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平安名すみれについて考えて語るだけのギャラクシー☆彡エントリ(中編)

この金髪の子かわいいですね。

 さて、私の愛するスクールアイドル・平安名すみれについて考え好きに語るだけの企画エントリの続きをお届けします。今回はTVアニメ第4話~第8話について書いていきます。前編で書いた内容を前提としますので、まだの方は前編を読んでから戻ってきてくださいね。

深い海の底へ届いた一筋の光、第4話

 ヒロインは遅れてやってくる。ついにここまで出番が非常に少なかったすみれが登場する、1回目の担当回がやってきました。やはりここは考えるべき内容も多いですから、きちんと文量を割いて進めていきます。

グソクムシの少女

「それでは皆さん、それぞれの場所について下さい。」
「は~い!」
「いいね!みんなかわいいよ~!」
「すみれちゃん!よろしくね!」
「…はい!」

第4話「街角ギャラクシー☆彡」

 第4話冒頭、子役時代のすみれのシーン。4人の女の子はお姫様のような格好をしているのに対し、すみれだけはまさかのグソクムシのきぐるみ。そもそもお姫様4人に対しグソクムシってどういう内容の撮影なんだ…というのはさておき、併せて5人なあたりにLiella!のことや第10話の内容を示唆しているようにも見えます。

 ここで第4話ひとつ目の疑問です。単なるおもしろ役であれば他に何でも良かったようにも思えますが、どうしてすみれはグソクムシになっているのか。この後もいじられ続けるだけあって、なんとなくそうなったものではないでしょう。

 考えを深めるためグソクムシについてちょいと調べてみました。検索すると基本的にはダイオウグソクムシが出てきますね。もっと小さいオオグソクムシというのもいまして、どうでもいいですが私は食べたこともあります。味的には全然食べられますが、普段は食用にしないのもよく分かる食べづらさでした。殻がすごく硬い。
 スポットライトに憧れているすみれに対し、グソクムシは光の届かない深海の生物であるという点は分かりやすいかと思います。しかし深海生物といってもグソクムシ以外にも色々といるわけですが、どんな深海生物を知っているかと聞かれると案外難しいですよね。よくよく考えたら、グソクムシって深海生物でいちばん有名かもしれません。そうなると単に深海生物のうち知られているものを持ってきた感も拭えませんが、有名ということは人気がある生物でもあるということ。上に引用した記事の冒頭には、グソクムシは「深海生物界のアイドルとして特に注目されています」と書いてあります。

 とはいえ、グソクムシは古くから人気の生物というわけではありません。深海生物はその特殊な生息環境から、人の手で捕獲し飼育するということは容易ではなく、その方法や技術が確立された近年だからこそ人の目に触れるようになってきました。皆さんがグソクムシの名前を耳にするようになったのも最近だと思いますが、実際グソクムシの人気はいつ頃からだったか調べてみると、上に引用した記事は2014年のものですから、ここ10年くらいの話といったところでしょうか。つまるところ、「深海生物界のアイドル」はかなり遅咲きだったと言えます。
 ここまで考えれば分かってきますね。この時のすみれは、まだグソクムシが光の届かない深い海の底にいる状態。ですが地上に出て人気が出る―アイドルとなる日は必ず来るのです。グソクムシという存在は、平安名すみれという少女をあまりにもぴったりと表すものでした。

「くっくっく…。」
「うっ!もう!私ってばいつもこう…。」

第4話「街角ギャラクシー☆彡」

 ゲームセンターでのシーン、すみれはクレーンゲームでダイオウグソクムシのぬいぐるみを獲ろうとしますが、獲れそうなところで落下してしまい結局うまくいきません。すみれがいつもチャンスをものにできていないことが分かります。しかし、ここで流れているサウンドトラックのタイトルは「グソクムシの少女」。すみれ自身がグソクムシであることを考えれば、このシーンにはもうひとつの意味が加わります。いつまでも外=地上に出られず、筐体の中=深海に囚われたままであるということ。コミカルなシーンながらも本当に切ない…。
 それにしても、オーラはともかく「その容姿」で通行人役にぴったりってどういうことや…こんな美少女通行人ホイホイいてたまりますかいな…。

深海から目にした星の光

「ううっ…!何が通行人役よ。エキストラが欲しいなら欲しいって言えばいいのに、紛らわしい!こっちが何のために毎日毎日用もないのにあの通りに…。」
「ん?サササッ…。」
「うう…。ん?」
「サササササ…ふっ!」

