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愿以山河聘11(作者:浮白曲)の有志翻訳【中華BL】



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愿以山河聘リンク
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第十一章リンク
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翻訳

沐浴

食事が終わるのを待って、宮女は食卓に残った冷めた料理を片付けた。衛斂うぇいれんは白い手巾を使い、美しく優雅な仕草で口を拭いた。
冬の日は短く夜は長い。外は既に日が暮れて暗く、月が朧に霞んでいた。
寒さが身に沁みる。
衛斂うぇいれんが養心殿を出た時、夜気の冷たさで室内に戻りたくなったが、姫越じーゆえは冷たい手を握り掌のぬくもりを伝えてきた。
宮人の目の前で、姫越じーゆえは彼を優しく気遣った:「寒ければ私の手を握っているといい。」
衛斂うぇいれんは笑みを浮かべ、恥ずかしそうに頭を下げた。
二人の雰囲気は和やかだった。
夜になると姫越じーゆえは御書房に行って上奏書に目を通した。朝廷に大きな案件がなければ半時辰ほどで済むが、政務が忙しい時に灯りをともしては夜明けまで徹夜することもあった。
かつては傍に控えて墨を擦る侍従もいたが、今は衛斂うぇいれんが新任の「男寵」として傍らに寄り添いそれを担っていた。
御書房は養心殿からあまり遠くはない。曲がりくねった回廊をしばらく進んで扉を開けると一陣の暖かい風が顔に吹き付けた。
姫越じーゆえ衛斂うぇいれんと更に四名の官人を傍に留めた。
姫越じーゆえは初期の数年間は統治に忙しかったが、今は六国が皆秦を尊び、天下太平で天災いもなく、朝臣は皆手が空いていた。
というわけで、姫越じーゆえの机の上に堆く積まれているのは各地の民衆の概況ではなく、国防についての情報でもなく、美人画の絵巻物だった。
それが後宮に美女を送り込もうとする大臣たちの仕業であることは考えるまでもない。
姫越じーゆえは一幅の巻物を開いて何気なく眺めると、すぐにその絵巻物の山を頭から消し去り衛斂うぇいれんに寄越した:「お前より美しいものを選んで私に見せてくれ。」
どんな人でも彼の目に目を止めて貰えるわけではない。平凡なものは姫越じーゆえが見る必要もない。
衛斂うぇいれんは答えた:「はい。」すぐに絵巻物を手に取り、一幅ずつ真面目に見ていった。
線香が燃え尽きるほどの時間が経った後、衛斂うぇいれんは絵巻物を全て元に戻し、謙虚で丁寧な口調で言った:「選べませんでした。」
姫越じーゆえはその言葉の意味を考えた:「それはお前が一番美しいという意味か?」
衛斂うぇいれんは頷いてさらに謙虚に言った:「はい。」
姫越じーゆえの目の光がわずかに動き、目の端を少し持ち上げて笑った。
この男はどうしてわざとらしく謙虚なふりをしながら傍若無人で言いたい放題のことを言えるのだろうか。
彼は実は……激しい気性が好きだった。
姫越じーゆえはそれらの絵巻物を床に払い落して机の上に空きを作った。巻物はガラガラと地面に落ち小さくはない音を立てたので、部屋にいる四人の官人は秦王が怒ったのだと思い、怯えてすぐさま跪いた。
ただ衛斂うぇいれんだけは平然とした顔をしていた。
姫越じーゆえ衛斂うぇいれんの腕を掴むと目の前の机に抱き上げ、とても愛おしそうに言った:「では、彼女たちは必要ない、お前だけが居れば良いということか?」
衛斂うぇいれん:ちぇっ、そこまで言ってないだろ。
部屋の中で跪いていた四人の官人は耳が聞こえない者ではなかった。衛斂うぇいれんは彼が国に災いして民を苦しめる悪魔として秦の臣民に軽蔑され罵られる光景が既に目に見えるようだった。
衛斂うぇいれんは目を伏せて笑う:「その通りです。」
姫越じーゆえは長い指で彼の顎を持ち上げ、口づけをするかのように体を傾けた。
跪いている四人の官人はびくびく怯え、頭を更に深く下げ、そちらの方を決して見ないようにした。
陛下はうぇい侍君を本当に寵愛している……彼らは皆申し合わせたように同じことを思った。
ただ衛斂うぇいれん姫越じーゆえが彼の唇の辺りでごく小さな声で賞賛する声を聴いた:「演技が上手いな。」
衛斂うぇいれんは口づけをされた後呼吸が乱れているかのように喘いで見せ、懇願した:「陛下……し、臣は息ができません。」
衛斂うぇいれんときたら顔の美しさは世界一、演技も七国一だった。
彼は秦王の目の前で自分が演技している様子を見せることを気にしなかった。演技の仮面は何枚もあり、どれも本物ではない。
衛斂うぇいれんはこのように、慎み深く謙虚であるように装っていても腹の中は傲慢で太々しいことを隠さなかった。ずっと隠し通すことも不可能ではなかったが、やりたくなかった。
適切に偽装することは平安な暮らしに役立つが、あまりに窮屈だと苦しむのは自分だ。
衛斂うぇいれんは苦しい思いはしたくなかった。
姫越じーゆえがくすくす笑った。笑う声は耳にとても心地よい。
彼は小さな声で言った:「衛郎うぇいらん、お前の面の皮をはぎ取ってみたいものだ。お前の中身がどんなものか見てみよう。」
衛斂うぇいれんは落ち着き払って答える:「生きのびたいだけの弱虫ですよ。」
姫越じーゆえは眉を跳ね上げ、跪いている四人の宦官に命じた:「全員下がれ。」
官人慌てて同意した。
退出しようとして扉を閉める間際、うぇい侍君が衣を脱ぐのを待ちきれず陛下が机の上に押し倒すのが扉の隙間から見えた。
陛下は御書房でうぇい侍君を寵愛するつもりなのか?
最後に扉を閉めた官女は顔が赤くなり、扉をしっかりと閉めた。

