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SCPにおける顕性物語・潜性物語の構造について

恐怖コン、やってますね。こういうコンテストの時って初動は「コンテスト、勝つさ」みたいな感じで書き始めるんですが、毎回途中で「ああもう無理だ...」になるんですよね。皆さんも同じ悩みをかかえているのでしょうか?

前置きは手短に、今回はSCP記事において興味深い構造を発見したので、それをまとめてみたいと思います。それが、顕性物語・潜性物語と個人的に呼んでいるモノです。


アイデアとストーリー

まず前提の話をしましょう。SCPには「アイデア」と「ストーリー」として一般に共有されている2つの構造があります。あくまで一般論としての話、アイデアは異常性、ストーリーはその異常性から展開される物語、としてのイメージがあると思います。ここで1つの疑問を呈してみましょう。

「短い記事には、ストーリーがあるのか?」

短い記事は多くの場合、説明部のみで完結するものが多いです。そこで先程の前提を基に考察するなら、アイデアが異常性の説明なら、異常性の説明のみで成り立つ短い記事はアイデアのみで成り立っているのではないでしょうか?つまり、短い記事にはストーリーがないっ!

...だと思っていたのですが、どうやら話はそう単純ではない事に最近気付いたのです。そう、この考察は間違いです。実は短い記事ほど、ストーリーが存在しているのです。では、一見して論理に従っているように見えるこの考察のどこが間違いだったのでしょうか?

2つあります。1つは、この前提そのものです。一般論としてしばしば共有されているアイデアとストーリーを「分離した」考えそれ自体、SCPの特性を表すには不適格なのかもしれません。アイデアとストーリーは相互に作用する、不可分な関係にあります。特に短い記事では、アイデアとストーリーとして知られている2つの要素が融合的に存在しており、どちらが欠けても成立しない状態を形成している事があります。

もう1つは、短い記事が異常性の説明のみで成り立っているという前提です。これは明確な間違いであり、短い記事にはほぼ組織か個人の動きが入ります。これがストーリーと呼ばれるものです。ストーリーとは、

①ある属性を持つ初期状態
②その属性に変化を与える要素の描写
③その変化の帰結として新たな属性を持つ状態

の3段階によって最低限が成り立つものです(これは、高田明典氏の論文「物語の訴求構造分析の理論と手法及び応用事例」から抜粋し、SCPナイズしています)。

それを基に考えると、アイデア(異常性)は①に該当すると思います。
異常性という属性を持つ初期状態(①)から、個人・組織などその属性に変化を与える要素が描写され(②)、その帰結として異常性そのものが変化するか、異常性に基づいて個人・組織が変化して新たな属性を持つ状態(③)となります。

では、これに基づいて最近の短いSCPをいくつか分析してみましょう。

物語モデルへの適用

1・SCP-6208「彼女の名はアムネジア」

①初期状態: SCP-6208は財団サイトに"非現実部門"所有のオフィスが出現する現象である。この部門に属する職員は、ジョン・ドゥ管理官以外に発見されていない。
②変化を与える要素: ウィリアムズ研究員。氏は他の内部職員を探すため、SCP-6208実例に入場する。
③帰結状態: ジョン・ドゥ管理官が異常な手段でウィリアムズ研究員を非現実部門に異動させる(非現実化させる)。

このように、この物語モデルはSCPに当てはめることが...おっと、結論付けるにはまだ早いですね。他のSCPにも当てはめていきましょう!

2・SCP-6287「小さな町での暮らし方」

①初期状態: SCP-6287は小さな町で町民720人が消失した現象である。
②変化を与える要素: Agt.パット。氏は調査のために町を訪れる。
③帰結状態: パットは破砕音を聞き、その意味を理解して半狂乱に陥る。実はSCP-6287は消失現象ではなく、町が5cm大に縮小された現象である事が明かされる。

これは少し特殊です。というのも、最終的な帰結状態は、この後パットにカウンセラーが紹介されるシーンだからです。とはいえあくまでこの物語モデルがストーリーの「最小単位」であるという事に基づくなら、これは別におかしい事ではありません。つまり、SCP-6287は最小単位よりも少し多い構造になっているという事です。