第4話「街角ギャラクシー☆彡」

 続いては学校でのシーン。用もないのに毎日竹下通りに…って、第2話で受け身にも見えるとは書いたものの、スカウトされることへの執念が並外れています。そこからかのんと可可を目にして隠れてしまいますが、どうやらすみれは停電を起こしたことを相当に気にしているようです。第1話では(地雷を踏んだのはさておき)あれだけ強気だったすみれですが、自身に弱点ができると何もできなくなってしまうようで、ここでも完璧のメッキが外れると崩れることがよく表れています。
 なんかよく分からないSNSの平安名すみれアカウント、フォロー数39・フォロワー8、いいね5。こんな美少女がSNSやってたらみんなフォローするやろなんでや…フォロワー8のうちの1人は私です(?)。ところでこの39フォローという数字、なんとなく引っかかったのですが、平安名すみれを演じるペイトン尚未さんの好きな数字なんですよね。ペイトンさんの大好きな初音ミクの「39」という理由です。そこから持ってきたのかなあ…と思ったり思わなかったり。
 それはさておき、後に述べるようにすみれ的には実力としては大したことのない2人でしたが、それでもSNSのフォロワーという数字で差がついた形になりました。完璧を目指している自分より足りないものは多いはずなのに、どうして結果に差がついてしまうのか。すみれとしては認めがたいことでしょう。そんな自身には分からない何かを持っていると感じた2人だったからか、ここで立ち去らずかのんと恋のやり取りまですべてを確認しています。こういうところにすみれのアンテナの高さを感じますね。しかし階段を降りる動き…誰が動きまでグソクムシになれと()

「なになに『スクールアイドルとは…学校でアイドル活動を行っている…』、要するにアマチュアみたいなものね。」
「これ、この前の…!あれがスクールアイドルだったのね。これなら…!」

第4話「街角ギャラクシー☆彡」

 ここでも気になったらすぐに調べ、自身にとってチャンスがないかを探っています。そしてようやく、2人がスクールアイドルという存在であることを知ったすみれ。この「これなら…!」というのは、自身の実力からスクールアイドルを甘く見ている面ももちろん含んでいます。その点ラブライブ!シリーズでは珍しいキャラクターだなと思うのですが、前編の第3話分で書いたことを踏まえれば、この言葉に含まれる意味はそれだけなはずがありません。結ヶ丘への入学に至るまで結果が出ず追い詰められたすみれだからこそ、スクールアイドルという新たな舞台には目指しているスポットライトがあるのではないか、スクールアイドルを通して自分自身に足りない何かを掴めるのではないか―深い海の底から星の光を見つけたグソクムシの少女は、そんな一筋の光に必死ですがろうとしているのではないかと私は考えています。第4話のすみれは結構嫌なキャラクターに見えてしまう(実際最初私が観たときもそう思っていました、スクールアイドル好きなので)のですが、当の本人のプライドが異常に高いうえにとにかく素直じゃないため、この部分が表に出てこないんですよね。

その光は掴めなくて、分からなくて

「さっき見てたのよりもずっとすごい!こんな大きいステージで…。」
(中略)
「まさかもともとスクールアイドルを…。」
「え…そういうわけじゃないけど、昔ショウビジネスの世界に…。」
「ショウビジネス…。」
「もしかしてテレビとか…?」
「うん、何回か…。」
「うそ!」
「うわ~!」
「運命デス、これは運命デスよ!可可たちが『ラブライブ!』で優勝するという!」
「まあ確かに『ラブライブ!』優勝チームの動画も見たけど、これなら勝てるかもって。」

第4話「街角ギャラクシー☆彡」

 自身の夢のためか、思い立ったら即行動ということで同好会を訪ねるすみれ。かのんは第1話でナナミ・ヤエ・ココノは既にちゃん付けしていたのに対し、すみれのことは恋同様に「平安名さん」と呼ぶことからも、クラスでは壁を作り続けていたことが分かります。2人とまともに話すのはここが初めてでしょう。
 ひとまずスクールアイドルについて2人から説明を受けますが、「さっき見てたの(=かのんと可可のステージ)よりもずっとすごい!」は普通に畜生発言。ただその後も、見られるとむしろ都合の悪いショウビジネスの話を出したり、見てもいない優勝チームの動画に対して勝てるかもなどと言ったり、明らかに虚勢を張っています。スクールアイドルに本気で可能性を見出したのかもしれないとはいえ、そこに甘んじて属することはここまで完璧を目指してきた自身のプライドが許さないのか、嘘でも絶対的な自信を示してセンターに立とうと目論んでいるというのもあるでしょう。しかし、もしそれだけであれば(すみれの理屈からすれば)圧倒的な実力を見せるだけでも充分ですから、自分には分からない「何か」を持っている2人にとって、すみれが必要とされるのか不安だからというのもあるかもしれません。

