異世界転生したトロオドン

目が覚めると、朝やった。
朝といっても12時やけども。

腹減ったな。
そう思って、いつものように寝室のドアを開けたときやった。

なんやこれ?

目の前には見たことがない景色が広がっとった。

ボロボロになった廃墟のビル、あちこちで上がる黒い煙り、地平線の奥で不規則に光るイナズマのようなもの。

咳き込むような異臭がしたと思ったら、近くで銃声が飛び交ってきたんや。

間違いない。
わいはそう思った。

これは異世界転生モノや。


わいはBF4の世界に紛れ込んでしもたんや。

さすがにゲームと同じというわけにはいかんと思い、自分の部屋に戻ろうと振り返ったときやった。

背中にドンという衝撃が走ったかと思うと、わいの頭は何があったのか必死に考えとった。

「撃たれた」

そう確信したと同時に、猛烈な痛みが襲ってきたんや。

脇腹のあたりに血が滲んどった。
貫通してしもたと思った瞬間、わいの意識は急速に遠のいていったんや。


「目覚めましたか?」

目が覚めた。
目の前には可愛い女の子がおった。

それしか、分からんかった。
必死になにがあったか思い出していく。

脇腹の痛みから芋づる式に記憶が蘇る。

せや、異世界転生モノや。

女の子の名前はトロ子と言った。

異世界転生モノやから、可愛いヒロインがいて当然や。

トロ子は、軍人だった父親の仇をとるために戦場に紛れ込んでいるそうや。

「パパのことを思い出したら、放っておけなくて」

わいを助けてくれた理由や。

異世界転生モノやから、当然わいが仇討ちに協力することになった。

まぁ、本当は家に帰りたいけど、トロ子とワンチャンあるかもしれんやんか。

それに、大好きなBF4の世界も見て回りたいし、トロ子とワンチャンあるかもしれん。

なにより、助けてもらった恩があるし、トロ子とワンチャンあるかもしれん。

人情に厚いわいは、早速武装してトロ子の仇討ちのため、戦場に向かったんや。


「やるな、トロオドン」

今、ワイの目の前にはトロ子の父親の仇、エビパン先生と呼ばれる男がおる。

エビパン先生の銃口は真っ直ぐにわいの方向に向いとった。

同じく、わいの銃口もエビパン先生に向いとった。

緊張が走った。

先に口を開いたのは、わいやった。

「なんで、トロ子の父親を殺したんや!?なんでや!?…なんでや…」

「ふっ…冥土の土産に聞かせてや…」

隙あり。
わいは引き金を引いた。

弾はエビパン先生の急所を見事に貫通した。

「…話しの途中だろ!…ひ、卑怯者…」

なんとでも言え。
勝てばええんや。

トロ子の父親のことなんて、どーでもええ。
トロ子とワンチャンあればええんや。

エビパン先生は倒れた。
勝った!勝ったで!

「トロオドンさん!」

トロ子が駆け寄ってくる。

抱きついてくるトロ子。

トロ子の涙を拭う。

トロ子と目が合う。

トロ子の唇にわいの唇を重ね…ようとしたときやった。

眩しい光に包まれたかと思うと、わいは見覚えのある部屋にいた。

わいの部屋やった。

そして、そこにトロ子の姿はなかった。

異世界転生は終わりや。

「しょーもなっ!」

過去最大ボリュームの「しょうもな」が、近所に響き渡った。


数ヶ月後、わいは久しぶりにBF4を起動した。

メールが一通届いとった。

なんと、トロ子からやった。

長々とお礼を述べる文章と添付画像が付いとった。

ファイルを開くと、トロ子とエビパン先生、そして小さな男の子が真ん中に写っとった。

「私達、結婚しました」

メールの最後にそう書いてあった。

わいは思わず呟いた。

「ちゃんとトドメを刺しとくんやったわ。しゃーもな…」

脇腹の古傷がしくしくと痛んだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?