2017 東京学芸大学 推薦入試 E類教育支援専攻 カウンセリングコース 小論文 模範解答

オープンチャット「大学入試 小論文 対策相談室」


 良好な人間関係とは、関わる人間どうしが相互にその存在やあり方を肯定し、各々が自分らしくいられる状態にある関係だと考える。なぜなら、他者に自分のあり方を規定されたり、否定されることによって抑圧的な関係に置かれることは、自分らしいあり方ができないからだ。それゆえ、良好な人間関係とは「自分に合った無理のない人との関わり」と定義できると考える。したがって、多くの友人がいるとか、いつでも誰とでも仲良くすることだけが良好な人間関係とは言えないと考える。というのも、少数の友人と深く関わることを好む人もいれば、広く浅く人と関わりたい人もいるからだ。それゆえ、様々な局面で必要な人間関係を、ストレスの少ない形で築いていくことができる関係こそが良好な人間関係だと考える。

 それでは、学校という場で良好な人間関係が築かれるためには、どうすればよいだろうか。学校における人間関係のなかでは、生徒どうしの人間関係が最も問題となるように思われる。というのも、生徒たちは対人関係上の経験も大人に比べると浅いため、「他の生徒から嫌われないために自分の本音を抑えてしまう」というような自己を抑圧せざるを得ない事態も頻繁に起こりうると考えるからだ。

 したがって、学校において生徒たちが良好な人間関係を築くための方法や力を身につけさせることが重要だと考える。そうした能力の基礎となるのは、楽しい、うれしい、怒っているなど、自分の気持ちを素直に表現できる力だと考える。というのも、自分の欲求や感情を素直に表現できることこそが、自分らしくあることの現れだと考えるからだ。特に、相手の誘いや依頼を断れることや、反対に、誰かに甘えたり、何かを頼んだりしたときに、相手から拒否されても平気でいることができるかどうかが重要だと考える。たしかに、誰しもネガティブな反応がうれしくないのは当然である。しかし、多少ネガティブなやり取りがあったとしても、根幹の部分で相手との信頼関係が崩れない人間関係こそが良好と言える関係だと考えるからだ。

 したがって、生徒たちは具体的にそうした対人関係における技術や心理的なメカニズムを学ぶ必要があるだろう。たとえば、スクールカウンセラーなどの指導も踏まえながら、生徒たちには考えや感情を素直に表出するためのワークやレクリエーションを定期的に実施したり、心理学の専門家を学校に招いて自分らしさとは何かを探求するワークショップに参加してもらうことなどが考えられる。こうした活動をとおして、生徒たちにとって望ましい人間関係のあり方を各々が見出していくプロセスを経ていくことが、学校において良好な人間関係を構築する一助となると考える。さらに、学校という場そのものが、多様な他者と自分らしい関係の構築の仕方を学ぶことができる場であることが望ましいと考える。(1163字)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?