popolo0917)です。
ワタクシ、合格するまで数々の勘違い/失敗を重ねてまいりました^^;
そこで今回、少しでも志を同じくする方のご参考になればと思い、自分なりの気づきを、概論と各論の2本立てで、共有させていただきます。

最後までお付き合いいただけたら嬉しいです♡

まず、声を最大にしてお伝えしたいのは、毛筆書写検定はその名の通り、「書写」力を判定する検定であるということ!

そもそも「書写」って、何でしょう?
詳しくは日本書写技能検定協会(「協会」)発行の『毛筆書写技能検定の手びきと問題集』(「手びき」)をご参照いただきたいのですが(この本、とても役に立ちます。)、要するに「書写」とは書くことです。検定試験では、「正しく美しく」書くことが求められます。
 
では、「正しく美しく」書くって、どういうことなんでしょう?
それは、ひと目で誰が見ても、書かれた文字なり文章なりに間違いがなく、可読&理解でき、癖のない中道的な字で書く(王羲之風の書体とでも言いましょうか。)ことではないでしょうか。
 
手引きには、「きわめて高度の技法を必要とする書き振りや、個性の強い書き振りなどは、かえって期待していません。」とハッキリ書いてあります。
書写検定では、基本的に芸術的な書きぶりは求められてないんです。ここを見落としては絶対にダメなんです。

正しく美しく書くためのコツとして、私は以下の2点に気をつけました。
一点目は、ゆっくり丁寧に書くこと。
ゆっくり丁寧に書くことで、誤字脱字のミスも減りますし、一本一本の線にこだわりを持って書くことができます。
これは楷書の線として正しいかな?
これは行書の線で間違いないかな?
などと、一画一画、自問しながら書きました。

二点目は体裁。これも美しく見せるために、ものすご~く重要ですよね。
字は大きすぎないか?小さすぎないか?
字間・行間のあきはOKか?
上下左右の余白はきちんと取ってあるか?
中心線は通っているか?
などなど、体裁を整えるためのポイントをかなり意識しました。

次に、やって良かった事前準備を2つご紹介します。

やって良かった事前準備 その①:文房四宝をめちゃくちゃ吟味した。

本番で使用する筆、紙、墨、硯の選定に、かなりの時間を割きました。
一番重視したのは、半紙です。
ご存じでしょうか?
検定試験で配布される半紙って、実は購入できるんですよ^^
協会のホームページを覗いてみてください。「検定の教材」というメニューから購入できます。
私は、本番で使う半紙の性質を事前に把握できたことで、多大な恩恵を受けました。
というのも、個人的には書きにくい部類の紙質だったからです^^;
厚さはやや薄め。表面はツルツルしていないから筆は滑らず、逆に筆を持っていかれる感覚がありました。その上、手持ちの普通の濃さの墨だと若干にじんだので、濃いめの墨で、じっくりゆっくり書くのに適している紙質だと解しました。
 
それから、半紙に合う墨と筆を決めました。
何事も相性って、めちゃくちゃ重要ですからね^^
 
墨は、最終的に墨運堂さんの「玄宗 超濃墨液」に少々水を加えることに。ただし、第2問の漢字仮名交じり文と第4問の仮名臨書の際は、手擦りの墨液を使いました。手擦りのほうが、墨色もキレイだし、何より墨がよく伸びて、書きやすいですからね。

話がやや脱線しますが、冬場に受験する場合は(第3回ですね。)、墨の調整に要注意です。会場内の暖房の影響で、擦った墨が即効蒸発しました・・・。
「大した量じゃないから試験中に擦ればいいや」と思ってやってみたら、擦っても擦っても一瞬で乾燥して消えるし、墨の濃さが変わってしまうし、「こりゃ、試験中にやるもんじゃないな」と心底反省したものです(ToT)
 
やっぱり試験中は、字を書くことだけに集中したいじゃないですか。
だから、もし手擦りの墨で書く場合には、自宅であらかじめ多めに擦って、それを小さな容器に詰めて持参して、試験前/中に微調整すればOKの状態にしておくことを強くオススメします!

