それでも少女は夢を見る―TVアニメ『ラブライブ!スーパースター‼︎』2期第6話「DEKKAIDOW!」

 TVアニメ『ラブライブ!スーパースター!!』2期の感想、今回は折り返し地点の第6話です。第5話から引き続きで待たされましたが、ようやく夏美の核心に迫ることができました。

空っぽの夢を見続けて

 今回はLiella!を利用しようというところから、加入するまでの夏美の心情の変化が注目ポイントでした。最初はLiella!の2期生3人を引き離し、自らの稼ぎのために利用することを企みますが、ここで夏美が見誤っていたのは3人の想いの強さ。第5話で「なるほど、そういう構図になっているんですのね。」というセリフがありましたが、たしかにここだけでは2期生の意思のようなものは感じ取りづらく、1期生が3人を引っ張っているように見えますからね。
 ここで判断を誤った(?)夏美は、きな子の故郷である北海道で早速2期生に振り回されることになりますが、ターニングポイントとなったのはやはりこのやり取り。

「メイちゃんたちとも話してたんすけど、きな子たち、これを超えるのが夢なんす。」
「夢?」
「きな子たちが入って1年生が増えたから、このステージを超えることができたって。Liella!はパワーアップしたって。」
「それが…夢?」

TVアニメ『ラブライブ!スーパースター‼︎』2期第6話「DEKKAIDOW!」

 2期生がこうも動き続ける原動力が「夢」であることを知った時、夏美の心が明らかに動きました。自身のためにLiella!を利用することを考えていましたが、この時にアップロードしようとした動画を変えたことからわかるように、このやり取りを境に夏美の言動が変わりました。

「超えるのが夢なんでしょ?」
「あ…!」
「先輩たちのステージを超える。それが皆さんの夢だったはず。だったら…責任は持つべきですの!」
「それは…!」
「諦めるくらいなら…。」
「あっ…。」
「夢なんて語ってほしくない!」

TVアニメ『ラブライブ!スーパースター‼︎』2期第6話「DEKKAIDOW!」

 こういう読めないキャラクターこそ油断ならないというのは1期のすみれで学んだことですが、まさかこんなやり取りまで飛び出してくるとは…。この直前の夢のシーンも相まって思わず涙が。
 さて、このやり取りに限らず第6話を通してですが、夏美は何度も夢を見てそれでも叶わず、夢を失ったキャラクターのように描かれています。では、彼女がこだわる「マニーを稼ぐこと」とは一体なんなのか。目標や夢はないと言いますが、たしかに「マニーを稼ぐこと」そのものが夏美の目的というわけではなさそうです。とはいえお金を貯めて何かを成し遂げようというわけでもなく、一方でハイレベルなLiella!の練習にも必死についていくくらいの並外れた熱意があるなど、夏美のお金への執着はかなり正体不明な感があります。
 ここで考えたいのは、夏美がこれまで見てきた夢との性質の違い。「オリンピックで金メダルをとること」「ノーベル賞を取れるような科学者になること」「モデルさんになって世界を駆け回ること」というのは、叶うか叶わないかがハッキリしていますよね。一方で「マニーを稼ぐこと」というのは際限がなく、またどのラインで達成かというのも決まっていません。つまり、「マニーを稼ぐこと」はハッキリと叶わないという結果になることはなく、さらに(「日経平均全面安」のような外的要因もあるとはいえ)動けば動くほど結果が出るものだと言えます。それだけに「夢」や「目標」と言い切るにはたしかに難しいものですが、ここまで夢破れ続けてきた夏美にとって、新しく目指すべきものとして目をつけるだけのことはあるんですよね。

 ただ、ここでひとつ不自然な点が生まれます。夏美の言う通り「夢がない」のであれば、そもそもお金を稼ぐ必要もないのでは、という点です。夢は見なければならないものではないですから、夢が叶わないと分かったのならば、そこで何も行動を起こすことなく、漫然と学生生活を送ることも可能なはず。夏美が苦学生っぽいことは前回述べましたが、それにしてもバイトの量はこんなに増やさなくても大丈夫だと思いますし、投資運用やエルチューブで稼ぐなどというのは通常の学生がやる範囲ではないですからね。

明るくて前向き、流行に敏感で、行動力がありなんでも挑戦してみるタイプの女の子。目的のためには手段を選ばない所もあり、裏から手を回す作戦を考えることもしばしば。新設校という点と、原宿などの流行発信地に通えるという利点があったため結ヶ丘女子入学を決めた。