扉が閉まるとすぐに、姫越じーゆえ衛斂うぇいれんから体を離した。
衛斂うぇいれんはゆっくりと外衣の合わせ目を直し、更に撒き散らされた筆、墨、紙、硯を一つ一つ机の上に綺麗に並べ直した。
姫越じーゆえはじっくりと彼を見つめた。
衛斂うぇいれんが床に落ちた絵巻物を拾い始めた時、姫越じーゆえは言った:「衛郎うぇいらんは気骨があるんだな。」
衛斂うぇいれんは巻物を拾う動作を止めた。
「彼らは皆私を恐れる。」姫越じーゆえはゆっくり言った。「だがお前は恐れていない。」
どれだけそのふりをしていても、青年が本当は畏怖など感じていないことが分かった。
他のどんな人間とも違う。
衛斂うぇいれんは顔を上げて、何も言わずに彼を見つめた。
床に半分跪いたまま、微かに頭を上げた。蝋燭の明かりが瞬く中、瞳は深い淵のように静かで、また泉のように澄み切っていて人の心を揺さぶる。
長い間を置いて、彼は言った:「陛下、君主は人に畏怖を生じさせますが、夫であれば話は別です。」
彼が真面目な顔で出鱈目な話をしていることを姫越じーゆえは分かっていた。
だが心の中に名前のない感情が沸き起こり、その話が出鱈目であるにも拘らずとても気分が良くなった。
公子れん衛斂うぇいれん
彼は本当にとても興味深い人物だ。

今日は対応しなければならない政務が多くはなかったので、御書房を出た後は沐浴して就寝するだけだ。
湯泉宮には複数の湯池がある。衛斂うぇいれんは人と一緒に入浴するのが好きではないが、姫越じーゆえもまた同じだった。
彼らは心の壁が分厚い。どうして率直になれるだろうか。
秦王のように用心深い男は沐浴の際、傍に従者を仕えさせない。なので湯泉宮の中には姫越じーゆえ衛斂うぇいれんの二人きりだった。
衛斂うぇいれんは目くばせをして言った:「臣はあちら側に行きます。」
湯泉宮の中の湯池は数多かったので、衛斂うぇいれんはわざと最も遠い場所へ回った。数枚の屏風に隔てられ、秦王の辺りの動きは何も見えず聞こえない。
秦王は人が傍にいることを喜ばないので、彼もそれを否定しなかった。
衛斂うぇいれんは秦王を待たせることは出来なかったので、出来るだけ急いで入浴した。彼が戻ってくると、姫越じーゆえもまた沐浴を終えていた。彼は丁度湯から上がって中衣を着ている所だった。黒髪が散らばり、顔にまだついていた水滴が襟足に滑り落ち、気だるげで艶やか、そして徒っぽく見えた。
それを見た衛斂うぇいれんは、秦王自身も「男色は国に災いする」という言葉に値すると思った。
姫越じーゆえは顔を上げた:「ここへ。」
衛斂うぇいれんはそれを聞いて傍へ行った。
「もう少し待っていよう。」
衛斂うぇいれんは頷いて、何を待つのかは聞かなかった。
言わずともはっきり分かっていた──風呂で致すとしたら、やはりもうしばらく時間が必要になるだろう。
衛斂うぇいれんは頭を下げて時間を計っていたが、もうそろそろかと思った頃、姫越じーゆえが突然彼を横抱きにして耳元で小さく言った:「どう演じればいいか分かるか?」
衛斂うぇいれんは湯の熱気で耳の根元を赤くしながら、秦王の首に腕を掛け、胸に顔を埋めて静かに言った:「分かっています。」
湯泉宮の扉が開くと、外に控えていた宮人はこのような光景を目にした。
彼らの王はか弱い青年を抱いて穏やかな表情で前を見ていた。
青年は王の胸に顔を埋めていてはっきりと顔は見えないが、首から耳にかけうっすらと赤くなっていた。
勿論何も明らかにはされていないが、その光景は艶やかで麗しく見る者の想像力を掻き立てた。
陛下はこれほど長くうぇい侍君と中にいたばかり……
その様子では鴛鴦夫婦の入浴はおそらく非常に煽情的だったようで、うぇい侍君はその為に動けなくなり、陛下に抱き上げてもらう必要があったように見えた。
その中の一人の官女は更に顔を赤らめた。
彼女は珠玉じゅーゆーといい、つい先に御書房で最後に扉を閉めたのも彼女だ。
陛下は御書房であのようにうぇい侍君を寵愛され、今また浴場で寵愛された……
とても刺激的なので、彼女はこの情報を宮内の姉妹たちに伝えなくてはならない!


腐女子登場

宮女たちは皆さん「珠〇」という名前なのですが、王宮に上がった時に名前を付けられるんでしょうね。王宮のように沢山人が居ると珠シリーズだけでは名前が被りそうな気がします。

分からなかった所

眼角薄薄的褶上挑:目の端の薄い皺を上げるってどういう状態?日本語だと笑う時は目じりが下がりますね。

好大一口锅:「背(黑)锅」で濡れ衣を着せる、みたいな意味なので、この鍋も濡れ衣の意味なのかな?と思いましたが、よく分からず。

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