3・SCP-6336「自分が瞬くのが見える」

①初期状態: SCP-6336はコルロイ研究員の動きとわずかに同期していない鏡面の反射像である。
②変化を与える要素: 軍服を着た人物。彼はコルロイの反射像を拘束した後、鏡から見える観測外へ2週間連れ出す。
③帰結状態: コルロイの反射像は戻ってくる。頭にガーゼが巻かれているが、反射像は完全に同期している。

これはモデルへの適用例として理想的だと思います。「①わずかに同期していない反射像」が、「②2週間の消失」を経て「③同期した反射像」になるというのは、初期状態が変化を与える要素によって帰結状態へと持っていかれるというのを表すのにわかりやすいのではないでしょうか?

とはいえ、おや...?何かおかしい気がしませんか?これは確かに書かれている事をそのままモデルに適用した感じですが、ここに書かれていない潜在的なストーリーの存在については特に反映している訳ではありませんよね。では、その潜在的なストーリーはどこへ行ったのでしょう?

次へ行きましょう。

4・SCP-4465「人間は一人では生きていけない。」

①初期状態: SCP-4465は今度実験予定の性質不明なグロック17拳銃である。
②変化を与える要素: 発見状況。SCP-4465は手首からの失血で死亡したアーノルドの自宅から発見された。彼の知り合いの多くは口蓋から後頭部にかけて同一の銃創を受けており、弾丸はSCP-4465からのものと一致した。
③帰結状態: 実験は中止された。

...どういう事でしょうか?初期状態は「変化を与える要素」を媒体として帰結状態に帰着するはずなのに、ここでの帰結状態は「実験は中止された」、ただそれだけです。これでは確かに文脈は接続されているけど、まるで物語がどうなっているか分からない。SCP-4465はこの物語モデルに当てはまっているようには見えません!博士...これはいったい!?

(閑話休題。博士はベーグルを食べる。)

はい。お分かりの通り、SCP-4465を物語モデルに該当させようとすると、どうしても齟齬が生じてしまいます。書いてあることだけをこの物語モデルに該当させようとすると、文脈が適切に接続されなくないます。だからといって、「じゃあこの物語モデルはSCPには適用できないんだ」と結論付けるには、まだ早いです。

最後の1つへ行きましょう。

4・SCP-6470「遍在」

①初期状態: SCP-6470は発声機能を失わせる財団開発の薬剤、パガニーニ経口薬である。
②変化を与える要素: "沈黙時代の一般規定"。SCP財団が一般社会に求める事柄について記入されている。
③帰結状態: なし

おやおや。書いてあることだけを物語モデルに適用しようとしたら、帰結状態が無い状態になってしまいました。これではモデルがSCPには正しく適用できないことに...

...はならないんですよね。私が先程から「書いてあることだけを」と強調している事にお気付きでしょうか?そう、記事内に書いてあることだけを用いて物語モデルに適用するとどこかで失敗が生じる危険性があるのです。そしてそれは逆に言えば、「記事内に書かれていないこと」を言語化すれば、それを物語モデルに当てはめる事ができるという事になります。

それを説明するための要素が最初に言った「顕性物語・潜性物語」です。それについてこれから解説していきましょう。

顕性物語・潜性物語

さて。顕性・潜性という言葉は元々遺伝現象を説明するための単語ですが、ここでは物語のうち、表面上に顕わになっているものを顕性物語、表面上に顕わになっていないものを潜性物語と呼ぶことにしましょう。

先程私がモデルに適用した物語は、顕性物語です。つまり、書かれていることのみを当てはめたという感じですね。ですが後半3つは顕性物語のみでは説明できない、「見えない文脈(コンテクスト)」があり、それが抜け落ちているためモデルに適切に当てはめることができないという事になります。

高文脈・低文脈

ここで補足しておきましょう。文脈、および高文脈(ハイコンテクスト)・低文脈(ローコンテクスト)とは何か?という点についてです。コンテクストとは、その背景にある状況や文脈、前後関係、繋がりのことを意味します。

例えば、会話の際に友人が「もう無理だよ!」と言った時、私達はその言葉単体では何に対して無理だと言ったのか分かりませんが、その前後の文脈を通して考える事でどういう意味なのかを理解できます。例えば豪華な食事を食べているという状況なら「もう食べきれない」という意味でしょうし、論文を書いているという状況なら「論文が進まない」という意味になるでしょう。これがコンテクストというものになります。

