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岸田政権総まとめ②(経済編)

2021年10月4日に発足した岸田政権は3年間で幕を閉じました。そこで、この3年間の政策を振り返ろうと思います。
1. 総合編
2. 経済編     
3. 安全保障編   
4. 外交編     
5. 教育/こども政策編
6. デジタル編   
7. コロナ/医療編  
8. 訪日外国人対応編
9. 諸般(その他) 
10. 人事       

これら10分野に分けて紹介しています。
大雑把に振り返りたい人は「総合編」
細かい部分まで確認したい方は、それぞれお読みください。後日順次公開します。

為替

米ドル/円の推移

1ドル100〜110円台だった為替が今年7月には約162円まで値下がりして、この2年半は歴史的な円安水準でした。

主な原因の一つが、各国との金利差拡大です。

金利差が開いたことで、金利が高い通貨を買う+金利が低い円が売られ「円安」が引き起こされました。

この円安に財務省は合計5回、総額18.9兆円の為替介入を行いました。

2022/9/22 2.8兆円
   10/21 5.6兆円
      10/24 0.7兆円

2024/4/29 5.9兆円
     5/1   3.8兆円

<財務省> 外国為替平衡操作の実施状況


GDP(国内総生産)

名目GDP

名目GDPで初の600兆円を達成しました。

GDPの内訳(就任前後の比較)

ドイツにGDPを抜かされたことが騒がれていますが、ドル建ての"名目"GDPが抜かされただけです。日本のCPI(消費者物価指数)は3%前後。ドイツのCPIは6〜12%。名目の場合は抜かされて当然ですし円安ドル高の影響も重なります。実は、ドル建ての"実質"GDPでは日本は3位です。

実質GDP

実質GDPの推移

安倍政権のアベノミクスで約30兆円伸ばしましたが、コロナで約20兆円落としました。岸田政権で約25兆円伸ばし、コロナ禍前よりも成長しました。


賃金

名目賃金(現金給与総額)

2021/6 → 2024/6

全体: ¥442,821 → ¥498,887 (約5.6万円増)

常勤: ¥593,271 → ¥665,313 (約7.2万円増)

非常勤: ¥105,870 → ¥121,664 (約1.6万円増)

〈厚生労働省〉毎月勤労統計調査

名目賃金(定期給与)

2021/6 → 2024/6

全体: ¥264,784 → ¥283,880 (約1.9万円増)

常勤: ¥339,293 → ¥361,010 (約2.2万円増)

非常勤: ¥97,911 → ¥109,058 (約1.1万円増)

〈厚生労働省〉毎月勤労統計調査

この高い水準の賃上げは33年ぶりです。この水準を石破政権やその後の政権が維持すればデフレ脱却を達成し、日本の成長に繋がるでしょう。今後の動きに注目です。

賃上げ率(名目)

2022年度(令和4年度)

【大企業】
2.12%(6,400円)

【中小企業】
1.96%(4,840円)

【非正規】
1.85%(4,000円)
⇒全体: 2.07%(6,000円)
 消費者物価指数: 3.0%

2023年度(令和5年度)

【大企業】
3.69%(11,380円)

【中小企業】
3.23%(8,020円)

【非正規】
3.18%(6,830円)
⇒全体: 3.58%(10,560円)
 消費者物価指数: 2.8%

2024年度(令和6年度)

【大企業】
5.24%(16,360円)

【中小企業】
4.45%(11,360円)

【非正規】
4.98%(10,870円)
⇒全体: 5.1%(15,280円)

賃上げ率の推移

賃上げ率(実質)

実質賃金の推移(現金給与総額)

物価高に賃金が追いつかず26ヶ月連続のマイナスが続きました。その物価高の主な原因の一つが、22年の2月から始まったウクライナの戦争。その時点では22年度予算の成立直前。そのため物価高対策は6月と12月に補正予算を組みました。
その結果、実質賃金は減少傾向でしたが22年度の冬以降は上昇傾向になって今年6月にはプラスに転じました。

