2015 東京学芸大学 E類教育支援専攻 ソーシャルワークコース 小論文 模範解答

オープンチャット「大学入試 小論文 対策相談室」


 課題文では、大阪市教委が、授業妨害などの問題行動を繰り返す児童・生徒を学校から引き離し、1カ所に集めて指導する「特別教室」を設ける決定をしたことが述べられている。たしかに、このような問題児の分離によって、きちんと授業を受けたい子にしわよせがいく事態を解消することはできると考える。しかし、課題文では、彼らの問題行動は居場所のない自分に気付いてほしいという必死のサインではないかという懸念も示唆している。さらに、そうした児童・生徒を端的に「悪い子」として分離することが、本当に「よい子」のためになるのかという疑問も提示している。それでは、こうした状況や諸々の懸念や危惧を鑑みたときに、問題児の分離の是非ついてどのように考えるべきだろうか。

私は、問題児の分離について反対である。その理由は大きく3つある。第一に、問題児の分離が問題児の問題行動を解消することを保証しないからだ。問題児が抱える根本的な問題や問題行動を起こす原因の発見、解消をしなければ、単なる分離では児童・生徒たちにとっての本質的解決とはならないと考える。

第二に、課題文でも言われる「よい子」に対して、教育上好ましい対策だとは言えないと考えるからだ。クラスや学校における問題児は、いわゆる普通の子どもたちからすれば、異分子である。しかし、社会には多様な価値観や問題を抱えた人間がおり、そうした人々と共働しながら生きていくことが求められる。そうした現実社会において、自分とは異なる行動様式や価値観を備えた人間を、自分とは相いれないからという理由だけで端的に異分子として排除・分離する発想は、社会を維持していく上で危険な発想だと考えるからだ。

第三に、問題児を分離するのではなく、問題児に向き合う取り組みを行う工夫をするべきだと考えるからだ。たとえば、人生経験の豊富な高齢者のボランティアや、年齢が近く頼れるお兄さん、お姉さんのような大学生ボランティアにも協力を要請し、子どもたちに向き合ってもらう時間を作ることが重要だと考える。なぜなら、彼らの問題行動の原因を探る努力や取り組みが必要だと考えるからだ。

以上の理由から、問題児の分離する対応策は、問題解決のための良策とは言えないと考える。課題文でも言われているとおり、大人が力や知恵を出し合って、彼らに向き合う努力や取り組みをする方法は十分にあると考える。(980字)


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