ひとめぼれ

ひらがなにしたから、お米のようなタイトルになってしまった。

人生で一度だけ、一目惚れをしたことがある。

当時、お母さんとよく行っていた大型ショッピングモールの食品館のお肉コーナーでお肉を切り分けている人だった。
窓ガラス越しに、私のことを見ていたらしい。

私はその切り分けている人のことを、大学の講義で初めて見かけて、
わー!わー!めっちゃかっこいい!!
と表情には1ミリも出さずに心の中で大騒ぎだった。その日からずっと頭から離れなかった。

お互い別の場所で一目惚れをしていたのだ。

時系列では、彼が先にわたしを見つけていたことになる。


大学でたまたま同じ選択科目を受講していた時、すれ違いざまにわたしは一目惚れ、彼は「お客さん!同じ大学だったんだ!」と大騒ぎだったらしい。

それから数日後、友達になりたいと言ってる奴がいるから紹介したいと大学の友人に言われ、
指定された場所へ向かった。

構内のグラウンド裏で、人気はないけどお花が咲いている明るい場所だった。

はじめまして!とひょっこり現れたのは、講義で見かけた一目惚れをした彼だった。
初めて対面した時の、あのスローモーションのような、風がざっと吹いた感じは、ずっと前のことなのに鮮明に覚えている。

両手で口を覆い、こんなことがあり得るのだろうかと目の前の出来事を疑った。

友達になってほしくて!
急にごめんなさいと言われたような記憶がある。
自分がなんと返事をしたかは全く覚えてないけれど。
連絡先を交換し、今からバイトだからあとでメールするねと約束して、その日のローソンのバイトは早く終わって欲しくてたまらなかった。

その日の夜、初メールが届いた。

今日は来てくれてありがとう!変な人だと思っていたら怖いけど、これからよろしくね!

という爽やかな文面だった。

15年前くらいの出来事なのに、メールの文面を覚えているのは、「保護メール」という当時の機能を利用して、受信件数が最大まで到達しても消えないようにして、何度だって読み返したからだ。


お互い一目惚れだったということを知るのは、もう少しあとの話。

そんな、初めての一目惚れの話。

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