上記の説明の時系列


雇用

有効求人倍率

有効求人倍率の推移

2021/09 → 2024/09

    1.15  →  1.23

新規求人倍率

新規求人倍率の推移

2021/09 → 2024/09

    2.05  →  2.32

完全失業率

完全失業率の推移

2021/09 → 2024/09

    2.7  →  2.5

雇用に関する指標は、いずれも良い傾向になりました。アメリカの失業率は3.5〜4%。ドイツは5〜6%。日本がいかに安定しているかが分かります。


企業

経常利益

経常利益の推移

2021/4-6 → 2024/4-6

24.07兆円 → 35.77兆円

設備投資

設備投資額の推移

2021/4-6 → 2024/4-6

10.15兆円 → 11.92兆円

どちらも過去最高水準であり、企業の利益が上がり、賃上げや設備投資に繋がっています。


株式市場

日経平均株価

2024年7月11日の終値

日経平均株価が史上最高値を更新しました。これには様々な要因が存在します。

・日本企業の好調な業績
・アメリカの株高
・円安
・中国からの資金シフト   などなど……

就任時の21年10月4日の始値は
「2万9044円47銭」

就任中の最高値は24年7月11日の取引時間中に
「4万2426円77銭」

退任時の24年10月1日の終値は
「3万8651円97銭」

日経平均株価を約13,400円上昇させ、歴代首相の上昇率ランキングでは7位となりました。 

TOPIX

2024年7月4日の取引時間中

日経平均株価と同様にTOPIXでも史上最高値を更新しました。

NISA

口座数の推移

2014年から始まったNISAは岸田政権で劇的に変化しました。安倍政権で約1569万口座まで伸ばしたものを、3年間の岸田政権が1.5倍の約2428万口座まで引き伸ばしました。

総買付額の推移

総買付額では安倍政権が約21.63兆円だったものを、岸田政権が約45.39兆円。2倍以上になりました。
どちらのグラフも2024年が一気に伸びているのが見受けられます。しかも6月までという半年で。それは「新NISA」が始まったからです。新NISAについては『政策』で紹介しています。


農林水産業

〈農林水産省〉

福島第一原発の処理水を海に放出することに伴い、一部の近隣諸国が禁輸を行いました。それにもかかわらず岸田首相や外務大臣、農林水産大臣の外交により輸出額を伸ばし続けることに成功しました。
さらに、英国やEUなどが東日本大震災以降、日本産食品に対する輸入規制を行っていましたが、岸田首相が何度も撤廃を求め、撤去が実現されました。

経常収支

経常収支の推移

就任当時は1.7兆円程度だったのが円安やインバウンドを要因として2倍以上の3.8兆円まで引き伸ばしました。


財政

プライマリーバランス

そもそもプライマリーバランスとは政策を行うための経費を、税収等で賄えているかどうかを示す指標です。32年間に渡り赤字でしたが、2025年度に初めて黒字になるとの試算が出ました。大きな増税はしていませんが、税収が増えたことが理由となっています。 

税収

先ほど紹介したPBにも大きく関係してくる税収。国民の所得が増えたことや、企業の業績が好調であるのが原因として税収が増えています。

国民負担率

2022年: 48.4%
2023年: 46.1%
2024年: 45.1%
賃金が増えたことなどの影響で徐々に国民負担率が下がっていっています。


政策

ここまでは経済指標の推移について紹介してきましたが、それらの実現のための政策を紹介していきたいと思います。

原料価格高騰抑制政策

〈資源エネルギー庁〉

原油価格が上がった影響でガソリンや軽油価格が値上がりしています。しかし政府の抑制政策で170円前後に留まっています。

よく「トリガー条項凍結解除しろ」という声がありますが、政府が補助金にこだわっている理由を説明します。

そもそもトリガー条項の凍結解除とはガソリン税に課されている25.1円の暫定税率の課税停止をする措置のことです。

※R5/10/10の価格で試算

仮に補助金ではなく、トリガー条項発動や対策を講じなかった場合は上記のような試算になります。実は場合によっては補助金が1番効果的なんです。これが1つ目の理由で、2つ目は割引対象です。

現行政策(補助金)の場合
トリガー条項発動の場合

トリガーの場合だとガソリンと軽油のみですが、補助金は重油と灯油、航空機燃料も対象になってきます。
3つ目は財源の問題です。国の財政は何とかなるにしても地方です。地方財政では重要な財源ですが、それが無くなれば痛手となります。

燃油と同様、電気やガス、小麦価格の価格抑制にも取り組んでいました。

電気補助:¥1400×20ヶ月
ガス補助:¥450×20ヶ月
燃料補助:¥1,200×36ヶ月
小麦補助:¥100/1kg×18ヶ月

価格の部分は家庭の平均価格です。この場合、約8万円の補助が行われています。目に見えない形で事実上の8万円減税が行われていたのです。

エネルギー政策

岸田政権では原発の「再稼働」「新増設」「運転期間の延長」の方針に転換させました。以下の7つの原発の再稼働を進める方針を掲げました。

高浜1・2号機
女川2号機
島根2号機
柏崎刈羽6・7号機
東海第二

このうち高浜原発1・2号機の2機が再稼働し、他2機が今年以内に再稼働予定。3機が先送りとなっています。

高浜1・2号機(23/08・09)
女川2号機(24/10/29予定)
島根2号機(24/12予定)
柏崎刈羽6・7号機(未定)
東海第二(2027年以降)

