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消えたバンチングの魔法


はじめに

みなさん、こんにちは。
今回はポーカーにおける隠れたダイナミクスである"バンチングエフェクト"について、私が常々気になっていた点を記事にしたいと思います。

バンチングエフェクトとは

バンチングエフェクトについてご存じない方に簡単に説明します。
バンチングエフェクトとは、ポーカーなどにおいて、プレイヤーが特定のカードを捨てることによってデッキの残りのカード構成が変わる効果を指します。具体的には、プレイヤーがハイカードを保持しやすく、ローカードを捨てやすい傾向にあるため、ゲームが進むにつれてデッキにはハイカードが比較的多く残されるという現象です。

バンチングエフェクトの影響

例えば、9人テーブル(100bb,レーキなし,0.1bbアンティ)でUTGからBTNまでがフォールドし、SBのあなたにアクションが回ってきた場合を考えてみましょう。一見、全てのカードが均等に配られていると考えがちですが、実際にはそうではありません。アーリーポジションのプレイヤーがローカードをフォールドする可能性が高いため、残されたカード構成には偏りが生じています。

以下に、バンチング調整後のレンジを示します。

(画像は次の記事から引用: "Visualizing the bunching effect - Blog - HoldemResources.net")

この状況では、残されたカードの中にはローカードが少なく、ハイカードが多く残っています。つまり、SBでローカード2枚を持っている場合とハイカード2枚を持っている場合では、後続のストリートでハンドがヒットする確率が明確に異なるということです。

バンチングの効果

バンチング効果は、無視できるものから非常に顕著なものまで様々ですが、特にオープンレンジが広く、多くのプレイヤーがフォールドした状況では、この効果は大きくなります。

例えば、ライブポーカーにおけるブラインドヘッズは、この効果が顕著になると考えます。ライブポーカーではオープンレンジが広く、リンプを含めるとSBまでフォールドで回ることはほとんどありません。そのような状況での残されたカードデッキは、均等にカードが残っているとは言えないでしょう。

しかし、ブラインドヘッズを学ぶ際にはGTOWizardやPioSOLVERなどのツールを使うことになりますが、これらはバンチングエフェクトを一切考慮しない、均等にカードが配られるという前提で計算してます。

バンチングの効果とソルバーの矛盾点

GTOWizardは、プリフロップ計算にMonkerSolverを使用し、ポストフロップ計算にはPioSOLVER(正確にはJesolver)を用います。MonkerSolverはバンチングエフェクトを考慮していますが、PioSOLVERはその点を考慮していません。※MonkerSolverにおけるバンチングの考慮については最後に記載します。

MonkerSolverはハンドをバケット化し、ターンとリバーをマージするなど多くの抽象化を行っているとともに、EVを保証しない戦略の計算ツールではあるものの、バンチングエフェクトについては考慮されています。

つまり多くの人はバンチングを考慮したプリフロップレンジをヘッズアップソルバーに持ち込み、バンチングの魔法が消えた不可解な計算を行っていることになります。

この例でいうと52枚のトランプからローカードを多く含むであろう14枚が除かれた38枚のトランプでゲームを進めるという前提で計算されたプリフロップを使用し、その後再び「52枚の新品のカード」を使って後のストリートを計算するという矛盾を抱えています。

この計算が無意味であるわけではありません。現時点でのソリューション学習方法として、これがベストプラクティスとも考えられます。しかし、ユーザーはソリューションの計算がこのような矛盾を含む可能性があることを認識し、理解することが必要です。

特にライブポーカーでは、ソリューションと大きく異なるプレイが多いですが、ソリューションから得られた知見は戦略を構築する上で非常に重要です。ソリューションとライブポーカーとのギャップに比べれば、バンチングは誤差の範囲内と言えるでしょう。

バンチングエフェクトの具体的な効果

それではバンチングの魔法は具体的にどのような効果があるのでしょうか。

・ハイカードの価値を上げる

残されたカードにハイカードが多いため、ハイカードがヒットする頻度が上がり、相対的にハイカードの価値が上がります。

・ポケットペアの価値が下がる

残されたカードにハイカードが多いため、ボードにハイカードが出現しやすく、ポケットペアの価値が下がります。

・ローコネクトカードの価値が下がる

ボードにハイカードが多く出現するため、ローカードがヒットする確率や、ローコネクトハンドの出現確率が下がり、相対的にこれらのハンドの価値が下がります。

結論

バンチングはEVや戦略頻度に至るまで、全てに影響を与えます。一般的にはバンチングはハイカードの価値を上げ、ローカードの価値を下げます。バンチング効果があるレンジは、そうでないレンジよりもタイトになる傾向があります。

私の見解では、バンチングエフェクトは重要な要素であり、状況によってはフロップ以降のプレイにおいても、その効果を無視することはできません。バンチングエフェクトは、ポーカー戦略を深く理解し、より高度なレベルでゲームをプレイする上で欠かせない要素です。

以上で「消えたバンチングの魔法」についての説明を終えます。この記事が、バンチングエフェクトの理解とその戦略への応用に役立つことを願っています。

参考

MonkerSolverにおけるバンチングエフェクトについての公式見解




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