愛する妻へ(大事なお金のお話)

愛する妻へ

現金、円を保持しているリスクについて、結局手遅れになるまで何度も何度も何度も何度も君に説明したけど理解して貰えなかった。
昨年10月に始めた株の利益が10%近くになって、君は嬉しそうにしている。
だけど、それは、君が資産を理解していない証拠だ。
こんなひどい状況はないのに。
僕らの資産割合は12(自宅):7(現金):1(株)だ。現在、土地価格は停滞している。そして現金は全て君の持ち物だ。

株価は昨年2020年の3月にコロナで暴落してから、急速に回復し、2021年2月15日現在、日経平均3万円を突破。
昨年10月、君に強く株の購入を勧めた時の日経平均が2万4千円台。
3か月と少しで25%も上がってしまった。
そもそもコロナで暴落した際に、君は現金にこだわっており購入することがなかった。
10月には日経平均が暴落した3月の1.5倍になっており、買い遅れ感が強く、多額の購入には踏み切れず、再度の暴落が来る事を祈りながら日々上昇していく株価を見守っていた。

そして遂に今日、3万円台。絶望的だ。

君は儲けが出たと喜んでいるが、これはまったく資産を理解していない証拠だ。
株が上がった分、現金と不動産の価値は相対的に下がっているという事が理解できていない。去年の急速なインフレ推移の中、僕は落下していく様な絶望と恐怖に苛まれていたというのに。

僕達は総資産の5%しか株を持たず、しかもその株も高値買いしている。
国内のマネーサプライの増加と、他国もマネーサプライの増加がインフレを下支えするという読みを持ちつつも、奇跡的な暴落を待ったが、やはりダメだった。

去年は、僕は現金を持っていなかった。信用買いをしてでも攻めるべきであったが、家族の存在があり、リスクを取ることに二の足を踏んだ。

いままで積んできたものが水の泡だ。そしてこれから積む事は至難になる。
給与が同額貰えたとしてもインフレが続く限り、その資産価値は低くなり続けるからだ。

一番の恐怖は株と物価のインフレが順調に継続し、円安が進行する事だ。
そうなったら救いが無い。でもそうなる可能性は限りなく高い。今回のインフレは現金の価値が下がる事によって引き起こされている。お金が市場にジャブジャブ回っているのだ。通常ならこんな事をすれば円安が制御不能になるが、現在は他国もコロナの影響で市場にお金を流しており、均衡が保ててしまっている。こうなればインフレが継続する公算が高い。

わかっている。とはいえ、ここまで上がってしまえば、大きく資金を株に転換するのはリスクが高い。手が出ない。

インフレに合わせて給与も上昇するのが、正しい好景気だが、日本の現状でこれは起こらないと予測できる。なぜなら、搾取を止める存在が失われているからだ。

20世紀において、共産主義と資本主義は、車輪の両輪の様な物だった。そして共産主義の幻想が消えた今、資本主義もまた限界を迎えようとしている。
アメリカの分断がそれをよく表している。しかしそこには共産主義のような理想主義では無く、差別やレイシズム、反グローバル、反リベラルとして現れている。
日本はまた違った形で問題が起きている。少子化だ。労働者の時間と金を搾取しすぎ、教育や保育等の未来投資を怠った結果、この国ではこどもが生まれず育たない。国の自殺とも言える状況になっている。片輪を失った資本主義の成れの果て。エコノミックアニマルという呼び名に相応しい終末だ。

マルクスの提唱した共産社会が失敗作であることは20世紀の歴史を見れば明白である。マルクスの資本論は、革命までが本番であって、その後の展望、社会が現実的でなかったのだ。しかし共産主義革命の恐怖が、富裕層の搾取を止め、労働者に資本と時間、文化が分け与えられた。その結果、内需と人口の拡大と共に、資本主義社会の繁栄が築きあげられてきた。

今やその歯止めは無い。アメリカでは、富裕層から財産税を取るべきという意見が、富裕層から出てきている。アメリカの分断が収まり、今後も未来に向けて繁栄する国となるとすれば、その社会システムは、理想社会を夢見る労働者層が勝ち取るものでなく、分断を重く見た富裕層の正義感や慈悲から与えられるものとなるだろう。

これは日本では起こりづらい。君は日本に生まれて幸せだと言う。今はまだそうだろう。でも20年後は?

少子化により、エッセンシャルワーカーが不足する。国民が税を払うのを渋り、エッセンシャルワーカーは現在と同じよう、若しくは今以上に不当労働と低賃金に喘ぐことになる。教育環境は今でもひどいが更に悪くなり、警察等も機能が落ちて治安も悪くなる。医療保険も現在と同じ水準を維持する事は難しく、しかし維持すれば、労働者層はその負担に酷く苦しむ事になる。例え、高等教育を受け優秀だとしても、次の時代は能力より資産の方が遥かに強くなり、冷遇されるかもしれない。

団塊の子世代である我々は、人口の割にこどもの少なく、極めて貧困な世代でもある。そんな世代が高齢者となり票を多く握る時、少子化でマイノリティとなる育児や労働を行う世代に前向きな投資を行う政治家に票を入れるだろうか?

国内の労働環境がひどくなれば、海外に出稼ぎにいくことになるかもしれない。だが、現在の様なエリート、スペシャリストが海外で働くのとは違う。普通の労働者が、だ。その時は、中国人のようなネットワークがない日本人は、今、技能実習生として日本に来て搾取されて問題になっているアジアの出稼ぎ労働者の様に、とてつもない搾取に苦しむ事になるだろう。


こんな将来に向けて僕達はどんな手を打ち、こども達を守ればよいだろう?


通帳の額面だけ見て喜んでいれば良かったのは、デフレであった8年前までだ。
君はそこから比べて、既に資産の4分の3を失っている。
そして去年の10月から現在までだけで、僕達は資産の4分の1を失っている。

もう僕にはどうすべきか分からない。今までの努力も将来の努力も泡になる。絶望で死にたくなる。こんな事なら、自宅手放しておくんだった。でも僕、この家好きだし、長男君めちゃ気に入ってくれているし、君もここにずっと住むのも悪くないかもって言ってくれているし、うーん。
君は僕と違って優秀な頭脳を天から与えられているのだから、お願いだから生かして真面目に考えておくれ。

   愛しているよ。でもいい加減にして☆ ポンコツなパパより(;´з`)

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