「ううう…!納得できないわ。」
「あ…。」
「納得できないったらできないの!どうして!?歌だってダンスだって私、全然負けてないでしょう?」
「それも全部、アピールタイムでみんなに見てもらっての結果だよ。」
「恐らくオーラとか華とか、かのんの方が可可やあなたよりセンターっぽいのデスよ。」
「うっ!う…ううっ!う…ひっ…はぁ…はぁ…はぁ…。…やめる。」
「ええ!?」
「ふん!センターになれないんだったら、こんなところいる意味ないもの。んっ!」

第4話「街角ギャラクシー☆彡」

 下準備はきちんと整えてから、満を持してセンターという本題を切り出しましたが、その「何か」という壁に早くもぶち当たり、すみれの計算は一瞬にして崩れてしまいます。クラスでセンター総選挙をした結果、すみれはまさかの0票。これまではオーディションやスカウトといったプロから、それも多くのスポットライトを浴びるライバルたちが多くいる中で選ばれなかったすみれですが、(人を見る目でいえば素人である)クラスメイト相手にたった3人の中からという条件ですら誰からも目を向けられなかったわけで、この結果は今までよりも遥かに重い否定として刺さったことでしょう。クラスメイトに対する壁の作り方を考えれば支持基盤は皆無だったわけで、当然といえば当然の結果なのですが…かくして完璧を追い求めてきたすみれのプライドは完膚なきまでに潰されることになりました。

「あの…。」
「あ…あっ、はい!」
「駅はどっちでしょう?」
「うっ…ん!スカウトじゃないなら声かけないで!」
(中略)
♬「グソクムシ~グソクムシ~グソクソクソクグソクムシ~」
「へへへへ…。」
「ぷっ!」
「うわっ!」
「かわいい!これがショウビジネス?」
「あっ…うう…。見ぃ~たぁ~なぁ~!」

第4話「街角ギャラクシー☆彡」

 第2話あたりでスカウト待ちに出ているのは、いつまでもやさぐれていても何も起きないだけだとなんとか気持ちを奮い立たせてのことでしょうが、ここでまた完全にやさぐれモードに戻ってしまいました。すみれの「大前提」からすれば、声をかけてきた人にここまでの対応はとらないですからね。スター街道への道のりは狭き門ですが、それよりもハードルとしては低いはずの音楽科の試験、そしてセンター総選挙すらダメだったわけで、こうなってしまうのも無理はないというか…。
 まさしく光を浴びることのない今の自分自身、グソクムシを見て笑うしかないくらいの精神状態。それをかのんに見られたうえに笑われれば怒っても仕方ない…のだがこれはもうヒロインがする顔じゃないぞ…ヒロインズ☆ランウェイはいずこ。しかしその後の「グソクムシのうた」も手を抜かないあたり、すみれは根っからショウビジネスの世界で生きてきた人間なのだなと感じます。

「見たとおりよ。」
「え?」
「私ね、小さい頃からずっと、いろんなオーディション受けてたの。主役に憧れて。子役の頃から一生懸命頑張って…。でも、どんなに頑張っても、いつも最後はどうでもいい脇役。」
「それでスクールアイドルのセンターに…。」
「まあね。アマチュアだし何とかなるんじゃないかって思ったけど、やっぱり無理みたい。」
「それはまだ分からないと思うけど…。」
「いいえ、今回のことで分かった。私はさ、そういう星のもとに生まれているの。どんなに頑張っても、真ん中で輝くことはできない。」

第4話「街角ギャラクシー☆彡」

 本来優しい子でもあるだけあって、申し訳ないことをしたという自覚はかなりあるようで、なんだかんだかのんには飲み物もあげつつ自身の報われなかった過去を打ち明けます。ここで注目したいのは、グループのいちポジションであるセンターになれなかっただけで、スクールアイドル、そして自身の憧れそのものの道すら閉ざしてしまうという点。スクールアイドルそのものに可能性を見出していたという話であればまだしがみついても良さそうなものですが、これは大げさな反応にも見えてしまいます。そこで可可がトドメを刺したこの言葉を思い出しましょう。