では、高文脈・低文脈とは?これは、会話などの状況がどれだけ背景情報や前後・繋がりに依存しているかを表す指標です。シンプルで複雑ではない文脈に基づいて行われるコミュニケーションは低文脈であり、逆に分かる人だけが分かる共通概念をベースにしたコミュニケーションは高文脈です。

例えば、極端な喩えですが、「スマホの充電は満タンですか?」と聞くために「スマホの充電は満タン?」と聞くならそれは低文脈であり、「あれ大丈夫?」と聞くならそれは高文脈です。分かりやすく言うなら、その言葉のみで理解できるなら低文脈、理解するのにその言葉に加え背景情報やボディランゲージが必要なら高文脈となります。しばしば日本文化や日本の会話は高文脈であると言われています。

それではこれをSCPに当てはめていきましょう。SCPはそもそも高文脈ですね。SCPを読むのに最低限必要な背景情報として「この世界には科学を超越した事物があって、それを財団という組織が一般社会から遠ざけるために収容していて、これはその財団がそれらの事物についてまとめた文書であるという体裁の上で書かれた物語」というのを理解しないといけない...と考えるとちょっと高文脈です(念のため述べておくと、低文脈・高文脈はカルチャーであって、どっちが良い悪いというものではありません)。

では更に、今度は短いSCP記事に当てはめていきましょう。短い記事は、物語が圧縮されるという特性を持つ以上、高文脈になりやすいです。会話に喩えると分かりやすいでしょうか。「あれどこに行った?」という高文脈の会話は、「さっきまで読んでいた三国志の本はどこに行った?」と低文脈の会話に言い換えることができます。こう見ると、高文脈だと省略されて短くなり、低文脈だと省略されないため長くなる、という傾向を見ることができます。逆説的に言えば、短い記事は高文脈になりやすい、と言えます。

高文脈であるという事は、そのぶん長大な背景情報、前後、繋がり...そして「物語」があるという事になります。この高文脈性によって発生する潜在的なストーリーが、「潜性物語」です。つまり短い記事には顕性物語があると同時に潜性物語が存在していて、その2つが融合している事で濃密で重厚感のあるストーリーが形成されている、という事です。

難しい話ですね。ここまでの話をまとめてみましょう。

小まとめ

①顕性物語・潜性物語
― 顕性物語: 表面上に明示されているストーリー
― 潜性物語: 背景にある隠れたストーリー

②コンテクスト
― 文脈: 背景情報、状況、前後関係などの事
― 高文脈: 文脈に大きく依存するコミュニケーション
― 低文脈: 明示的で直接的なコミュニケーション

③SCPとコンテクスト
― 高文脈なコミュニケーションは文脈を省略するため、短くなりやすい
― 転じて、短いSCPは文脈が省略されている
― 省略された文脈それ自体が「隠れた物語」を内包する
― その隠れた物語が「潜性物語」である

要するに、潜性物語とは、文としては書かれていない隠されたストーリーであり、記事を理解するための要素です。潜性物語は、主に記事の「深み」を演出するのに重要な役割を果たします。

では次に、先程は顕性物語のみで適用した物語モデルに潜性物語を加えて再度分析してみたいと思います。

物語モデルへの適用:Ⅱ

さて、SCP-6208、SCP-6287は顕性物語のみでの分析が可能でしたが、SCP-6336以降はそれでは不十分でした。ですので、その分析を再度行う事としましょう。

1・SCP-6336「自分が瞬くのが見える」

1-1. 顕性物語のみで物語モデルに適用した場合(さっきと同じ)
①初期状態: SCP-6336はコルロイ研究員の動きとわずかに同期していない鏡面の反射像である。
②変化を与える要素: 軍服を着た人物。彼はコルロイの反射像を拘束した後、鏡から見える観測外へ連れ出す。
③帰結状態: コルロイの反射像は2週間後に戻ってくる。頭にガーゼが巻かれているが、反射像は完全に同期している。

これだけでも物語としては充分成立していますが、「軍服を着た人物」は明示されていないながらも「何か」をしている訳で、そこも物語であるという事です。それを適用してみましょう。

