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困った夜は擬態で逃げきれ。

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この日は気持ちがどこか乗らず、まっすぐ家に帰れない日だった。
金曜日だから中島館は休みだし、あんま派手なことをしたい気分でもないし、どうやってやり過ごそうか。
色々悩むのもめんどくさくて、沿線のチョコザップで体を動かした。


いくつかのマシンのいいなりになって「もういいわ、しらないわ」と無心になる自分は嫌いじゃない。
自我が邪魔に思えるときは、自動運転に切り替えて、ひとまずタスクをこなす。
地球の重力と戦いながら、レッグプレス、ラットプルダウン、トレッドミル。コツコツ時間を重ねていると、Bluetoothイヤホンが、上がるBPMに対して、イイ感じのBGMを届けてくれるし、ハムスターの回し車みたくもあるけど、音楽が自分への小さなご褒美にも思えて「なんだ人生楽しいじゃん」とか。


ただ運動して落ち着いて、まいばすけっとで買った、ノンアルコールビール飲み干した頃には、またすこし気持ちが行方不明になっていた。
今度はまた他のコンビニに入り、ゆるい格好で買い物をしている地元住民?を、観察して擬態化して、また自分を忘れようとしてしまった。
「バスの揺れ方で人生の意味が分かった日曜日」と歌っていたのは、昔のスピッツだったけど、その時はバスか道路に擬態していたのかな。


家に帰宅すると、今度は聴覚がトゲトゲしてきたので、耳栓を付けて過ごした。
社会人にはギリギリ擬態できるけれど、擬態するものが無いと、風が吹けば飛んでしまう塵のようだわ。

ひと先ずこの日は、これ以上「この日の私」を続けてはならぬ気がして、たぬき寝入りのまま入眠した。
死体になるにはまだ早い。困った夜は擬態で逃げきれ。

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