「恐らくオーラとか華とか、かのんの方が可可やあなたよりセンターっぽいのデスよ。」

 これまでセンターに憧れて必死に努力してきて、文字通りあらゆることの実力をつけてきたすみれ。認められないたびにさらに努力を繰り返してきたことだと思います。しかしここで投げられたのは「オーラとか華とか」という実力とは異なる概念。それはすみれが使える唯一の武器である「努力」でどうにかできるものではありません。このセンター総選挙は、「あなたの憧れはあなた自身の力では届かない」と、0票という文句なしの満場一致で突きつけてきたわけです。そしてすみれは、それがスクールアイドルに必要なものであることにも気がついている…深い海の底から見た光には決して手が届かないと悟るには充分でした。すみれの言葉通りだと「軽い気持ちでアマチュアの世界に飛び込んだらつまずいた」くらいにも見えてしまうこの話ですが、すみれの心は文字通りへし折られてしまったのです。

消えない憧れを胸に、もう一度

「お昼休みに屋上に来やがれ!デス!」
「聞いてないの?私はもうスクールアイドルは…。」
「いいから来やがれデス!」
(中略)
「はぁ?だから悪かったって言ってるでしょ。」
「スクールアイドルがどれだけ真剣にステージに挑んでいると思っているのデスカ!それをスクールアイドルなら何とかなるなどと…!あ…。」
「可可があれだけ練習したダンスを…。」
「ショウビジネスの世界を甘く見ないで。これくらいはできるの。ただそれでも私にスポットは当たらない。こんなアマチュアな世界でもね。」

第4話「街角ギャラクシー☆彡」

 これを知った可可は怒りますが、本当はスクールアイドルに希望を抱いていたというすみれの本心は知らないまま。すみれが素直じゃないのが発端ではありますが、第10話に至るまでの2人のすれ違いはこの時から始まってしまいます。屋上に呼び出されてからのやり取りは、心をへし折られたすみれにとってはもはや追い討ちのようなもの。ダンスを見せつけたのは最後の抵抗のようにも見えます。

「雨だとさすがに人も少ないわね。」
「続いては、特別賞を受賞したクーカ―の歌です!」
「あ…。」
「やっぱり私じゃ…。」

第4話「街角ギャラクシー☆彡」

 雨の中誰もいない竹下通り、まるで永遠に暗闇が続く深海のような場所で、すみれは届かないと悟ったはずの光をひとりで待ちながら歩いています。それは日頃のルーティーンが抜けていないのもあり、まだ夢を完全に捨てきれていないのもあり…本当に切ないシーンです。そこで輝く星を再び見ることになりますが、深海の底と宇宙の星というのはあまりに残酷なほど遠い距離。その光への憧れは消しきれない一方で、もう手が届くことはないのだとはっきり分かってしまったすみれの仕草に胸が痛みます。

「見~ちゃった~!」
「うっ!?」
「ここにいると思ったんだ。」
「しつこいわよ。」
「実は話があって。平安名すみれさん。ワタクシ、こういう者です。」
「あ…。は?」
「すみれさん。あなたをスカウトに来ました!私たちはスクールアイドルを続けるために、結果を出さなくてはいけません。ショウビジネスの世界での、あなたの知識と技術で協力してほしいんです。」
「だから言ったでしょ!私は…。」
「センターが欲しかったら、奪いにきてよ。」
「えっ。」
「すみれちゃんを見て私思った。センターやってみようって。だから奪いにきてよ。競い合えば、グループもきっと良くなると思うから。」
「ばかにしないで。見たでしょ。これでもショウビジネスの世界にいたのよ?アマチュアの駆け出しに負けるわけない…。」
「じゃあ、試してみてよ。」
「ん~!…いくら出すのよ。」
「え?」
「いくら出すったら出すのよ!スカウトって言うなら当然契約金は必要よ!」
「あるよ。」
「んっ?あ…うちの神社の…。」
「これでどう?」
「これ、全然効かないわよ?」
「そう?」
「だって…。」
「あ…でも、まだ分からないよ。諦めないかぎり、夢が待っているのは、まだずっと先かもしれないんだから。」