1-2. 潜性物語を物語モデルに適用した場合
①初期状態: 軍服を着た人物は、コルロイの反射像を監視している。
②変化を与える要素: 拉致。彼はコルロイの反射像を拉致し、頭に"何か(恐らくロボトミー的なやつ)"をする事でコルロイを「正確に反射像として振舞えるように」する。
③帰結状態: 彼はコルロイを元の場所に戻す。

というように、記事には明示されていない物語を適用する事で、顕性物語のモデル、潜性物語のモデルの2つが完成しました。この2つを組み合わせる事で、物語の全体像が構築されます。以下にその物語を示しましょう。

1-3. 顕性物語・潜性物語を組み合わせたモデル
①初期状態: SCP-6336は本人とわずかに同期していないコルロイの反射像である。軍服を着た人物がこれを監視している。
②変化を与える要素: 拉致。軍服を着た人物はコルロイの反射像を拘束して鏡の外へ連れ出し、ロボトミー的な何かをする事で「正しく反射像として振舞えるように」する。
③帰結状態: コルロイの反射像が元の場所に帰ってくる。反射像は完璧にコルロイと同期している。

これで、物語の全体像がつかめると思います。顕性物語のモデルで充分ではありましたが、潜性物語も合わさると、何が起こったのかがより理解しやすくなるでしょう。

この調子で残りの2つも見ていきましょう!

2・SCP-4465「人間は一人では生きていけない。」

2-1. 顕性物語のみで物語モデルに適用した場合
①初期状態: SCP-4465は今度実験予定の性質不明なグロック17拳銃である。
②変化を与える要素: 発見状況。SCP-4465は手首からの失血で死亡したアーノルドの自宅から発見された。彼の知り合いの多くは口蓋から後頭部にかけて同一の銃創を受けており、弾丸はSCP-4465からのものと一致した。
③帰結状態: 倫理的懸念から実験は中止された。

このモデルでは、②と③の間に明らかに隠された文脈が存在している事が分かると思います。では、その隠された文脈に目を向けて、モデルに適用してみましょう。

2-2. 潜性物語を物語モデルに適用した場合
①初期状態: アーノルドは生活している。
②変化を与える要素: SCP-4465。アーノルドはSCP-4465を用いて自殺しようとし、それが原因で知り合いらが頭を貫かれて死亡した、という状況が分かった状態で財団に発見される。
③帰結状態: 財団は、SCP-4465の真の性質が「愛する人を殺害する銃」である事を状況から突き止め、結果として倫理的懸念から実験を中止する判断をした。

では、この2つのモデルを合体。なお、より物語の流れを分かりやすくするため、以下では3段階という最小単位ではなく、SCP用に5段階に独自拡張したモデルを用いて説明します。

2-3. 顕性物語・潜性物語を組み合わせたモデル
①初期状態: アーノルドは生活している。
②変化を与える要素: SCP-4465。アーノルドはSCP-4465を用いて自殺しようとする。
③変化要素による事象発生: アーノルドの知人たちが突然死する。死因が同一の銃創である事を発見する。
④発生結果: アーノルドはSCP-4465の性質を理解し、自殺方法を失血に変える。アーノルドの知人の不可解な死と失血死という状況のみが分かった状態で財団に発見される。財団は実験を予定する。
③帰結状態: 財団は発見状況からSCP-4465の真の性質である「愛する人を撃ち抜く」特性を看破し、実験を中止する判断をした。

ざっと、このように出来ます。これは潜性物語が明確に記事の謎を解き明かすための因子となっているパターンとして特筆に値するでしょう。

3・SCP-6470「遍在」

3-1. 顕性物語のみで物語モデルに適用した場合
①初期状態: SCP-6470は発声機能を失わせる財団開発の薬剤、パガニーニ経口薬である。
②変化を与える要素: "沈黙時代の一般規定"。SCP財団が一般社会に求める事柄について記入されている。
③帰結状態: なし