それと、筆も多めに用意したほうがいいです。
墨と同様、筆も何が起こるか分からないです^^;
私、これも経験があるんです。本番中、いざ書いてみたら、なぜかやたら調子が悪くて、使えると思った筆が使えなかったという・・・(><)

私は腕に自信がない分、良い筆に頼る作戦を取りました。
少しでも合格に近づきたくて、筆も色々試した結果、課題ごとに筆を変えることにしました。ご参考までに、私が使用した筆はこちらです↓
 -第1問は西野天祥堂さんの「飛鳥3号」
 -第2問はキョー和さんで購入した「富士7号」
 -第3問は手持ちの羊毛筆(課題が隷書の曹全碑だったので)、
 -第4問は西野天祥堂さんの「写楽3号」
 -第5問は玉川堂さんの「長鋒捲心2号」 (半折1行書きの漢字課題を選択したので)
 -第6問は西野天祥堂さんの「流水(大)」

硯は、筆や墨に合わせて、2,3個使い分けました。

ついでに言うと、私、下敷にもこだわりました。
書写検定では長らく無地の下敷しか認められていませんでしたが、何と、令和元年度の試験から、罫線入り下敷の使用が認められるようになったのです!(by 協会のホームページ)

物は試しとばかり使ってみたところ、まぁビックリ、なんてラクなんでしょう~。
常に中心線が可視化されるので、右に寄ってしまう確率がグッと下がりました。
毛筆1級を目指しているような方は、日頃から訓練を積んでおられ、感覚的に中心線を捉えながら、まっすぐ書く力が備わっていらっしゃる方が多いと思います。
しかし!
罫線入りの下敷を使うと、まっすぐ書くということに注意を払わなくて済む分、文字を書くことに集中できます。

ちなみに、念のため協会に電話で確認したところ、あくまで市販の商品に限るそうで、検定対策用に自作した下敷などはNG、とのことでした。まぁ、そりゃそうですよね。試験ですもの、何でもOKというわけにはいきません。

ということで、文房四宝を色々試して見ることをオススメします!

画像1

やって良かった事前準備 その②:課題に取り組む順番をよーく考えた。

毛筆1級には、実技科目が計6問、それに理論問題があって、これらを150分以内にこなす必要があります。2時間半とはいえ、実際に臨んでみると、アッという間です(*o*)限られた時間を無駄なく使うため、課題に取り組む順番を事前に考えておくことも非常に役に立ちました。

素直に、第1問から順番通りに取り組む必要は全くありません。例えば、自分の得意なor不得意な課題から始める、時間のかかるorかからない課題から始めるなど、ご自分の中で一番しっくりくる順番を見つけることをオススメします。

私の場合は、墨の使用量の少ない順に取り組みました。
具体的には、「理論問題→第4問の仮名臨書→第2問の漢字仮名交じり文→第1問の3書体→第3問の漢字臨書→第6問の賞状書き→第5問の自由作品」の順です。

ただ、今振り返ると、一番最初に賞状書きをやっつけておいても良かったかもしれません。賞状書きで脱字のミスをしてしまい、残り少ない時間の中、急きょ書き直すハメになってしまったので^^;

それと、紙は各問2枚ずつということで合計12枚配られますが、とりあえず各問一枚ずつ書いて、まずは一通り全部終わらせておいたほうが安心です。
本番は何が起こるか分かりません。独特の緊張感もあります。
1枚目でバッチリ仕上げる覚悟で取り組んでください。

余談ですが、敢えて一発合格を狙わないというのもアリかもしれません。
どういうことかと言うと、毛筆1級の場合、実技科目、理論科目それぞれに合否判定が出ます。そして、「準登録制度」と言って、片方合格した科目が、次回、次々回に免除されるんです。
なので、まず最初に理論問題のほうだけ合格しておいて、次回、次々回に、持ち時間の150分をすべて実技問題に充てるという作戦です。別に狙ったわけではありませんが、私は理論問題免除の時に受かったクチです^^;実技科目だけに集中できたので、やっぱり多少なりとも気がラクでしたよ。

では次に、各問題のポイントを記しますね。

第1問 3書体

5字名句を、楷書、行書、草書の3書体で書き分けるという第1問。
のっけからすみません、白状させてください。私、この第1問が一番苦手でした・・・。
なぜかというと、第一に、半紙に15文字書くというのが難しい。第二に、体裁を整えるのが難しい。第三に、草書が覚えられない。本当に三重苦でした。
ただ、その分、ノウハウが溜まりましたので、どうやって対策したか、記しますね。
まず、5文字(5字名句)のお題について、ヤマを張りました^^;
第1回は春/夏にちなんだ語句、第2回は秋の語句、第3回は冬/春の語句にちなんだ語句が出題される傾向にあります。(さすが書写検定、このあたりが非常に文化的かつ風流です~)
そのため、自分が受験する回の季節の語句をまず墨場必携で調べて、その名句から練習を始めました。
そして、体に染み込ませるため、とにかく書き込みました。
書体や筆使いについて、書写的な書き振りを心掛けました。
楷書は孔子廟堂碑を、行書は蘭亭序を、草書は書譜を意識して書きました。
書く順番も工夫しました。私の場合、真ん中の行書を一番最初に書き、次に右の楷書を、最後に草書を書くことで落ち着きました。
体裁については、天地の余白を約2センチとり、各中心線が約7センチ間隔になるように書くと、まとまって見えました。

