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レッツゴー☆パッションアイランド―神津島訪問ガイド(スケジュール編)

 TVアニメ『ラブライブ!スーパースター!!』をきっかけに、2022年9月と2023年11月に東京都神津島村を訪問した筆者。本当に素晴らしい島で、皆様にも是非行ってみてほしいのですが、いかんせん離島ということもあり、訪問へのハードルが高いことは否定できません。
 そこで今回、私が経験したことをもとに、神津島訪問ガイドというものを勝手にまとめてみました。昨年にも似たような物を書きましたが、2回目の訪問をしたことで、神津島の楽しみ方もかなり理解してきたところなので、より詳しく分かりやすくご案内いたします。
 私のように『ラブライブ!スーパースター!!』が好きな方はもちろん、一般の方においても、神津島に行くにはどこから手を付ければ良いのか…と悩んでいる方の助けになれば幸いです。
 なお、こちらに掲載の情報は2023年12月時点での内容となります。色々変わる可能性があるので、必ず事前に自分で調べるようにしてください。


神津島にはどうやって行くの?

 東京都に属するとはいえ、伊豆半島の南の太平洋に浮かぶ神津島。どうやって島に行くか、というところから考えてみましょう。というのも、離島ゆえにアクセス手段が限られるため、交通手段を先に決めなければ訪問の予定も立てられないからです。そこで、まずは島への交通手段について把握したうえで、神津島を訪問するスケジュールを考えてみましょう。

大型客船さるびあ丸(東海汽船)

旅客だけでなく貨物も取り扱い、伊豆諸島の物流を担っている。

 TVアニメにも登場した大型客船で、東京の竹芝桟橋から大島・利島・新島・式根島、そして神津島の順に結ぶ航路に就航しています。
 東京からの往路は、基本的に夜10時ごろ東京を出発し、朝6時の大島以降各島を経て、神津島には午前10時頃に到着する夜行便です(時期により多少時間がズレることがあります)。一方の復路は神津島を午前中に出発し、夜に東京に着くまで約9時間の船旅となります。
 金曜・土曜の東京出発便と土曜・日曜の東京到着便を中心に、横浜大さん橋を経由する場合があり、東京~横浜間は1時間30分ほどかかるため、神奈川県近辺の方は横浜で乗降すると便利です。

筆者が利用した2等和室。頭上に横長のロッカーがある以外は完全共用空間。

 船室は5つの等級に分かれており、TVアニメに登場したのは最も安い2等和室。大部屋に雑魚寝・布団なし(毛布は有料でレンタル可能)・コンセントは部屋に数か所のみと、値段の分設備も控えめ。利用する場合はタコ足を持参することをオススメします。
 床はカーペット張りで硬く、寝心地が良いとは言えません。コスト的には優れていますが、夜行便ではここで寝ることになりますから、島の観光で動く際の体力を心配するのであれば、上位の等級を利用するのも手でしょう。

 同じ2等には椅子席もあり、リクライニングさえあれば椅子で寝るのも問題ない人や、復路で睡眠を取る必要がない場合には良いかと思います。
 また上位ランクでは、特2等ではカーテン・全席コンセント付きの2段ベッドに、1等では全席マットレス・コンセント付きの幅広共用和室になります。グループでの旅行であれば、2段ベッドで4人まで利用できる個室の特1等や、2人で使えるホテルの部屋のようになっている特等も良いかもしれません。
 各等級の写真は東海汽船のホームページ(本項トップのリンク)よりご確認いただけますので、予算に合わせて検討してみてください。

