2019 東京学芸大学 E類教育支援専攻 ソーシャルワークコース 小論文 模範解答

オープンチャット「大学入試 小論文 対策相談室」


課題文において筆者は、「異文化」について外国の文化としてのみ理解することや、日本人と外国人とに根本的な違いがあるという前提を持つことに疑義を呈している。というのも、日本人どうしでも、仲のよい家族であっても、すべてわかり合えるわけではなく、コミュニケーションには、誰が相手であっても困難がつきまとうからだ。したがって、異文化理解というのは、外国人との文化の差異を知ることのみならず、広く異質な他者との関係を模索することであると理解できる。それでは、社会福祉における「異文化理解」とはどのようなものであるだろうか。

社会福祉の対象となるべき人々のなかには、いじめに悩む子ども、暴力に苦しむ女性、貧困な生活を強いられる若者、障がい者、病気に苦しんでいる人やその家族などがいる。こうした人々と向き合い、支援を行うためには、社会福祉における「異文化理解」と呼べるものが必要になると考える。なぜなら、社会福祉を必要とする人々はそれぞれが様々な境遇や状況にあり、生まれや育ち、年齢や世代、抱える悩みや困難も異なる存在は、乗り越えがたい差異を持つ異質な他者であると考えるからだ。したがって、社会福祉における「異文化理解」を実践していくためには、自分にとっての異質な他者のあり方を一定の解釈や見方によって決めつけるのではなく、困難状況にある人々とどのように向き合い、一人の人間としていかにして「その人」を理解していく必要があると考える。

そのためには、多様な他者に出会い、「その人」をその都度理解しようとするコミュニケーションを図ることが重要だと考える。なぜなら、特定の困難や悩みを抱えている人々に対して、専門的知識や技術のみを用いて一律に社会福祉事業を行えるわけではなく、個別具体的なコミュニケーションによって人々を理解する以外に、本質的に他者を理解し、サポートする道はないと考えるからだ。したがって、「社会福祉」として特徴づけられる性質は、あくまで概括的なものでしかないことを知り、個別の人間が置かれている状況や環境において、「その人」を理解しようとする姿勢が社会福祉における「異文化理解」のための第一歩となると考える。以上より、社会福祉政策を考えたり、社会福祉事業を実践していく際にも、困難を抱える人々に対して、異質な他者として向き合い、彼らの声に真摯に耳を傾けることが重要だと考える。

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