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【講義レポートvol.3】ハワイの持続可能な世界を作るマーケティング戦略(ハワイ州観光局 ミツエ・ヴァーレイさん)

日本人なら一度は行きたいと思う憧れの場所、ハワイ。

透明な海、フレンドリーな人々、どこからか流れる陽気なハワイアンミュージック。そしてまだまだ知られていない魅力の数々。

しかし、放っておいては、それらの魅力は過度な観光客の来訪や、環境破壊によって失われてしまいます。
そうならないために、魅力いっぱいのハワイを持続させるために、どのような活動がされているのかを知っていますか。ハワイでは、どうやって観光と地域が調和した持続可能な世界を作っているのでしょうか。

日本でも観光に力を入れ始めていますが、オーバーツーリズム、環境破壊、地域との軋轢、、、など課題も山積み。そんな日本がハワイから学ぶことは沢山あるはず。

そのヒントを知るために、今回はマーケティングを中心にハワイの持続可能な世界を作る戦略についてお届けします。

<目次>
・ミツエ・ヴァーレイさんプロフィール
・ハワイ観光基礎情報
・ハワイのマーケティング戦略
・Q&Aセッション
・まとめ

【プロフィール】

今回の講義の講師はミツエ・ヴァーレイさん

ミツエさん1

ハワイ州政府から委託を請け、ハワイ州観光局にて日本市場におけるハワイの観光促進活動に携わり、2012年1月、ハワイ州観光局のマーケティング本部長に就任。現在、日本支局長として日本人旅行者のハワイへの誘致活動として、広告、広報、イベントプロモーションなど日本市場におけるマーケティング活動、および旅行業界向けのセールス活動の業務を統括。結婚を機に1992年ハワイへ移住。出身は石川県金沢市 

ミツエさんがハワイ州観光局で働くことになった経緯は後述していますので、公気になった方はぜひ最後までどうぞ。

【ハワイの観光基礎情報】

ハワイのマーケティング戦略に触れる前に、ハワイの観光産業と日本との関係について、知っておきましょう。

・観光は3大産業の一つで、5人に1人は観光にかかわるお仕事をしています。
・ハワイは主に8つの島から成り立っており、島それぞれに違った魅力があります。
・年間観光客数: 996万人
うち日本人は158万人。アメリカの国内旅行客に次いで2番目に多くの人が訪れています。
・日本人リピーター率: 70%
・観光による税収入: 60億円/日
  消費税などだけではなく、ホテル税なども含まれています。

【ハワイのマーケティング戦略】

いよいよ、ハワイのマーケティング戦略について触れていきます。
観光が大きな産業とはいえ、過剰な観光客の受け入れは、オーバーツーリズムにつながります。ハワイでは、どんな人に来てもらいたいのでしょうか。この章では、ハワイのマーケティングの仕組みやターゲットについてお伝えします。

1 方針について
 ハワイのマーケティング方針は、ハワイ州一丸となった目標として決められます。中心となるのは、HAT(Hawaii Tourtism Authority)という機関です。その下に、世界の各地域のマーケティングを担当する機関が置かれています。ミツエさんが支局長を務める、ハワイ州観光局の日本支部もHATの下に置かれています。

(簡略図 *実際に更に多くの機関が絡んでいます)

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余談になりますが、観光用語的には、ハワイ州観光局の各支部はDMO(Destination Management Organization)と呼ばれる機関になります。”DMOは観光物件、自然、食、芸術・芸能、風習、風俗など当該地域にある観光資源に精通し、地域と協同して観光地域作りを行う法人のことです。日本でも地方創生のためにDMOが立ち上がったり、ハワイのDMOを見習おうとする動きがでています。”(JTB総合研究所より引用)この仕組みによって、各地方やハワイの各8島がバラバラになることなく、同じようなイメージをもって活動ができているのではないか?と考えるPOOLOメンバーもいました。確かに、日本では各場所が個別に集客をしようとし、観光地が点と点になっていることがしばしば見受けられる気がします。

