【おはなし】べこクイーン鉄塔 #毎週ショートショートnote
彼女は若いころには伝説の踊り子と言われたポールダンサーだった。
東北出身の母と、あのロックバンドが大好きだった父。それが名前の由来。
筋肉質だけどしなやかな身体と、たわわな乳房。衣装は赤いドレスとその中に着けた真っ赤なビキニ。
街に建てられた鉄塔の中心にポールを下ろした。
彼女が大通りを鉄塔へ向かって歩きだすと、いつの間にか鉄塔の周りに人が集まり、野営劇場が誕生した。
かつては酔って街を荒らしていた野良猫たちがネコクインテットを結成して入場曲を歌う。
曲はもちろんあのロックバンドの曲。
観客も足踏みと拍手で演奏に加わる。
鉄塔を包む熱気に彼女は体の中心が熱くてたまらないとでも言うように、ドレスを脱ぎ捨てポールを掴む…。
月日が経ち、野営劇場のスターはタイガークイーン、ラビットクイーン、ドラゴンクイーンと受け継がれていった。
その鉄塔はべこクイーン鉄塔と呼ばれ、なぜか錆びることも朽ちることも無く、艶をおびて輝き続けていた。
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今週も、たらはかにさんの企画に参加!
今回は裏お題に挑戦です。
いつもありがとうございます!