船内レストランで食事も楽しめるが、営業時間が限られ朝食時は混むのでお早めに。

 船内での過ごし方ですが、東京~横浜辺りではデッキに出て夜景を楽しむのがオススメレインボーブリッジの下をくぐるなど、普段とは違う東京の景色を楽しむことができます。往路では日付が変わる頃には消灯時刻となるため、共用の船室を利用する方はお静かに。
 なお、各島に寄港するタイミング以外、外海に出ると電波は拾えないと思った方が良いです。船内にはフリーWi-Fiも一応ありますが、帯域幅が狭いためか、基本的には使い物になりません。
 往路では大島到着前に船内の明かりがつき、夜間は閉鎖しているデッキにも出られるようになります(悪天候時を除く)。時期によっては海から昇る美しい朝日も楽しめますしデッキ最上部で作詞のポーズをやるのも良いですね(?)。
 船内レストランは朝7時30分頃にオープンしますが、朝食時は混雑するので開店前に待機しておくのが吉。船内ではレストラン以外にも、酒類を含む飲料・お菓子やカップ麺等の軽食を扱う自販機で食料調達ができます。また、コインシャワーもありますが浴場はないため、ゆっくりとお風呂に入りたいという方は、乗る前に銭湯などを利用すると良いでしょう。

 船体が大きい分揺れはそこまで酷くないですが、外海に出ると意外と揺れます。船酔いには注意が必要ですし、船を降りた後もフラフラする感じに襲われるかもしれません。しかしながら、揺れるとはいえ就航率が高いのが特徴で、海が荒れがちな冬期は多少影響が出るものの、神津島にたどり着ける可能性が最も高い交通手段と言えます。
 一方さるびあ丸の大きなネックは、前述した通り神津島を午前中には出てしまうということ。島でランチすら食べられずに帰ることになるので、1泊2日の場合の復路にするには寂しいかもしれません。
 復路でも船内レストランは使えますが、島の商店などで食べ物を買ったうえで乗るのがオススメです。また、デッキで景色を見続けるにも限度がありますから、約9時間という長旅の時間つぶし手段を用意しておくと良いですね。
 
観光シーズンの夏場を中心にほぼ毎日運航しますが、時期によっては運休日があるため、東海汽船のホームページから運航予定を確認しておきましょう。

高速ジェット船(東海汽船)

東海汽船では全部で4隻の高速ジェット船を運航している。

 高速ジェット船もさるびあ丸同様に竹芝桟橋と神津島を結んでいますが、東京から神津島までわずか3~4時間程度で走破する俊足っぷりが特徴です。土休日を中心に神奈川県横須賀市の久里浜港を経由することがあり、神奈川県の方は有効活用できそうです。
 座席は等級区分などなく、飛行機のように全て椅子席。乗船時間が短く済む分運賃はお高めで、座席数が少ないのもあって混雑する傾向にあります。船内には自動販売機などの設備しかなく、船外デッキに出ることもできないため、乗船中はほとんど大人しく座っておくことになると思います。先述したように外海では電波が使えないため、寝るなり時間をつぶす手段を持参するなりしたほうが良いですね。

 高速航行時は水面から浮上するため、小さい船ながらほとんど揺れず船酔いの心配もありません。しかし着水する接岸時は別で、小さい船体ゆえに波の影響も大きく、海の状態によって港に着けるかが変わってきます。東京都の資料の8ページに各島の就航率が掲載されていますが、神津島の高速ジェット船の就航率は、通年の89%に対し冬期は64%まで落ちており、確実に行きたい・帰りたい場合はさるびあ丸を使う方が安心です。
 高速ジェット船自体は基本的に毎日運航ですが、時期ごとに時刻や行き先の変更(大島止まりとなる)が多いため、予定日の時刻表は必ず確認しましょう。また、竹芝桟橋を出るのは基本的に朝8時台など早い時間のため、往路では早起きもしくは前泊が必要な場合もあり、さるびあ丸で行く方が合理的かもしれません。
 ちなみに夏のピーク時には、静岡県熱海市の熱海港から大島を経由し、神津島までを約2時間で結ぶ航路も設定されています。熱海駅からは東海道新幹線も使えるので、神奈川県西部や東海エリアの人が活用できそうです。

フェリーあぜりあ(神新汽船)