2 HAT(Hawaii Tourtism Authority)について
ハワイのマーケティング戦略に大きく関わる、HATのミッションは4つ。

・ハワイの観光に関する質の向上
・労働機会の創出
・自然、文化の保持
・州民の生活向上

特に下2つが大切で、その実現のためにローカルとも連動して様々な戦略やプログラムを立てています。
プログラムの例としては、文化や自然を守るための活動をしているNPOへの支援、ハワイを代表するフェスティバルやイベントの開催(ホノルルマラソン)などがあげられます。

3.ハワイのターゲットと、狙い
では、結局、ハワイはどのような人に来てもらい、どのような観光をすすめたいのでしょうか。ズバリ。
<ターゲット>
 人数より、観光客の質を重視。
 体験や自分の教育のためにお金を使ってくれる人

 ハワイでは、現地を尊重してくれる旅行者にアプローチをしたうえで、彼らが現地を尊重できるよう、知識や自主ルール、文化を渡航前に伝えるレスポンシブル・ツーリズムを進めています。その積み重ねが、観光客と地域が調和した世界をつくっているのですね。
そして、他国の文化への理解を深めた旅行者は、自国の文化への理解度を見直すことになります。その旅行者が自国について深く知り、自国に誇りと情熱を持てれば、その国の観光も発展していくはずです。

【Q&Aセッション】

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ハワイのマーケティング戦略はもちろん、ミツエさん自身が本当に素敵な方でした。ファンになったPOOLOメンバーも多いはず!そんなミツエさんへのQ&Aセッションをお届けします。

Q どういう経緯で、ハワイ州観光局で働いているのですか??

A 一番大きいのは、人との出会いですね。はじめは、短大を出て、商社で働いていました。ある時短期留学をして、カルチャーショックを受けて。それまで外国なんて行ったことなかったのですが、それをきっかけに夜間学校で英語を学ぶようになったのです。そこで今の主人と会って結婚、主人についてハワイに移住しました。ハワイで何か仕事したい!と思って、今までとは全然関係ない仕事(牧場??ここ電波わるくてきこえなかった。だれかへるぷ!!)を7年半しました。初めは、アクティビティのアテンドをやっていたのですが、アトラクション営業やコーディネーターみたいな仕事もするようになって。その後、縁あって今の仕事になりました。だから、マーケティングのクラスを受けたりしたこともありません。でも、常に「なんでだろう?」という疑問をもつことや、アンテナを張ることは欠かさないです。
人生に分岐点ってあると思うのですが、その時に大事なのは、人との出会い、夢、やりたいことを頭に置いておくことだと思います。最後は勘ですけどね(笑)

Q ミツエさんから見て、日本の地方創生で改善できそうなところはありますか?

A もったいないと思うのは、すべて日本で完結してしまっているところですね。外国人を呼びたいと思うなら、日本人だけで外国人ターゲット層にアプローチするのではなくて、ターゲットとする外国人のエキスパートとパートナーシップを結んだりすればいいのに、と思います。
もう一つ、大事なのは参加者の情熱ですね。その土地に魅力があるのはもちろんですが、旅行者と、現地の人のパッションがなければ成り立ちません。

Q 最後に、もし自分が22歳だったら何をしますか?

A 全然本を読まなかったので、本を沢山よむ&旅をします。あと、目標とする人(メンター)を見つけることも大事だと思います。

人との出会いを大切にされていて、大事なことは、興味、柔軟性、ポジティブさとおっしゃっていたミツエさん。その言葉通り、エネルギッシュで魅力的な方でした。

【まとめ】


ハワイと日本、一見全く違うように見える島ですが、お話の中で似ているところが沢山ありました。
特に、ある土地を盛り上げていくのに、ローカルの人の情熱やその土地への誇りは必須である、というお話にハッとした人も多かったのではないでしょうか。
旅がより身近になっていくこれからこそ、地元や日本にもっと愛着と情熱をもって生きていきたいと思いました。

以上、講義レポートでした。
ありがとうございました。



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