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困頓生活 2 / tohoho次郎

text by tohoho次郎
posted on March 25,2021



どうも、tohohoの次郎です。ニュースなどでよく「高齢化社会」と言われていますが、皆様は日々の生活でどれ程影響があるでしょうか?というかどなたにでも影響はあると思うのですが、「うわぁ〜高齢化社会やわ〜」とか感じておられますでしょうか?私はどうかといえば高齢化社会という崖を転がり落ちない様、横転がりをしている最中であります。

それでは皆様の暮らしの箸休めにどうぞ。

私は農業機械整備士という仕事をしておりまして、トラクターやコンバイン、田植え機、草刈り機やチェインソーなどを主に直しています。自営業ではなく農機具屋で雇われているサラリーマンであります。
数年ほど前から「農業従事者の高齢化」という話をよく耳にしますが、正にその通りで我が社の2000人程のお客さん達の平均年齢は70代以上であります。
それと同じく農機具屋も高齢化しており、私の勤める会社では37歳の私が1番の若手、そのすぐ上は時期社長である専務で、年齢は53歳。私は入社して丸13年になるのですが、その間に従業員の出入りが15人程(因みに社長、社長夫人、息子の専務を除くと従業員は7人程です)ありましたが、私よりも若かったのは僅かに1人。そして入社はしましたが、3ヶ月程で辞めていきました。

高齢化はもちろんのこと更には昨今よく言われている人手不足、従業員を募集しても希望者がいないという問題にも飲み込まれ、ここ3年程募集をするも面接にも来ない、という状況でした。ただ私はその頃、まだ特に高齢化社会の事を特に感じていませんでした。

明らかに人が足りていない、誰でも良い、今なら猫でも犬でもいいから入社して欲しい、というそのタイミングでハローワークからの紹介ではなく、人づてに整備士希望の62歳のおっちゃんの入社が決まりました。62歳、特に機械を触った事もない、すぐタバコを吸う、三重県出身だけど絶対三重弁ではない変な訛り。いいんです!そんな事は!どうでも!取り敢えず!
何でもいいから人手が欲しい会社としてはもちろんすぐ採用。2月後にはバッチリ正社員、私としても58歳で入社し、66歳になったら体調不良になってしまった整備士のおっちゃんが辞めてしまい、整備部門が私1人だったので素直にとても嬉しかったのであります。

そんなこんなでおっちゃんが入社、その後暫くしてある造園屋さんに出張修理を頼まれ現場に行きました。順調にチェインソーを修理した後、社長さん(50代前半)やその他の職人さん達(30〜40代)と世間話をしました。
私が「社長どうですか?造園屋さんも人手不足じゃないですか?」というと「まぁね〜、若い子はやっぱ少ないね〜。ウチは大丈夫だけどね〜。そっちはどうなの?」

よくぞ聞いてくれました社長!入ったんでっせ、新入社員が!

私「いや〜ようやく1人入ってくれたんすよ!助かりましたわ〜!」
社長「へ〜良かったじゃん!いくつくらいの子なの?」
私「62のおっちゃんです!経験も無いんですけどね〜」
社長「えっ?!62?!マジで?!経験ないの?!無理でしょ!修理出来んでしょ!いらん事ない?!パートでしょ?!」
私「いやいやまぁ何とか正社員で頑張ってますよ…」
社長「えぇっ?!正社員なの?!マジで?!凄いね!えっ、何、その歳の人が「新入社員です、よろしくお願いします。」とかすんの?!マジで?!ギャーッハッハッ!!(職人さん含め皆爆笑)」

昔ヤンチャだったんだろうなという人達の爆笑する姿を見て、この元ヤンキーめ!ひどい事言って!と思う反面その時に「そういえばうちの会社おっちゃんしか働いてないやん…あぁ…そうか…普通はそんなおっちゃんを正社員では採用しないのか…」
と我が社が高齢化している事、私が崖を転がり落ちている事に気付いたのであります。
それから1年経ち、まだまだ人手不足の我が社にハローワークからの電話。営業マン希望で面接したい人がいるとの事。さぁ何歳?!55歳。またおっちゃん。で、すぐ採用。10年働ける、オーケーオーケー横転がり獲得。でも上には登れない。まぁでも良いか!落ちてないから!先の事は考えても仕方ないしょう?!もう転がっていくしかないでしょう?!ライクアローリングストーンよ!ボブディランも言ってるでしょう?!違う?!

このまま真っ直ぐに転がり落ちる事なく横転がりを繰り返し、高齢化社会を転がり続けようと思っております。


tohoho次郎_profile

愛知県の名古屋近郊で活動しているtohohoというバンドでベースと広報を担当しています。普段は犬山市の農機具屋で修理をしてます。


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