大きな船ではないが、神津島に就航する唯一のカーフェリーだ。

 地図を見れば分かりやすいですが、伊豆諸島のひとつである神津島は東京都ながらも、その名の通り伊豆半島のほうが距離的にはよっぽど近く、そんな伊豆半島の南端の街・静岡県下田市の下田港からフェリーあぜりあが就航しています。下田を出発し、利島・新島・式根島・神津島に寄港して下田へ帰る航路で、火・金・日曜日は利島先回り、月・木・土曜日は神津島先回りで運航されています。なお水曜日は運休日となっています。
 下田港から神津島を直接結ぶ場合、所要時間はわずか2時間20分ほどで、神奈川県西部や東海地方の人であれば、上手く使えば竹芝桟橋経由より所要時間・料金ともに節約することができます。また、神津島で自分の車を運転したい場合、フェリーあぜりあがほぼ唯一の手段となるのも注目したいポイントですね(バイク等の二輪車であれば、必要な手続きを経ればさるびあ丸でも可能なようです)。

2等客室はカーペット張りの広間で、短時間の船旅であれば充分な設備。

 船室は3階級に分かれていますが、下田から神津島まで直接で2時間20分、逆回りでも4時間20分しかかからないため、2等客室で軽く横になっていれば充分だと思います。昼行便かつ船外にも出られるため、海を眺めて過ごすのも良いでしょう(柵が低くてちょっと怖いですが)。
 フェリーあぜりあの最大の強みは、神津島から下田まで直行する場合、神津島を出るのが午後2時過ぎと船の中では最も遅く、ランチ後にゆっくりと過ごしてから帰ることができる点。ちょうど日曜日が利島先回りなので、帰りの便として使いやすいのがありがたいところです。
 一方で弱点は就航率が低いこと。調べても具体的な数値が出なかったのですが、特に冬期の就航率が低いという話をよく聞くので、高速ジェット船同様確実に行き来したい時は避けた方が良さそうです。

飛行機(新中央航空)

神津島発着の飛行機は小型のプロペラ機で運行されている。

 離島へのアクセスと言われると船が真っ先に挙がりますが、実は神津島には空港があり、飛行機で行き来することもできます。ただし、一般的な旅客機ではなく、乗客定員19人の小型のプロペラ機が就航しており、神津島と結ばれているのは東京の調布飛行場のみ。
 京王線の調布駅からバスで15分と、都内の人でもなければ調布飛行場へのアクセスがややネックですが、調布飛行場から神津島空港の所要時間はぶっちぎりトップのわずか45分。幾分前のデータしか出てこなかったのですが、風の影響を受けやすいながらも、2013年1月の就航率は90%と風の強い冬期でも比較的安定した手段となっており、1日複数便運航するなど利便性は高いようです。

空港は神津島の南側の山の上にあり、ターミナルは小さく簡素な造り。

 ネックを挙げるならば、やや料金が高めなことと、神津島空港のアクセスがとにかく悪いこと。集落から遠く離れた山の上にあり、バスは1日に1~2便しか来ません。タクシーも島全体で台数が少なく出払っている場合もあるため、飛行機を利用する場合は空港までの送迎に対応している宿に泊まるのが良いでしょう。空港周辺には商店なども一切ないため、復路ではお土産等も事前に買っておく必要があります。
 また、上記のような不便さや席数の少なさといった弱点がある一方で、島民の利用はある程度ありそうなので、満席となる可能性があることにも注意が必要です。

いつ行くのがいいの?

