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否定の中でうまれた愛

親子編の奏多はギリシャ神話の『Oedipus』そのものであり、バッドエンドにしたのは自己投影の結果。

たとえ一般的知識や概念がなくとも"人間本能"を理解している。敢えて定義づける場合その辺に転がった概念に値するだけの話。

作品≠作者だが私が描くものの86%は『沈黙の叫び』な気がする、無意識の内に。

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Twitterでエロ注意表記を「error」と掛けて「errow」にしようかと思ったんだけど、そもそもエロって何語なんだろう?ってなって調べてみた。

エロティシズム(eroticism)が正式名称。
リビドー(libido)は人間が本能的に持つ「性的衝動」。

リビドーにも段階があるらしく、心理学者のフロイトが「ID/Es(イド/エス)ー自我ー超自我」の三段階に分けた。

調べていく内に「エディプスコンプレックス」の言葉に出合う。
これはギリシャ神話のオイディプース王の話から取った単語。

簡単な神話の説明をすると、

男の子が実父を殺して実母と性交する話。
それを元に心理学者のフロイトが精神分析する。

男の子は母と結婚したいが父に去勢すると脅され葛藤する。
そして去勢されたくないから母でない女と結婚することで欲求を満たす。

女の子はまず陰茎がないので母と性交出来ない悲しみで母を恨む。
そして母の体を見て自分に陰茎は生えてこないと知り、陰茎への羨望を捨て子を産む行為でその欲求を満たす。


実に興味深い概念。
私はギリシャ神話も精神分析学も知らずして親子編を描いていた。
カナヲの魂を持った奏多が、しのぶの魂を持った母に惹かれる。

作品自体は分かりやすいようにキャラの顔をそのまま使っているが、本来は全く違う顔立ちと要素である。(※これは作中でも解説でも述べていない部分)

顔も形も違うけど、惹かれてしまう。

その魂に、惹かれてしまう。
その魂を、識別する。
その魂を、見つけ出す。


私自身が「そういう愛の形」が好きなのだ。

例え姿形が変わってしまおうと、あなたを愛すると決める

私は骨が好き。骨格を愛する。
故に、表面の皮膚が変わろうと、気にしない。

その存在の根っこの部分、つまり脊髄が劣化しなければ愛しいままなのだ。

極端な話をすれば、好きになった人が犯罪者になっても刑務所まで会いに行く。好きだから会いたい。話したい。顔が見たい。声が聞きたい。

罪を憎んで人を愛する…………そういう愛の形が好きなのだ。

君の全ては知らないだろう
それでも一億人から君を見つけるよ
根拠はないけど本気で思ってるんだ

『粉雪』/レミオロメン

「私はそのひとを愛していた。ずっと昔から。ほんの少ししか会えないひとなのに。いつも悲しい別れが二人を全く待ち受けていると知っていたのに」

「ええ、だから、私たちはいつも離れている。無垢なる魂の純粋な結合はあなたの望みだった。けれど、……あなたの魂は何者にも所有されることを望まない。……ほんの一瞬の逢瀬のみがその魂を輝かせる。

私は、あなたの夢になれてよかった。あなたのエドワードになれてよかった。たとえ、夢でも一瞬でも構わない。私を夢見てくれたあなたを、私は誰よりも深く愛してしまったから。」

『ライオンハート』/恩田陸(著)

深い愛が体の繋がりだけに宿されるわけではない。
深い愛が子を産む行為故に宿されるわけではない。

近親相姦。
同性愛。
異種間愛。

禁忌と云われる愛は、愛のようで「愛」ではないのか。
さて、どうだか。

私は、一般的社会の常識から外れた愛ばかり抱いてきた。

近親。
同性。
異種。

全て私の愛の物語だ。

それ故、私は物語のほとんどを幸せにしない。
結ばれる未来なんて描かない。
実る恋なんか描いてやらない。

タブー。タブーの愛しか知らない。
この世の多くの人間が経験する「恋愛」の色をほとんど経験してない。
ほんの少しの期間、異性を好きになるが、性的な感情を抱くことはない。
私が持つリビドー(本能的な性的衝動)は同性か人外または産みの母親だけだった。

よくある話で「好きになっちゃいけない相手なんて居ないんだよ」とか「誰かを好きになることは悪いことじゃない」とか聞くけどさ。

ふざけんな。
ふざけんな。

結婚できない。
結ばれない。
絶対、肉体的に結ばれることのない相手。

一回じゃない、何度も。何度も。
そういう相手しか好きになれない。
そういう相手にしか反応しない下半身。

だから、せめて自分の作品では夢を見たい?
虚しいだけだ。
そんなことしない。幸せになんかしてやらない。

どんなに深く深く愛していても、
どんなに強く強く愛していても、

叶わない。

受け入れてもらえない無用の長物。

私が生み出すものは否定されるためだけに存在している。


私の持つ価値観。
私の描く作品。
私の抱く愛情。

私を肯定するのは、私の中にある孤独だけだ。
うるさくて痛い孤独だけ。
孤独だけが私に寄り添ってくれる。

そして私の孤独を真に理解してくれる人は、胡蝶しのぶ。

私がどれほど救われたか。
私がどれほど慰められたか。

どんなに否定されようと、私は彼女を描くことを辞めない。
私は画力がない。だけど愛情を込めている。

私は泣くほど、胡蝶しのぶを愛し焦がれている。

そこに同意はいらないし共感も求めない。

私は胡蝶しのぶの素晴らしさを描きたいだけ。
作者である吾峠先生に届いてくれたら感無量。

〔2022/03/30〕

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