生きる価値の創造
人のいる世界で生きることは、なんでこんなに息苦しいんだろうか。
日常を過ごすだけで目一杯。
ただ今日を生きるだけで精一杯。
空気を吸って、
空気を吐いて、
それすらもうまくできなくて、
眠ることも食べることも
思うようにコントロールできないまま、
時間だけが1秒ずつ過ぎていき、
昨日は今日になり、今日は明日になる。
ただただ蓄積されていくのは、
不安と焦燥と自責と恐怖。
そこに自分が生きる価値なんて微塵も見いだせないのに、
ただ生きているだけでもお金はかかる。
まるでそれは、自分が生きていることは何かの罪であるかのようで、
その罰金を支払っているような気持ちだった。
去年の今頃、
心の中はそんな風景だったことをふと思い出した。
起きたい時間に起きることもできず、
身体を動かしたいときに動かすこともできず、
一日の大半は布団の中で過ごしていた。
意識があると、とにかく疲れて不安で、
寝ている時間だけが全てを忘れられるから、
とにかく暇さえあれば寝るようにしていた。
みんなと同じように日常を過ごすことができなくて、
仕事にも行けず、家から出ることもできず、
ただひたすら生活を追いかけているだけで、
心も身体も疲労困憊。
楽しいことさえ楽しいと感じられず、
心の中は灰色だった。
産んでくれた両親には感謝しかないが、
自分に価値は感じられない。
みんなが当たり前のようにできることが、自分にはできない。
今考えてみれば、
ただそれだけのことだったはずなのに、
それは何ものよりも大きな障壁として、
自分の前に立ちはだかっていて、
未来にはただ不安しかなかった。
出会い
そんな状態のまま這いずるようにして年を越え、
2022年が始まっても心の風景はまだ灰色のままだった。
一番ひどい時よりは少しだけマシになり、
七転八倒した結果、仕事にも復帰し、
でも日々が精一杯であることには変わりなく、
生きることはなんでこんなにも苦しいんだろうと思っていた。
そうこうしているうちにも日々は『かろうじて』過ぎていき、
何とか1月は乗り切った。
だが2月に入っても特に風景が変わることはなく、
ただただ仕事に行けることを維持するためだけに、
追われるような気持ちで生活にしがみついていた。
その日も、追われている生活の只中にあった。
明日の仕事に行くために、家事をこなし、
明日の仕事に行くために、食事を済ませ、
明日の仕事に行くために、身体を休める。
そんな時、奥様が一本の動画を勧めてきた。
「これ見て! めちゃくちゃ面白いのコレ!」
それはいわきFCのYoutube動画だった。
何かの特集で見て、そういうクラブが誕生した、という情報は知っていたので、頭の中にその名前は知識として存在していたが、認知するほど深く考えたことはなかった。
元来フットボールが好きで、特にJリーグが好きで、ずっと別のチームを応援していた。そんな経緯もあって、いろんな情報を収集はしていたけれど、一線を退いてからはどこか一歩引いた目線でその世界を見ていて、客観的な見方しかしていなかったから、勧められた時点では特にピンと来るものがあったわけではなく、「あぁ、そうなんだぁ」ぐらいの気持ちだった。
その会話の後も、すぐに見たわけじゃなく、とにかく「明日の仕事のために」残りの家事を済ませた。
家事も終わり、布団に入って、やっと一息ついた。
あとは寝るだけ。
そしてまた明日の仕事がやってくる。
そんな気持ちで就寝前に携帯を開いた。
ふと、勧められた動画の存在を思い出した。
(寝る前にちょっと見てみるか・・・)
と思い、動画を再生した。
そして我が家族の人生は、ここから大きく変わることになる。
(長くなるので変わった経緯はこっちにざっくりまとめてあります)
あれから1年が経って
今日、2022シーズンの試合が終わった。
試合終了後のセレモニーを見ながら、
ふと1年前の今頃のことを思い出していた。
あの頃、灰色だった景色は、
いつの間にか色鮮やかな景色へと戻っていた。
なんでこんなに人のいる世界で生きるのは息苦しいんだろう、
そう思っていた自分は、
なんでこんなに人のいる世界で生きるのは最高なんだろう、
と感じるようになっていた。
今日を生きる意味さえわからなかった自分は、
明日もその先もずっと生きていたいと思うようになった。
楽しいはずのことさえ楽しいと思えなかった自分は、
溢れるほどの楽しさに囲まれて日々を過ごしている。
あの日、あの動画に出会わなければ、
いわきFCに出会わなければ、
こんなに美しい風景も、
そして自分の生きる価値も、
知ることもないまま過ごしていたのかと思うと、
この2022シーズンにいわきFCを通じて出会ったすべての人に、
そして、いわきFCに出会わせてくれたすべての人に、
この言葉しか、この感情しか出てこない。
ありがとう―――。
みんなの光が照らしてくれたから、
こんなにも幸せな家族の日々が、
そして生きる価値がここにあります。
今となっては『いわきFC』という言葉に
触れない日が無いほど、
我が家の風景はいわきFCに溢れ、
そこで出会ったたくさんの人々と触れ合えることが
最高に楽しくて、最高に幸せで、
温もりに引き寄せられるように、
また浜通りへと足が向かいます。
社会価値の創造って言葉の意味が広いから、
実際にできているのかどうか判別しづらいけど、
少なくとも我が家の生きる価値は、
いわきFCとそれを通じて出会ったみんなのおかげで、日々、創造されています。
こんなにも不確かで曖昧でいい加減な
『人間』という存在で作り出される社会の中で、
「またね!」
そう言い合える温もりがあることの喜びを
感じさせてくれるみんなと出会えて本当に良かったっす。
そして、まだまだ生きている価値を存分に楽しんでいきたいので、
これからも家族一同よろしくお願いします。
最後に、
一番の感謝を、
自分以上に不安を抱えた状況の中、
あの日動画を勧めてくれた奥様と
不安定なパパに不満を抱きながらも、
幼いなりに気遣ってくれた娘へ
・・・あ、あとジージとバーバも(笑)
ありがとうございます。
そして、これからも共闘。
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