 さて、それぞれの交通機関について確認したところで、実際に行くスケジュールを立ててみましょう。それぞれの都合によって最適解は変わってきますが、以下の点を意識してみると良いと思います。

神津島に行く往路

 運航日であればさるびあ丸を使うのがオススメ。夜寝ているうちに移動することができ、神津島への到着も午前10時頃と早いため、着いた当日からランチを楽しんでゆっくりと遊べます。2等和室・椅子席であれば運賃も抑えられますが、寝心地の悪さで着いて早々クタクタにならないよう、財布事情と居住性のバランスを考えましょう。
 次点では飛行機の利用が良いかもしれません。時期により多少時刻は異なりますが、午前の便であれば着いた当日から難なく遊べます。ただし調布飛行場へのアクセスはもちろん、山の中を歩いて下ることにならないよう、神津島空港からの移動手段は必ず準備しておきましょう。
 高速ジェット船も有力な候補ですが、午前8時頃と朝早く竹芝桟橋を出ることと、時期によっては到着が正午を過ぎる点をどう見るかですね。
 フェリーあぜりあは月・木・土曜日の神津島先回り航路であれば正午頃に着けるため、下田港に9時頃に着ける人であれば使うのも手。
ただしこの2つの手段については、冬期を中心に就航率に不安があることに留意しましょう。

神津島から帰る復路

 復路については、それぞれの異なる特徴から検討する必要があります。さるびあ丸は就航率の高さから不安が少ないですが、午前のうちに出発となるため1泊2日での訪問だと滞在時間が不足しがち。また、竹芝桟橋への到着時刻が夜になるため(時期によっては夕方の場合あり)、そこからの帰路が間に合うか気にする必要も出てきます。
 高速ジェット船は午後の出発なので滞在時間が延び、だいたい夕方(時期によっては夜の場合あり)には東京に到着することができます。しかしながら、往路同様冬期の就航率に不安が残ります。
 フェリーあぜりあは火・金・日曜日の神津島から下田に直行する場合、午後2時頃まで神津島に滞在でき、下田市からの陸路を考慮しても、帰る先次第ではさるびあ丸より便利に使えます。静岡県沼津市在住の筆者にとっては非常に助かる存在でした。ただしこちらも就航率の低さがネック。
 飛行機は午後の便も設定があり、街から離れた神津島空港までの移動は考慮しなければなりませんが、こちらも昼過ぎまで滞在することができます。調布飛行場に着くのも夕方前のため、地方在住で東京駅や羽田空港まで出る必要がある、というような方でなければ使いやすいでしょう。

最大の注意点は欠航のリスク

 神津島は陸続きでないため、移動手段は船か飛行機のみ。就航率の話を度々しましたが、天候が荒れれば船や飛行機が欠航になり、行けない可能性があることはもちろん、帰れなくなる可能性があることも頭に入れなければいけません。帰れなくなった場合は代替の移動手段を確保しなければならず、当日の便が動かないまたは空いていない場合、宿泊して翌日以降に帰ることになります。そのため、少なくとも帰る翌日に絶対に外せない用事があるタイミングは避けるべきでしょう。安全策を取るならば夏期かつ就航率の高いさるびあ丸で訪問することになりますが、それでも100%行き来できるという保証はありません。
 また、往路で欠航が発生した場合、代替の交通手段についてはもちろん、宿のキャンセル料なども気になるところですので、キャンセルポリシーについても一度目を通しておくべきです。2泊3日以上の予定であれば翌日に行ける可能性もあるほか、空席があれば別の交通手段でたどり着けることもあるので、柔軟に動けるよう考えておくと良いでしょう。

 そしてもうひとつ、船自体は運航するものの島に着けるかはわからない「条件付き運航」というものがあります。神津島は比較的就航率が高い島ではありますが、天候等の影響により、不幸にも神津島に寄港できない可能性もあります。この場合は到着できるか分からない「条件付き運航」扱いとなり、乗る前にキャンセルした場合や、到着できずにそのまま引き返した場合は運賃全額が返金になります船の運航状況は東海汽船のホームページから随時確認することができます。正確な運航情報は当日に決まるので、乗る前に必ず確認しておきましょう。

チケットの予約について

 以上を踏まえると、東京に前日入りし往路はさるびあ丸、復路は好みに合わせた方法(ただし冬期は高速ジェット船とフェリーあぜりあを避ける)、帰る翌日に外せない予定は入れない、というのが基本パターンになります。また、1泊2日では神津島を堪能しきれない場合もあるため、2泊3日は確保することをオススメします。
 これをもとに日程を決めたら、交通手段のチケットを確認しましょう。ツアーで宿と一緒に手配することもできますが、交通手段のみで取る場合はそれぞれ予約の方法が異なります。