第4話「街角ギャラクシー☆彡」

 そこに現れたのは、すみれの気持ちを一番理解することのできるかのん。すみれの憧れはまだ残っていることを見抜いてここに来て、すみれの実力とこれまでの経験をきちんと評価し、素直になれないすみれの退路を潰して火をつけるような言葉を投げかける。まさにこの感覚こそがかのんとすみれの絶妙な間柄を生むもので、今後触れることになりますが、私はLiella!でも随一対等な2人の関係性が大好きなんですよ。かのんとすみれは互いに最大の理解者として今後も共に過ごすこととなります。
 一度は心をへし折られたスクールアイドルに誘われるのですから、すみれはすみれで当然警戒し、契約金などと凄まじく素直じゃないことを言い出します。そこで差し出されたお守りの意味はやはり難しいところですが、いまのところは放送時に第4話の感想で書いた「神社の娘でもあるすみれが積み上げてきたものそのもののこと」で良いかなと思っています。すみれの実家の神社のモデルである穏田神社の御祭神は「美容や技芸上達、夫婦円満、万物創造の神として信仰」されているそうですから、そのお守りというと意味も大きいように感じられますね。積み上げてきたものを胸に走り続ければ、いつか海の底から光あふれる地上へ出ることができる…すみれの新たな物語がここから始まります。
 屋上でのシーンのすみれの笑顔は本当に輝いていて、第2話の「よそ行き笑顔」とは違う、作中で初めてすみれが本心から見せた笑顔でした。すみれの思う完璧な姿にはクールに振る舞うのも含まれていますが、本当のすみれは感情も表情も豊かなんですよね。

 第4話についてだいぶ長々と語ってみました。この話はコミカルに描かれていますし、なにより第一印象だとすみれの嫌な部分が目立ってしまいがちなため、なるべくそれで済まさないように深堀りと理由付けをしながら書いてみました。もしかしたら曲解なのかもしれませんが、そこも含めてこの企画ということで。

新たな船出はひとりじゃない、第5話

 続いては第5話。ここからは千砂都の担当回となりますが、同好会に加入したことによりすみれの出番がグッと増えることになります。気になるセリフやシーン周りについて、ここからも少しずつ考えてみましょう。

「猛暑日だねえ…。」
「水分をこまめにとって屋外での運動は控えましょうって。」
「さすがにそうよね。こんな外で練習はむちゃでしょ。」
(中略)
「どこがデスカ!可可はそもそもこんな不真面目な人が入るのに反対なのデス!」
「不真面目じゃなく、現実的に練習は無理だって言ってるの!」

第5話「パッションアイランド」

 自身の情熱から外での練習を敢行しようとする可可に対し、現実的な目線から無理だと指摘するすみれ。ショウビジネスでの様々な経験があったからか、すみれは全話を通してこのような現実的な思考や冷静な発言が多く見られ、熱量とのバランスをとることでLiella!を裏から支える重要な存在になっていきます。そしてこの現実的な視点は第10話でも深く関わってくることとなります。

「う~ん…音楽科のレッスン室なら…。」
「ほんとデスカ!?」
「でも使わせてもらえないよ、普通科は。」
「ですよね~。」
「音楽科の千砂都が言えば何とかなるんじゃないの?いつも使ってるんでしょ?」
「ナイスアイデア。」
「やめとこう。もしそれで許可が出ても、他の普通科の子に悪いよ。何かこっちがお願いして使わせてもらってるみたいなのって、よくない気がする。同じ学校なのに…。」
「でもそういう学校でしょ?音楽科は特別、みたいな。」

第5話「パッションアイランド」

 案の定やられた可可のクールダウンのためにうちわで扇いでいますが、このような役まわりにもなんやかんや言いつつも従うところに、すみれの根本の真面目な部分や、与えられた仕事をきっちりとこなすショウビジネスで培った感覚が垣間見えますね。後ほど可可と寝床を争うことにもなりますが、そこでも(戦い方はさておき)挑まれた勝負はきちんと受けて立つなど、意外とその辺りは誠実…というかなんというかです。
 また第1話ですみれが音楽科の試験に落ちている説を展開しましたが、ここからもその説が正しいことを感じさせます。最後の音楽科に対する発言、やはりどこかかのんと似た不満混じりなんですよね。「音楽科は特別」という言い回しに、特別を目指して届かなかったモヤモヤが見て取れますね。