そして「新増設」も議論が進んできました。実際に三菱重工と共に電力会社4社が共同で次世代原発を開発すると発表しました。

さらに23年5月末に「GX電源法」を可決、成立し、「原則40年、最長60年」という運転期間を60年超の運転可能にしました。

他にもSMRなどの次世代革新炉の研究・開発・実装やペロブスカイトを含めた、脱炭素電源への戦略的投資を確保する仕組みが検討されました。

賃上げ政策

ありすぎて正直noteに書いても読む気を失うと思います笑
そのため、首相官邸が広報しているサイトで主な政策を見てほしいです。特に中小企業の支援や労務費転嫁、同一労働・同一賃金をして中小企業や非正規雇用者のための政策が多いのが分かります。

さらに、可処分所得を直接増やすために「定額減税」が実施されました。

引用先:Zaim

実は98年の橋本政権ぶりで、民主党政権でさえ実施をしなかったのに、なぜか「増税メガネ」と呼ばれるようになりました。次はその真相に迫ります。

税/社会保険料

岸田政権は歴代政権の中でも最もデマに悩まされた政権だと思います。その象徴的なのが「増税メガネ」。確かに、1つもしていないわけではないですが多くの国民に負担がかかるのは「子育て支援金」のみです。しかもそれは26年度以降。
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↓【個人的な主張】↓ ※飛ばしても大丈夫です
頻繁に経済学者の森永卓郎氏の「増税スケジュール」というのがネットで流れています。

しかしながら、ほとんどデマです。どれも酷いですが、特に酷いのは「結婚子育て資金の贈与特例廃止」です。むしろ延長されたんです。教育資金の一括贈与特例も同様に延長されています。テレビに出演するほどの経済学者ならば正確な情報を流してほしいと私は考えます。


最低賃金

全国加重平均を¥930 → ¥961 → ¥1004 → ¥1054と大幅に引き上げてこられました。

年収の壁対策

年収の壁対策を実施し、手取りを減らさないようにする政策が行われました。詳しくは首相官邸や、厚生労働省のHPで確認できます!

新NISA

先ほど示したように、岸田政権ではNISAの口座数と買付額が劇的に増えました。「貯蓄から投資」を呼びかけ、NISAを改良しました。

引用先:イオン銀行

非課税期間が無期限化・口座開設期間が恒久化し、 投資上限額も大幅にアップされました。旧NISAより長期的で柔軟な運用ができるようになりました。
さらに金融経済の知識を国民が養えるように、アドバイザー相談料の8割引きクーポン券を配布することを決めました。

経済再生

コロナ禍で経済が停滞していたため、経済再生を図るために「全国旅行支援」を実施しました。

かなり手厚く、使った人も多いのではないかと思います。これと同時に映画館やテーマパークも2割引きとなりました。余談ですが私も友達とユニバに安く行きました!普段は1万円程度ですが、8,000円程度で行けたと思います

さらに、能登半島地震が起こった後には北陸の経済再生のために「北陸応援割」というのが実施されました。他にも低所得世帯への給付金なども行われています。

半導体/データセンター政策

岸田政権では西村元経済産業大臣や齋藤前経済産業大臣が大活躍し、様々な半導体政策やデータセンターの誘致が行われました。

1つ目は注目度も高い「ラピダス」
半導体需要が増していく中、官民連携で再び日本の半導体産業を取り戻すために動き出しました。

国内の半導体メーカーの支援は当然ですが、誘致にも取り組みました。台湾のTSMCが熊本に来たことによって、既に地価が上昇して経済効果があらわれています。

他にも半導体メーカーの誘致だけでは無く、データセンターの誘致や投資の呼びかけも行われました。

「4. 外交編」や「6. デジタル編」でも紹介しますが、外交の岸田首相は流石と言っていいほど外遊や官邸外交の時に締結してきます。

大陸棚の延長

これをすることによってレアメタルなど海洋資源開発が可能となります。スマホやパソコンなどに使われるレアメタルの重要度はさらに増していく中で決定されました。



「岸田政権総まとめ②(経済編)」をご覧くださりありがとうございました。
ぜひ他分野について詳しくまとめた③〜⑩までも公開するのでご覧ください🙇

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