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歪みのない立方体を描く

どんな立体を描くにしても、最初に歪みのない立方体を描ければ、あとはそれに平行線を描いて細分することで、(原理的には)どんな複雑な立体でも描けるはずです。(立体的な方眼紙のようなものですね)

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立方体は、より複雑な図形を描くための「方眼紙」

この記事では、すべての図形は正射図法で描きます。正射図法は、平行投影、orthographic projectionなどとも呼ばれます。超望遠レンズで撮影した写真は平行投影っぽい絵になります。この図法では、立方体は、どんな角度から見ても、平行線の集まりになります。

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立体上の平行線は、平行投影でも平行線になる

平行投影は透視図法(遠くになるほど小さく描く図法)に比べ遠近感に乏しいのですが、作図にはとても便利です。平行投影を使うと、立体の辺の中点は、それを平面に写した図の上でも中点になるので、複雑な立体図形を手で描くための出発点として非常に適しています。

さて、立方体はどうすれば歪みなく描けるでしょうか。ここからの説明には数式がいくつかでてきますが、結論だけ知りたい人は飛ばしても全く問題ありません。最終的には、方眼紙さえあれば、計算なしで、歪みのない立方体を描けるようになります。

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上の図で、頂点oに注目して下さい。この頂点と、ここからでている3本の辺の末端a, b, cが全部が方眼紙の格子点になっていれば、ほかの頂点も全部格子点の上にあります。

辺oa, ob, ocは、本当は立方体の辺OA, OB, OCを平面に射影したものです。そして、立方体であれば、OA, OB, OCの長さは等しく、かつそれらは互いに直交していなければなりません。つまり、

|OA|=|OB|=|OC|=L
OA・OB=OB・OC=OC・OA=0
OA, OB, OCベクトルのx,y座標は整数

これらを同時に満たすような格子上の点a,b,cがあるか、という問題です。スマートな解き方はわかりませんが、小さな整数の範囲であれば計算機で探索できそうなので、プログラムを書いてさがしてみました。(oを原点とします)

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下にいくほど、大きな方眼紙が必要になります。例えば、上から4行目(3,6) (-6,2) (2,-3)を選んだ場合、こんな風に作図します。

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1. oから出発して、右に3、上に6進んで、aの場所を決めます。b,cも同様です。マイナスの数字の場合には、左、下に進みます。

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2. 平行線を書きくわえればできあがり。

立方体の向きが気にいらない時は、方眼紙を回して下さい。

座標が全部整数になっているので、方眼紙があれば簡単に描けます。この方法で、厳密に歪みのない立方体を描くことができます。ここには15以下の整数で表せる組みあわせだけを示していますが、方眼紙をもっと大きくとれるなら、ほかにも無限に組みあわせがあり、原理的にはどんな角度の立方体でも描けます。

方眼紙を使うのはここまでです。この先はコンパスと定規、そしてもう一つの便利な道具を使います。

立方体は、正六面体とも呼ばれ、古代から知られている5つの正多面体(プラトン多面体)の1つです。次の節では、ほかの正多面体と立方体の関係を説明します。

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