「すごい…。」
「スクールアイドルってこんなにレベル高いの?」
「東京代表だからね…。」

第5話「パッションアイランド」

 第4話では虚勢ながらも余裕を見せていましたし、その後も実力という点からかスクールアイドルをアマチュアと言い続けていましたが、いざ実際にSunny Passionのパフォーマンスを前にして驚きを隠せていません。かのんと可可のパフォーマンスに対してはこのような反応がなかったことからも、やはり自身の持っている尺度には非常に敏感なようですね。
 そしてこの後のシーン、Sunny Passionはかのんと可可のパフォーマンスについて力強さが感じ取れなかったことを明かしていますが、もしかしたらこれはすみれの抱いた感想に似ているのかもしれません。第2話で書いた通り、Sunny Passionはすみれの憧れるような存在に近いわけで、そうであるならばすみれと同じような感覚を持ち合わせている可能性も高いでしょう。しかし、すみれの実力は2人のパフォーマンスの欠けている部分を感じるところまでは来ているのですが、はっきりと示すことができていない辺りにSunny Passionの方が上手であると言えますね。すみれとSunny Passionの関わりは第1期時点ではまだ少ないので、その辺りも今後描いてくれると嬉しいなと思います。

「くぅ~…。」
「フフッ。あ…。」
(中略)
「曲と振り付けは出来てるから、今回はみんなとちぃちゃんのこととか書こうかと思ったんだけど…。」
「早くしなさいよ?覚えなきゃいけないんだから。」
「だよね…。可可ちゃんは?」
「爆睡してるわ。起きたら元気になってるでしょ?」
「この先の島も東京なんて、ちょっと信じられないわね。」
「そして、そこでもスクールアイドルを頑張っている人たちがいる。すごいなあ!スクールアイドルって。」

第5話「パッションアイランド」

 神津島に向かう船でのシーン。部屋で爆睡する可可を見つめるすみれは…すみれは…おい平安名何だその顔は!!!!ライバルだらけの環境でスターになるべくずっと努力を重ねてきただけあり、いわゆる高校生らしい生活を捨てて用もない竹下通りに出てスカウト街をしていた辺りからも、これまでずっとたった一人で努力を重ねてきたことでしょう。そんなすみれのそばに初めて気のおけない仲間がいる…そのことはささやかながら、とても幸せなことなのではないかなと思います。そしてこの笑顔はまだ、誰もいない場所でだけ見せられる表情でもあります。
 デッキに出てからのかのんとのやり取りは個人的にお気に入り。もともとスクールアイドルに憧れていた可可に対し、かのんとすみれはスクールアイドルを通して自身の夢を叶えるべく新たな世界へと足を踏み出しました。そんな2人だからこそのフラットな間柄を感じさせる会話、たまらないんですよね。希望を胸にスクールアイドルの世界へと進んでいく2人が非常に印象的なシーンでした。

仲間と共に立つ初ステージ、第6話

 続いても千砂都が中心となる第6話。この回はすみれについてはさらに平和な話が続きますが、登場シーンを少しばかりさらっていきましょう。

「もう~…。」
「いたっ!何なのよもう!」
「おはよう。」
「2人は仲良しだね~。」
「へ?ち…ちがっ…!」

第6話「夢見ていた」

 結局一緒に寝ることになってしまう可可とすみれ。朝チュン。船の時と違い人が来るとやはり素直になれないようで、悠奈に言われてとっさに可可を隠してしまいますが、それ一般的には逆の意味の動きのような気がしてですねえ…() 以前、可可の情けない姿を2人に見せないためみたいな説も見かけたのですが、しれっとフォローに回るタイプなのでそれも十分にありえますね。真実は果たして。

「うう…失敗しマシタ…。」
「何やってんの?うわっ、何よこの黒いの…。」
「お招き頂いたお礼に、今日は可可が夕食を用意することにしたのデス!上海のショーロンポーに、ホンシャオロウに、上海風カニ~。」
「それでこの結果というわけね。」
「時間配分を間違えマシタ…。」
「ハァ…しょうがないわね。」
「えっ、できるのデスカ!?」
「まっ、簡単なものならね。」
(中略)
「あ~ん。ん!?おいしい!これ、全部2人で作ったの!?」
「すごいわ。」
「でも、おいしく感じるのは島の食材が良いからだと思います。ね!」
「えっ!いや、その…。」
「この中華は可可の故郷の料理なんですよ。ね~!」
「う…。可可は作ってないデス。」
「いいから話合わせておきなさい。笑顔で堂々としているのも、ショウビジネスの世界では必要なことなんだから。」
「う~!それはうそつきデス!」
「2人でキッチンに立ったのは本当でしょ!」
「やはりむかつきマス!」
「何よ!あんたの代わりに私が料理してあげたんでしょ!」
「誰も頼んでません!」