 さるびあ丸と高速ジェット船は乗船日の2ヶ月前から予約可能ですが、繁忙期は早期に売り切れとなることもあるので、特に夏期に行く方はスケジュールを早めに立てましょう。予約する際は15~20%割引となる東海汽船のインターネット予約サイトの利用がオススメ。他の割引についてはこちらをご確認ください。
 フェリーあぜりあの場合は、インターネット予約が使えないため電話で予約することになり、割引は学生などの条件付きのものだけです
 飛行機の予約では新中央航空の予約サイトを利用できます。割引率は控えめですが、往復割引も設定されています
 ただし早まって予約する前に、宿もどこを取るか先に考えておきましょう。宿の予約がないまま神津島に来た場合、条例により野宿やキャンプが禁止されているため、その日の船や飛行機で帰らなければいけません。宿については次の章で触れます。

 なお、神津島の観光シーズンは4月から10月頃にかけてですが、11月から3月のオフシーズンに訪問を考えている方は、東海汽船から割引商品が出る場合があるので覚えておきましょう。2023年秋2024年春には「スーパー島トクきっぷ」という商品が発売され、さるびあ丸の2等和室で往復などの諸条件はありますが、往復運賃が5,000~6,000円という驚異的な価格で神津島に行くことができます。概ね2ヶ月前(予約開始時期)に発表されますので、チケットを予約する前に確認してみましょう。

上級者向けテクニック

伊豆大島ではさるびあ丸を待ってから高速ジェット船が出ることも。

 神津島を発着する船は限られていますが、本州に近く規模の大きい大島では、竹芝桟橋発着の高速ジェット船が複数あるほか、熱海港発着の高速ジェット船(静岡県伊東市の伊東港経由の場合あり)も通年運航しています。このため、大島で乗り継ぐとより便利に帰れる場合があります。

2023年10月29日の例では…>
(さるびあ丸)神津島10:30発大島14:10→横浜18:00→東京19:45着
(高速ジェット船)神津島12:50発大島14:30→久里浜15:40→東京16:45着
(高速ジェット船)大島15:45発→伊東16:20→熱海16:50着

①神津島からさるびあ丸、大島で乗り継ぎ高速ジェット船で久里浜や竹芝へ向かうパターン。運賃が高い高速ジェット船の利用は最小限にしつつ、横浜より久里浜のほうが都合の良い人や、東京到着時間を早めたい人に便利。東京で降りる場合、通常料金が高速ジェット船のみで11,140円、さるびあ丸2等のみで7,230円に対し、伊豆大島乗り継ぎでは合計9,830円になる。

②神津島からさるびあ丸、大島で乗り継ぎ高速ジェット船で伊東で降りるパターン。伊豆大島の乗り継ぎ時間はやや長いが、伊東駅から熱海駅に出れば東海道新幹線にも乗り継げる。合計運賃も5,970円と東京より格段に安くなる。熱海港から熱海駅まで路線バスもあるがやや遠いので、伊東港から伊東駅まで歩き、JR伊東線で熱海駅に行く方が楽かつ料金的にも安くなる。

③神津島から高速ジェット船、大島で乗り継ぎ高速ジェット船で伊東で降りるパターン。合計運賃が7,930円と少し高くなるが、②より神津島滞在時間を延ばすことができる。

 …といった具合です。これは旅慣れた人向けにはなってしまいますが、運航ダイヤ次第で有効活用できるので、頭の片隅に入れておくと良いかもしれません。ちなみに先に引用した資料によると、高速ジェット船の冬期就航率は神津島で64%まで落ちる一方、大島では97%と高確率で動くため、その点でも大島乗り継ぎは実用性がありそうです。
 ちなみに往路の場合、東京発・熱海発ともに高速ジェット船よりさるびあ丸の方が早く神津島に着くため、大島での乗り継ぎはできません。また、大島から千葉県館山市の館山港や、下田港の北東に位置する静岡県東伊豆町の稲取港に向かう高速ジェット船もありますが、季節便なので狙って使うのは厳しいと思います。

どこに泊まればいいの?

