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香月康男 「ひなげし」

絵の好きな人にとって香月と云えば【シベリアシリーズ】と云う事になるでしょう…

香月自身が「満州出征、シベリア抑留という(過酷な)体験がなければ自分の人生は単調なものになっていただろう」という意味の事を云われています。

香月は類い稀なハイセンスな画家、そのセンスだけでも人を充分感服させられる絵が描ける人。更にわずかな線だけで画面全体に、意図する空気感を表出できてしまうテクニックをも持ち合わせた人。

さて本画ですが、55年にまだシベリア抑留の傷がいえぬままの香月がキッチンの画家と言われていた名残がのこるものです。

わずかに四角く描かれた≪ひなげしの花≫、極寒のシベリアで次々と戦友の死を看取って行った画家がどんな気持ちで描いたのか…知る由もありませんが、我々はただこの絵を純粋に(微かな痛みを感じながら…)楽しんでもいいのではないか、と思います。 二重額装となっており、内側の額の金彩が当時の光を放っています。

◆ 板に油彩

画サイズ:横15.3cm、縦 9.5cm。

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