第6話「夢見ていた」

 文字通り多才なすみれですが、ここに来て料理の腕まで持ち合わせていることが明らかになります。なんだかんだ世話を焼くところがとにかく大好きなので、すみれの「しょうがないわね」を国宝に指定しました。「簡単なものならね」と言うには良すぎる手際、そして喫茶店の娘であるかのんすらも唸らせる腕前、恐るべし。料理といえばテレビで見かけることも多いテーマですから、これを身に付けているのもすみれなりの完璧でしょうし、料理からスポットライトへの道を探ったこともあるのでしょうか。#平安名すみれが作った中華料理フルコースをソロで完食したい同好会、部員募集中です(ソロとは?)。
 
ここは2人にいいところを見せようとした可可へのフォローなのか、振り回されっぱなしだったことへのささやかな反撃なのか…。そんな場面でも堂々とした対応をきちんと示し、もてなされる側に腕前を自慢するようなことがないあたりに、これまたすみれのショウビジネス的感覚を感じることができます。

 この話は出番が少ないながら、ステージが終わった後、みんなで抱き合うシーンの笑顔が非常に印象的でした。初めてできた仲間と共に作り上げた初めてのステージ。センターではないとはいえステージ上で初めて注目を浴びることは、すみれにとって本当に夢のようだったのでしょう。サブタイトルの「夢見ていた」は千砂都のことはもちろん、すみれのことも指しているのではないかなと思っています。以前は一人でスポットライトを浴びることに執着していましたが、スクールアイドルを通して確実に新たな気持ちがすみれの中に芽生えています。

輝く真ん中はまだ遠くて、第7話

 ここからは恋の話となる第7話。ここも主役を張るわけではないとはいえ他の話と違い、スクールアイドルとしてではない普段の学校でのすみれについて見られる貴重な話だなとも思います。そしてその様子は…。

「だったらちぃちゃんか可可ちゃんが立候補してもいいでしょ~!」
「しょうがないわねったらしょうがないわね。」
「あ…。」
「フッフッフッフッ…。ショウビジネスの世界に生きてきたこの私が、その力を発揮して…。」
「かのんお願いシマス!」
「かのんちゃん!」
「嫌だ~!」
「ギャラクシー!」

第7話「決戦!生徒会長選」

 こちらも国宝いただきました。しかし可可はともかく千砂都にも雑な扱いを受ける辺りがすみれの立場を表しているというかなんというか…第4話のセンター総選挙の結果を見ればこの件に関しては無理もない。それにしてもギャラクシーのズッコケっぷりが最高ですね。ショウビジネスといってもバラエティ方面までいけてしまうとはさすがだなー(?)

「フフフッ、つまり葉月恋を倒せば、この学校の頂点に立てるというわけね。」
(中略)
「それよ!普通科の生徒は音楽科の3倍!その票をこっちに持ってこれれば…。イッヒッヒッヒッヒッ…。」
(中略)
「ざ…ざ…惨敗!なんでったらなんで~!?」
「当然ですね。」
「じゃかましい!うう~うわああ~!」

第7話「決戦!生徒会長選」

 計算高く勝機をきちんと捉えてつかもうとするタイプなのですが…あ、この人何も学んでない。地盤なしで実力で戦おうとするのはある意味清々しいのですが…不正のペナルティ抜きにしても見事に返り討ちに遭いました。スクールアイドルとしては輝き始めたすみれながら、第4話と変わらず学校のみんなから選ばれることはありません。物事の中心に立つような役割はまだまだ遠いようで、そしてこれがまた第10話まで続いてしまうわけですが…。
 ところでこの生徒会長選挙の話、すみれがダルマをきちんと用意しているのがすごく好きなんですよね。人一倍流行などに敏感なタイプではありますが、神社の娘らしく伝統や格式といったものを重んじる姿勢もすみれの魅力だと思います。

「クークックックック…。抗議より手っとり早い方法があるわ。リコールよ!」
「リコール?」
「そう!成立すれば公約違反で現生徒会長は解任。そしてやり直しの選挙の末にこの私が…。」
「かのんが生徒会長に!」
「ギャラ?」
「私!?」
「かのんちゃん立候補するの!?」
「ええ!?」
「応援するよ!」
「私たち、かのんちゃんがいいんじゃないかって話してたんだ!」
「うんうん!」
「いやないないない、そんな話全然ない!ほら、私なんて全然目立たないし~…。」
「あんたそれ、嫌われるタイプよ。」