画像2

草書の暗記は、練習した名句の字を一つずつ覚えていきました。
草書の形って、本当に色々ありますよね・・・。
気が狂いそうになりましたが、書譜や十七帖の形をベースに暗記しつつ、覚えやすい形をその都度マスターしました。
最初はキツかったけれど、そのうちくずし方のパターンが分かってくるので、辛抱して地道に暗記し続けるしかありません。
暗記すると、書いてある字が字典なしで色々読めるようになるので、試験後も役に立ちます。(逆にこういう機会がないと、草書の暗記なんてキリがなくて、なかなかできなかったと思います^^;)

第2問 漢字仮名交じり文

50文字前後の漢字仮名交じり文を書く問題です。
対策としては、第1問同様、ひたすら書き込みました。
最初に出題文の文字数を数えて、4行にするか5行にするか判断し、それから1行目だけは何文字入れるか入念にシュミレーションしました。1行目が決まると、2行目以降はそれに従って書くわけですから、1行目でミスるわけにはいきません。私の場合、大体いつも1行に12文字ぐらい書いていました。
字の大きさや余白の美しさを考えると、なるべく5行で書いたほうがいいです。平仮名が多かったり、文字数が少ない場合に限って、4行書きを検討すれば良いと思います。
5行書きの場合、体裁としては、天地に約2センチの余白をとり、各中心線の間隔は約4センチにしました。

画像3

漢字仮名交じり文の場合、平仮名の美しさが作品の印象を大きく左右します。
そのため、私は平仮名を一から学び直しました。約50文字しかありませんから、攻略しやすいですしね^^
また、過去問に取り組みつつ、書店で自分好みの書風で書いておられる方の細字・小筆の本を買ってきて、臨書したりもしました。

第3問 漢字臨書

篆書以外の書体、つまり楷書、行書、草書、隷書から出題されます。唐&平安時代まで見ておけばOKですが、何が出るかは当日のお楽しみです^^;
こればっかりは、日頃から臨書(形臨)の勉強して、観察眼を養い、特徴をよくつかんで、書き慣れておくしかないでしょう。

第4問 仮名臨書

第三問同様、何が出るか分かりません。
試験対策として、私は高野切第三種と過去問の臨書を繰り返しました。

第5問 自由作品

画仙紙に、漢詩(14字)、漢字5文字、和歌一種または自由詩のいずれかを選択して書く、いわゆる創作です。
自分で4つの課題の中から選べるのがせめてもの救いです。
これも日頃の練習の成果を思う存分出すしかないですよね・・・。

ただ、あくまで「書写」検定なので、極端に細い線で書くとか、不自然な筆使いで書くなど、中道から外れる書き振りは避けたほうが無難でしょう。
温和で健康的な書風が尊ばれるはずです。

第6問 賞状書き

B4サイズの上質紙を使った賞状書きの問題です。唯一、実用書のジャンルからの出題ですね。 
実用書に馴染みがない場合、一見ハードルが高そうに思えますが、恐れるなかれ。
決まり事さえ押さえておけば、毎回同じ形式なので、一番事前対策を講じやすいです。
賞状書きは、何といっても字割り(レイアウト)が命。
何度もレイアウトを書いて覚えました。
それと、字の大きさにもポイントがあります。
大きさは、「賞状>受賞者名>授与者名>本文>日付」の順です。
字体は楷書で。平仮名も楷書風のほうが統一感が出ます。
スペースの都合上、縦長ではなく(正方形~)横長気味で書くことになります。
横画は細く、縦画は太く書いて、堂々と立派に、安定感を出すことが大事です。

画像4

書き終えて墨が乾いたら、最後に鉛筆で書いたレイアウトの線を消しゴムで消す作業もあるので、意外と時間を取る点はご留意ください。

最後に

いかがでしたでしょうか?
第5問の創作以外の課題でしたら、1枚1000円で添削を承ります^^
もしご希望の方がいらっしゃいましたら、お気軽にぽぽろ(@popolo0917)宛にご連絡ください。
最後までお読みくださり、どうもありがとうございました。
私も引き続き、書の勉強を続けます^^/


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?