神津島の宿選び

 スケジュールを立てるうえで、もうひとつ重要なのが宿泊先。夏期を中心に観光が盛んな神津島には様々な宿泊施設がありますが、人口約1,800人の離島だけあって数には限りがあります。交通手段同様、混雑する時期には宿泊施設が空いていないということもあるので、繁忙期に行く場合は早めに予約を取るようにしましょう。
 多くの観光地であれば、「じゃらん」や「楽天トラベル」といった宿泊予約サイトから探すのが一般的ですが、神津島には規模の小さい宿が多く、宿泊予約サイトに掲載されていない宿も多数あります。そこで参考になるのが、神津島観光公社が運営する「神津島ぃこぉやぁ」。小規模な宿を含めてほとんどが掲載されており、オンラインでの予約も可能です。

 神津島自体はそこまで広くはない一方、想像以上に坂道が多いので、宿を選ぶ際に立地は確認するべきでしょう。船や飛行機の発着時刻が限られているため、そこに合わせて送迎をしてくれる宿も多いですが(後述)、滞在中に宿から出歩くことを考えると、前浜(神津島港)を中心とした集落の近くが無難です。ほとんどの宿がその範囲にありますが、少し離れた場所にも点在しているので、きちんと地図で確認してから予約しましょう。
 それから宿の食事についてですが、朝食はつけることをオススメします。島内には朝から開いている商店もありますが、飲食店は基本的に昼からの営業です。夕食については宿で食べるも良し、夜に営業している飲食店で食べるも良し。2泊するようであれば、片方は夕食なしにすると島の食をより楽しめると思います。

 なお、自前でホームページを持っている宿もいくつかあり、このような宿であれば、設備やサービス等について安心して予約できると思います。リストのようなものが無かったため、把握している範囲ではありますが、以下にずらっと並べてしまいますので、参考にしていただければ幸いです。

ホテル神津館:島唯一のホテル。集落の南側高台。
山下旅館 別館:島唯一の温泉宿。集落から少し北に離れた海辺。
島宿 浜の家X(Twitter)で神津島の話に反応する島宿。前浜の目の前。
釣船民宿 吉栄丸:船釣り体験もできる。集落の中にある。
お宿 寿美礼丸:食事が評判の宿。集落の南側の山の麓。
民宿 菊乃屋:登山や星空鑑賞の拠点に。集落の端の山の中。
Oyado&Cafe のら:ランチでも利用可能。多幸湾に近い山の中。
だいじんこ:緑に囲まれ海を見下ろす宿。集落から南に離れた山の中。
シヨウゴロ:ドミトリーのあるゲストハウス。集落の北側。
テラマチ:ゲストハウスだが相部屋にならない。集落の中にある。
まざ~ずあーす:レンタカーがあるゲストハウス。集落北側の山寄り。
Anchor:一棟貸しの宿。集落から少し外れた高台。
ジョイキャンプだいじんこ:集落から少し北に離れたキャンプ場。
多幸湾ファミリーキャンプ場:その名の通り多幸湾のキャンプ場。

みんなの別荘ファミリア

神津島の集落にたたずむ「みんなの別荘ファミリア」。

 TVアニメ『ラブライブ!スーパースター!!』の舞台訪問で神津島を訪ねるならば、作品に登場した「みんなの別荘ファミリア」は気になりますよね。こちらは先述した観光公社のサイトには現在掲載がなく、施設のWebサイトから直接予約することになります。
 みんなの別荘ファミリアは通常の宿泊施設とは異なり、「宿のフリした仲間作りやさん」というコンセプトで運営されています神津島をゆっくりと楽しんでもらうために通常2泊以上(繁忙期は3泊以上)のみ受付、他の宿泊客との交流が生まれるよう同一家族でないグループは3名までなど、宿泊に制約があることに留意しましょう。また、時間に縛られず島を満喫し、島の飲食店を楽しめるよう、夕食はなく朝食のみ提供しています。
 なお、TVアニメに登場した部屋のコンセプトは「Bali × ゆったり島時間」で、予約ページでは「オーシャンビュールーム」が該当します。

