腰が抜けた話
腰抜けて動けなくなったことが一度だけあるのでそのことをブログに残そうと思います。
舞台は高校3年の夏休み。
友達と思いつきで山登りをすることになる。
俺は池田方面の山中にある高校に通っていて、その高校近くの山を登ることにした。
山登りといっても登山道を歩くものではなく、茂みをかき分けて道なき道を登るもので装備も普段着、スニーカーでリュックに飲み物とタオルぐらいしか持ってきていなかった。
今思えばかなり無謀な気がする。
朝9時ぐらい?
友達と待ち合わせてさっそく茂みに入っていく。
茂みをかき分けて20分くらい経った頃ぐらいに森に入った。
周りは完全に木と茂み。
でも、まだ下へ下ればすぐに車道に出れるレベルで車の走る音がかすかに聞こえていた。
あと真夏でもすごく涼しかったような。
上へ登っていったらどこに着くのかワクワクしながら薄暗い森をひたすら進んだ。
かすかに聞こえていた車の音もいよいよ聞こえなくなってくる。
目隠ししてその場でぐるぐる回って目隠し外したら方角わからなくなるぐらいにはもうしっかり森のど真ん中にいた。
山登り初めて多分2.3時間は経ってたと思う。
初めはしゃべりながら登ってたもののこのくらい経ってくるとお互いほぼ無言。
息も切れてくるし。
車の音もとっくに聞こえないので二人分の足音と荒い息づかいだけしか音がない。
それぐらいの静けさになると、物音に敏感になるのか俺らの他に足音が微かに聞こえるのに気づく。
音は前から聞こえる。しかもそこそこ近い。動物じゃなくて、人が何かに気づかれないように息を殺して歩いてる感じ。
前を歩いてた友達も同時にそれに気づいたようでふたりとも立ち止まってしまう。
5分ほど様子を伺ってるとなんと前の茂みから猟銃を持ったおじさんが出てきた。
まず体が動かない。
口が一気に乾く。言葉が出せない。下半身の力が抜ける。そのせいでキャッサバ漏らすかと思った。
薄暗い森の中。猟銃を持ったおじさん。
映画でよく丸腰のヤツが相手の銃器奪うシーンあるけど、絶対無理です。
怖いとか命の危険を感じる余裕がない。
無。時間が止まったような感じ。
これが腰が抜けるってやつか。
でも、おじさんも俺らみてびっくりしたのか、一言。
「こんなところで何してんの?」
完全に漫画。
一気に緊張が溶けて山登りしてること話すと、
「今、猪狩りしてて猟犬も放ってるからこのあたりは危ないよ。戻りなさい。」
完全に漫画。
おじさん曰く、おじさん一人だけじゃなくて数人仲間の猟師が山に入ってるらしい。
おじさんと話したあと、速攻下山。
生きた心地がしなかった。
誤射されることはないと思うけど。っていう下山する前のおじさんの一言が一番怖かった。
思い返すと発砲音とか全く聞こえてた覚えがない。
そんなにバカスカ撃たないもんなんかな。
おわり。
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