このパターンでは、一見して帰結状態が無いように見える、という点で物語モデルへの適用に齟齬が生じていました。これも、潜性物語に着目してみましょう。

3-2. 潜性物語を物語モデルに適用した場合
①初期状態: 世界が問題なく存在している。
②変化を与える要素: 謎のアノマリー。このアノマリーは瞬く間に世界中に広がり、財団はこのアノマリーから人間を守るためヴェールの解放とパガニーニ経口薬の配布を行う。
③帰結状態: 財団は、誤伝達部門と協力し、危険な謎のアノマリーから命を守るためのマニュアルについて記した規定を流布する。

これをさっきと同じように合体。

3-3. 顕性物語・潜性物語を組み合わせたモデル
①初期状態: 世界は問題なく存在している。
②変化を与える要素: 謎のアノマリー。このアノマリーは瞬く間に世界中に広がる。
③変化要素による事象発生: 財団はこのアノマリーから人間を守るためヴェールの解放とパガニーニ経口薬を配布する事になる。
④発生結果: 財団は誤伝達部門と協力し、アノマリーから命を守るためのマニュアルを流布する。
③帰結状態: 沈黙時代の到来。これをまとめたのが現版の報告書である。

と、このようにする事で、ちゃんと物語モデルに当てはめる事ができます。

まとめ

という事で、短い記事において「潜在的に存在している物語」がどのような役割を果たし、そしてどう存在しているのかについて理解していただけたでしょうか?

まぁ平たく言ってしまえば「一見して文章量の少ない短い記事の中にもこんなに多くの隠れた情報があるよ!」ってだけの事で当たり前っちゃ当たり前なんですが、そこに至るまでの過程はこれまで複雑で暗黙的な知によって成り立っていましたから、そこを言語化し、形式知化する事が今回のエッセイの目的でした。

とはいえ一応批判的な視点で見ると、どこをどう潜性物語として解釈するかは解釈者本人に委ねられているという点や、今回は少し恣意的にモデルに適合させている点(必要に応じて5段階を使っている)などが問題かなと思います。ここは今後改良の余地があるでしょう。

話を戻しますが、潜性物語は、記事に深みというベクトルを与える役目を果たし、そしてそれは読者に深く考えさせるという価値を与えます。短い記事では長い記事に劣らない重厚な文脈が求められる特性、そしてまたその文脈が明示できないという短さゆえの特性から、その文脈は非明示的な部分、つまり「目に見えない部分」へと移行していきます。その目に見えないストーリーでいかに深みを出せるか、そのストーリーでいかに読者の想像を超越できるか、情動を喚起できるか、そのあたりが重要になってくると思っています。

最初に「短い記事にストーリーはあるのか?」という疑問を投げかけました。これは明確にYESです。皆さんもストーリーを大切にしてやってください。ストーリーとはあくまで①初期状態⇒②変化を与える要素⇒③帰結状態、のシンプルな転換・動きの事です。批評でストーリーの不足が指摘されるなら、それは転換と動きの足りなさを指摘されているのであり、ただ、文脈の接続が不足しているだけなのです。この話はチェーホフの銃あたりも参考になるでしょう。

余談ですが、このエッセイで列挙したSCPは全部ENのものです。そう!このエッセイが当てはまるのは、基本的にENです。なんでこれを日本語で書いてるんでしょうね。

ならJPの方はどんな感じ?という話になってくるでしょうが、体感としては、基本的にこのエッセイと変わりません。ただストーリーのベクトルが異なると思います。ENの方はキャラクタや組織の動きという軸で進むのが多い印象で、JPの方は読者への共感性や文化との結合という軸で進むのが多い印象です。ストーリーの向かう帰結が違う、という事ですね。喚起される情動がJPとENでは異なります。あと、日本文化が高文脈であるのに対しては意外な事ですが、JPの方が記事が低文脈な印象があります。つまり、潜性物語に頼る短い記事が少なく、顕性物語のみで情動への喚起を目標とする感じです。つまり「深く考えさせずとも楽しめる」事を意図しているのでは?という感触ですね。

読者への共感性というベクトルで言えば、恐怖コンの短い記事を見れば半分くらいは当てはまると思います。まぁ、誰かが分析してくれるでしょう。ENの方は、シリーズVIIで短文主義が流行った様なので、そこら辺を参照するといいかもしれません。全体的に今は短めのSCPが流行りの印象があるので、参考例は多くあると思います。

という事で、お話は終わりです。また会いましょう。

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