元カノと風船(誕生日)
一緒に受けていた講義が終わったあとも、元カノとの電話のやりとりは続き、そのうち付き合うようになった。映画に行ったり遊園地に行ったり街ブラをしたり、特に風船を絡めてどうこう、ということはなかった。でもディズニーランドに行ったときには必ずミッキーの風船を買ったし、街で風船を配っていると必ずもらって元カノに持ってもらった。最初は「子供じゃないのに…」とちょっと恥ずかしそうにしていたが持ってもらい続けているうちに慣れたようだ。後日、あの風船どうなった?と聞くと、「持って帰って部屋に置いておいたら萎んでしまったけど、まだ捨てずに置いてあるよ」と言っていた。はじめは何とも思わなかった風船をだんだん好きになってくれたようで嬉しかった。
交際を続けているうちに、元カノの誕生日が近づいたので、「その日はサプライズにするよ」と、マンションの鍵を借りて、仕事が終わって帰ってくるまでの間に僕が飾りつけをすることにした。持ってきたユニーク16インチのHappy Birthday柄の風船を、ちょっと多いかなと思いつつ色をまぜて10個ほど大きく膨らまし、ヘリウムを買う金もないので床に転がしておいた。もちろん、小さなケーキとブーケも買ってある。元カノは帰宅するなり「なにこれー!」といって喜んだ。ケーキを食べDVDを一緒に見ているうちに、風船を手に持ってポンポン僕に打ち付けてきたり、キッチンに行くときに蹴散らしたりして遊んでいた。
二人でワインをかなり飲んでいい雰囲気になり、「風船がいっぱい」「ありがとう」「風船好き?」「うん」「邪魔にならない?」「んー、このままだとちょっと邪魔かも」「どうする、割っちゃう?」「え?」「風船割るの怖い?」「割るの結構好きかも」元カノを抱きしめながら「本当に?じゃあ、僕の一番好きな風船割っちやおうかな」「何言ってるの…」いろいろあるうちに、風船もひとつふたつ割れてしまったようだ。
風船の出番は特別な日だけで、その後もあちこち出かけた。一度、元カノがバイトでスイムスタッフをしているジムに半ば無理やり連れ出されたが、体にぴったり張り付く目が覚めるようなブルーのスイムスーツ姿の元カノが脳裏に焼き付いた。高校は水泳部だったとのこと。これが後々まで残るトラウマになった。今でもクリスタルブルーの風船を見るとスイムスーツ姿の元カノを思い出す。そしてその風船を無性に割りたくなる。
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