『ラブライブ!スーパースター!!』公式サイト:メンバー紹介・鬼塚夏美

 夏美のプロフィールにはこのような記載もありますが、実際苦学生だとして、こんな理由でわざわざ学費のがかる私立高校に入学するか?という話なんですよ。つまりこの行動は、お金をかけてでも稼ぎを増やすという、自分自身を使った投資行動のようなもの。お金への執着が度を越しているとすら思います。
 ちなみに夏美のセリフがたまに訛る現象ですが、個人的な推測として、第5話で映った自宅から実家住みではありそうなので、家が遠い…北関東のどこかなのではと思っています。あの訛りから思い出したのが、栃木のお笑い芸人・U字工事だからっていうあまり根拠の無い話なのですが(笑) ただこれは、東京でバイトに明け暮れるのに「時給の差」という理由がつけられるので、ある程度説得力もあると思っています。家から相当の距離があってもなお、わざわざ結ヶ丘に来ているのであれば相当なものです。

「いいですの?向いてないことをいくら頑張ったって、ダメなものはダメですの。でも、やってもないのに向いてるかどうかなんて分からないでしょ?」

TVアニメ『ラブライブ!スーパースター!!』2期第1話「ようこそLiella!へ!」

 そうまでして夏美が「マニーを稼ぐこと」に執着する理由は何なのか。その答えは色々と散りばめられていますが、第1話のこのシーンが象徴的でした。第6話で3人の練習を撮影している場面からも分かるように、夏美って、夢見る人を見つめる時は笑顔なんですよ。それはきっと、夏美は夢見ることそのものが、そしてそのために頑張ることが大好きだから。だからこそ、夢が叶わなくともまた夢を見て、それを繰り返して夢を見ることができなくなったいまでさえ、動きたい気持ちだけが実体を失った空っぽな夢を追い続け彼女を突き動かす。その行き着いた先が、動けば動くほど結果が出てくる「マニーを稼ぐこと」だったのではと思うのです。
 こう見ると夏美は、ものすごく空虚なものを背負ってしまったキャラクターに見えるのですが、それは決して無意味な辛い時間ではなく、むしろとても大事なことで。夏美が結ヶ丘に来たのは「マニーを稼ぐこと」に必要だったから。つまり、どこかで心が折れて夢を求めるのをやめてしまえば、夏美が結ヶ丘に来ることもなければ、Liella!と出会うこともなかった。とても時間はかかったけれど、とても遠回りだったけど、それでも夏美の中に夢を求め続ける想いがあったからこそ、彼女の想いも結ばれることできたのです。

 そしてそんな夏美を救ったのがかのんというのも、今回の話の重要なポイントでした。夢見て挫折して、スクールアイドルを通して救われた自身の経験があるからこそ、2期第2話で言っていたようにスクールアイドルの素晴らしさを伝えたいかのんは、夏美をLiella!に誘わなければいけないと感じたことでしょう。夏美の熱量的なものもかのんに似ていて、てっきりキャラ被り要素の多いすみれと似ているのかな…と思いきやこれもミスリードでしたね。いや、1期第4話からすればかのんとすみれは似ているので、必ずしもこれも間違いではないか…。
 合宿中「一番張り切って練習していた」という夏美は、センターに立ってまた夢を見つけたここから、Liella!の大きな力になっていくはずです。2期生のなかのリーダー格のようなメンバーにすらなっていくかもしれません。

その他雑多なポイント

 決意を固めて部長に就任した千砂都ですが、トレーニング担当だけありメンバーのことを本当によく見ていて、さらに適切にハードルを与えて成長させたという、まさしく完璧な部長。1期での経験があるからこそですが、これ以上ないくらい適任でした。嵐千砂都、やはり強い…。

 四季が想像以上にいろいろな表情や行動を見せてくれて、もっとあっさりした印象のメンバーかと思いましたが、なかなかかわいらしいところもありますね。個人的に2期生の中でも一番好きかもしれません。ただ、科学の力で用意していくるものがおかしいんですよ…ランニングマシーンこわ…メイまでドン引きしてるじゃん…w


 というわけで第6話の感想でした。夢を求める心が引き寄せられた夏美、大好きで大切な相手と手を取り一歩を踏み出したメイと四季、そしてみんなの想いと運命が複雑に絡まって走り始めたきな子。Liella!の紡いできた物語が、2期生4人という新たな役者を揃えました。これから物語がどうなっていくのか、ますます楽しみですね。しかし次回、「UR 葉月恋」ってどういう…第5話で恋がゲームにハマったことに絡んだ話っぽいですが…?

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