第7話「決戦!生徒会長選」

 荒れた事態に対してリコールという手段を提案するも、結局はかのんに話を持っていかれてしまうすみれ。適切な戦略を立てる能力まではあるはずなので、本当どれだけクラスで人望がないのか…。こういうおいしい部分だけ持っていかれてしまう辺りにも、第4話の「私ってばいつもこう…。」のセリフを思い出してしまいます。このような積み重ねがじわりとすみれを追い詰めていく部分もあるのでしょうか。

 その後の葉月家でチビから逃げるシーンなど、対処法を考えつつ仲間を引っ張るような立場につく場面もありましたが、全体的には目立つ表でなく裏方としてなら適切に立ち回れることが多く見られます。当の本人もそれを自覚してきたのか、第8話ではまた特徴的な行動が表れることとなります。

みんなと共に想いを背負って、第8話

 第2部最後の話となる、全員集合回の第8話。この話はすみれの性格的なものがよく出た回だなと思います。

「じゃあ、音楽科だけで学園祭を行うっていうのも?」
「多分、入学希望者が少なかったんじゃないかなあ。」
「優秀な音楽科だけの方が注目を集められる。」
「苦肉の策ってこと?」
「痛いデス!」
「そんなだから普通科がなめられるのよ!」

第8話「結ばれる想い」

 ここで語気が一番強いのはすみれですが、第1話で書いた仮定が正しければ、恋が話した事情を知ろうとも納得はできないはずです。ここまで努力して実力をつけてきた自分自身が普通科にいるのに、それを軽んじられているように感じるわけですから。音楽科に対して複雑な思いを抱いているはずだというのは第5話で書きましたし、この後にも「もともとみんな感じていたからね、音楽科と普通科の溝。」というセリフがありました。生徒会長選挙に立候補するというのも、割と本気でそこに一石を投じたかったのかもしれません。

「思ったより当たりが強い。」
「わがまま言ってるのは普通科の子たちなんじゃない?」
「あはは…。」
「何圧倒されてんのよ。」
「だってぇ~!」
(中略)
「大体、なんで生徒会長の肩持つの?」
「そうだよ!学園祭でライブやりたいとか言っても、絶対に反対されるよ?」
「おバカ!同じこと繰り返してどうする!」
「だったらすみれちゃん言ってよ!」
「………」

第8話「結ばれる想い」

 生徒たちの説得を図るこのシーン、おそらくすみれが戦略を練ってかのんに話す役割を投げています。アウェーの音楽科と異なりホームの普通科ではすみれが隠れており、自身は出ずに人望の厚いかのんに任せるほうが良いという判断を下していますね。助けを求めても出ていかない辺りに、2回の選挙を経験して自身の学校内での立ち位置を理解してきたようです。グループの参謀ポジションとして力を発揮するすみれの賢さを感じる反面、どことなく切ないような気もしてしまいます。

「私、恋ちゃんと一緒にスクールアイドルとして歌いたい。この学校のために…いや…この場所で作られた、たくさんの想いのために!」
「ん…。」
「あっ!」
「大丈夫!できるよ!」
「素直じゃないわね。」

第8話「結ばれる想い」

 恋が自身のこれまでの行いから加入をためらうシーン。もうね、本当に面白い。どう考えてもLiella!のなかで一番素直じゃない平安名にだけは言われたくないやろが~~~~い!!!!

「恋ちゃん、センターやってみない?」
「え?」
「この学校の初めての学園祭だよ?」
「それはそうですが…。」
「それに、私が歌ってほしいんだ。恋ちゃんに。」
「私も賛成かな。」
「可可もいいと思います!」
「私はセンターをやるのは、もっと大きなステージって決めているから。」

第8話「結ばれる想い」

 現実時間でわずか1分半の間に特大ブーメランを投げるすみれ。即落ち2コマ。もはや千砂都も苦笑いするしかない…。第8話、めちゃくちゃいい話なのですがここだけで無限に笑えます。

 恋の加入のシーンでは学校前を右から左に流れる風が流れましたが、第1話でも同じ風が吹いていて、第10話でも象徴的な表現になります。結ばれた想いを受け継いで立つこととなった結ヶ丘女子高等学校スクールアイドルですが、その中ですみれは…。

 第4話のせいで前編よりかなり長くなってしまいましたが、第8話にて中編も以上となります。続いては第9話、そして伝説の第10話を掘り下げつつ1期完結まで向かっていきます。よろしければ後編もお付き合いください。

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