1階のカフェバーはドリンク中心だが宿泊客でなくても利用可能。

 1階のカフェバーは共用スペースになっており、昼にはコーヒー、夜にはお酒を楽しむこともできます。2階の客室は個室でゆったりと過ごせますが、朝食時は宿泊客がひとつの卓を囲むなど、宿のような充実したサービス空間というよりは、「みんなの別荘」の文字通り島に家を持った感覚で過ごす場所。決してサービスが薄いという意味ではないのですが、ホテルや旅館とは少し違うということは頭に入れておきましょう。
 オーナーが面白い方で島の魅力も積極的に紹介してくれるので、個人的に満足度が高かったこともあり、神津島を楽しむのであれば非常にオススメしたいのですが、コミュニケーションや他の利用者と顔を合わせることを好まないというような人には不向きかもしれません。自身が好む過ごし方と合っていれば是非、というところです。

宿の送迎をお願いしましょう

TVアニメに登場するのは、島の西側に位置し集落に近い前浜(神津島港)。
多幸湾(三浦漁港)の周囲には漁業関係施設くらいしかない。

 神津島は港が2箇所あり、集落に近い西側の前浜(神津島港)の利用が基本ですが、東側の多幸湾(三浦漁港)に到着することがあります。海の状況により到着港が決まるため、どちらへ着くか分かるのは到着日の朝で、波が高いなどの海上不良の場合(特に西からの季節風が強い秋冬)は多幸湾に到着することが多いです。
 多幸湾の周囲には人家や店がほぼ皆無で、集落までの峠道は標高150mほどあり、歩いて越えようものなら1時間はかかるような場所です。しかしながら、神津島では船の到着は一大イベントであり、朝に行政無線で船の運航状況を放送するほどで、多幸湾到着になっても宿の送迎がきちんと来てくれます。送迎さえ頼めばどちらに着いてしまっても安心ですから、前浜が近いから不要とは判断せず、宿の送迎は予約時に必ずお願いしましょう。
 到着が多幸湾になり得るということは出発も同様ですが、こちらも出発港に合わせて宿が送迎してくれるはずですので、出発日の朝に宿の方に確認しましょう。
 送迎がない宿の場合、多幸湾発着時には村営バスを利用することになります。さるびあ丸の発着時は基本的に臨時便も出して対応していますが、高速ジェット船やフェリーあぜりあの場合は確認できていません。村営バスの時刻表には目を通しておき、乗る船が多幸湾発着になったらどうすれば良いかを想定しておきましょう。

最後に

 そしてもうひとつだけ、スケジュールを立てるうえで気にしておくと良いことをお伝えします。月齢カレンダーを調べ、新月の周辺に訪問することをオススメします。後述しますが、神津島の星空は本当に素晴らしいもので、そんな星空を楽しむのであれば月明かりの影響を受けないようにするのがベスト。街明かりの少ない神津島だからこそですが、月明かりって本当に明るくて、満月だと月明かりだけで道を歩けるんですよ。

 というわけで、以上が神津島訪問のスケジュールを立てる上で気にするポイントでした。アクセスも宿も限られる離島ゆえに色々考えなければいけませんが、とにかくスケジューリングを乗り越えて訪問してほしいと思い、それなりに詳しく書いてみました。旅行は計画が一番大事、せっかくの神津島訪問を悔いのないようにして欲しいですからね。
 長くなってしまったのでここで一区切りとし、次は皆さんお待ちかねの神津島の魅力についてご紹介します。

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