【おはなし】鏡の中のPrince #03
『ウサギさん!』
「え?……アオイ君?……」
こちらを振り返る彼女の姿に、ドキンっと胸が振動するのが分かった…
「アオイ君…なんでここに?」
『友達と飲んでてさ 今帰り』
「そうなんだ 偶然だね」
『隣座ってもいい?』
「うん。どうぞ」
『同窓会どうだった?』
「ふふっ……ヘアスタイルも凄く好評でさ…たくさんほめられちゃった ありがとアオイ君」
『そっか…良かった ほんとによく似合ってるもんな…』
そう言ってこちらに目を向けたアオイ君と視線が合ったけど、恥ずかしくてそれ以上目を合わせていられない
『まだ時間あるかな?いっぱいだけ付き合ってくれない?』
突然の誘いが嬉しくて、でもドキドキがさらに加速して息をしているのもちょっとつらい
こっそり深呼吸をしてから答える
「うん いいよ」
2人で入ったのは落ち着いたバー
カウンターに並んですわる
思いのほかイスが近いのか、2人の肩が触れ合う距離で緊張が増す
注文した飲み物が目の前に置かれて、初めての乾杯をした
私は緊張を隠すように同窓会での様子をまくし立てる
皆に彼氏ができたと勘ぐられたこと、同級生の男の子に誘われたことまで…
その時ほんの少しアオイ君の表情が変わった気がしたけど、すぐにニコニコと笑顔で
『オレの腕も大したものだね』なんて笑ってるから特に気にしなかった
いっぱいだけって言ってたんだけど、話が盛り上がってアオイ君は3.4杯飲んだかな?
私が見てもだんだん目が座ってくるのが分かる
最後のグラスを空ける頃には、カウンターの上に頬を乗せ、半開きの目で私を捉えていた
『…オレ、やっぱり好きだわ…』
「え?…あーこの髪型ね アオイ君の好みだもんね 私の顔じゃまだよね……こっち向いてるよ」へへっっ
そう言って顔を反対に向けた私の肩を、アオイ君はツンツンとした
驚いて彼の方を見ると、んーん…と首を振ってる
『違うよ…好きなのは、ウサギさんの事 オレ、頭の中がウサギさんでいっぱいでさ…参っちゃうよ…』
「え…?」
状況が呑み込めない 今まで追うばかりだったアオイ君の口から信じられない言葉が発せられてる
混乱する私に彼の言葉は続く
『オレさぁ 今日のヘアアレンジ失敗してるわ…』
「なんで?」
『ウサギさん素敵すぎるからオレ変になりそうだよ…』
一気に顔が熱くなるのがわかる
「あのね…私もアオイ君の事…出会ったころから…」
そう言いかけると、彼は私の顔の前に手のひらを出した
『ウサギさん今は言わないで…これ以上、今日は無理だからっっ 我慢できなくなるっっ!駅まで送っていく!』
「う……うん…」 すごい勢いに負けて店を出た
駅までの道のり、アオイ君が口を開く
『ウサギさん オレ、明日夕方まで時間あるんだけど…会えないかな?』
「え?…いいの?」
『うん…会いたい…』
そういうと、自然に手を差し出してきて、私はそっと自分の手を重ねた
しっかりと手をつないで駅までの道のりを歩く2人
暖かい春の夜風に包まれて、明日からの2人の時間を思い描く
アオイ君は鏡から飛び出して、私の横でほほ笑んでいた
ここまでお付き合い頂きありがとうございました
数年前に書いた妄想話を掘り起こしてまいりました
投稿するにあたりもう一度読み直したり書き直したり…
note街での皆様の素敵な文章で多少は目が肥えたのか自分の書いたお話の未熟さに心が折れそうになりました
それでもスタートしてしまったからには最後まで書かねばなりませぬ
まだまだ力不足な文章ではありますが、楽しかったので、修行を重ねてまた投稿できれば嬉しいです
そして、先日の全裸小説シリーズにてキラーパスブーメランを受けたにもかかわらず男前に打ち返しためーさん、そしてその後にとても嬉しいウサギさんとプレゼントを届けてくれたくろがねさん、そしていつも読んでいただいている皆様に最大の愛と感謝とリスペクトを!