7ガツ18ニチ

その日母は友人と食事をする事になっていた。
そこでお酒を呑むらしく「隣の市まで車を出して欲しい」と頼まれていた。

それが彼と会う始まりだった。

「えぇ、まぁ良いけど。」
食事場所まで車で20分。今日は土曜日。明日は成人式の打ち合わせだし出来れば今日は出掛けたくない。送りのためだけにわざわざ部屋着から普段服に着替えるのもだるい。

時刻は12時。あと6時間ほどしたら家を出なくてはいけない。そこで私はTwitterを開きこう呟いた。

「今日、〇〇市で一緒にご飯食べてくれる人いたら連絡ください」
だるいならほかの予定を作ってしまえ。そうすれば一石二鳥だ。

まるで誰でも大歓迎という言い方をしているが、本心は全く違った。私には気になる人がいた。

以前DMでほんのばかりの会話をした男性がなんとなく気になっていた。本当になんとなくだった。

「ご飯行きたいです!!」

お!?!?DM来た!……と思ったら以前ちん凸してきた男。お前じゃねぇ。却下!

「ぷりんちゃん!ご飯行きたいです笑」

お?……以前めちゃくちゃアプローチしてきた下心丸出しの男だった。笑 がだるさを醸し出している。(ぷりんちゃんは前作に続き、当時私が使っていたアカウント名です。)
そもそもこの人は隣の県の人だった。おめぇ、夕飯のためにわざわざこっち来るんか?!却下!

「なんか私無謀な事してるな」
残念ボーイ×2の連絡を横目に私はゲンナリしていた。

すると

「ご飯って何時からです?」

気になる彼からのDMだった。速攻返事した。

かなりツンデレな言い方をしてしまった。
自分の可愛げのなさが出てしまったがまあ良い。

急に緊張してきた。気になる人との食事なんていつぶりだろう。妙な高揚感と緊張感でいっぱいの私はいそいそと支度を始めた。

母「どっか行くの?」
私「お母さん送ったあと、ちょっとご飯食べてくる」

瞬間私は思った。
「もし彼と付き合うなんてことがあった場合、今から母親にこのことを話しておけば、応援されるんじゃないか?応援されれば、お泊まりも許されるんじゃないか?」と。

人は後日談をまとめて話されるより、逐一リアルタイムで話を聞かされる方が臨場感が増し、聞く側もワクワクするのだ。これは私の会話テクの1つである。

「あのね、今日会う人、初めて会う人なの」
「え?大丈夫なの?」
「フォロワーさんでね、ある程度やり取りしてて相手の顔もなんとなく分かってるんだ。ちょっとその人のこと気になってる。」
「ふうん。今の時代はすごいねぇ。」

第一関門クリア!!あとは気楽に行くだけだ。
母を食事場所に送り、約束のお店に向かう。

異常にドキドキする。
呼吸が少々苦しい。
何故SNSの知り合いと初めて会う時、人は妙に緊張するのだろう。不慣れなせいだろうか。

服装は変じゃないだろうか。
あれ私息臭くないかな?
取り返しのつかない事ばかり思い浮かびながらとうとうお店についてしまった。
どうしよう。
ええい知らん知らん!私は美少女!私は美少女!!!!ああしゃらくせェドキドキする!!!!

コンコン

自分に美少女の暗示を掛けているさなか窓ガラスをノックする音が。

車を出ると爽やかなお兄さんが「ぷりんちゃん、はじめまして」と声を掛けてきた。

ビビっと来た。

初めての感情だった。このビビっとはなんなのか。

私「もしかして緊張してます?笑」
自分だって緊張しているのに「別に慣れてますよ感」を謎に出してしまった。
彼「そりゃもちろん……めっちゃ緊張してます」

可愛い〜〜〜イケメンの緊張可愛い〜〜〜

彼とは仕事の話、兄弟の話、住んでいる所の話、恋愛の話など色々した。
会話をする中で分かったのはこれだった
・どこだか分からないが大手に務めている
・会社が出しているマンションに暮らしている
・福岡の大学卒
・ショートヘアフェチ
・兄弟はいない
・私と同じ技術職
・今までの恋愛は基本2〜3年続いた
・中高で陸上をしていてかなり良い成績を残した
・大学時代はギターサークルと国際交流サークル
みたいなものに入っていてよく外国人と話していた
・とにかく私のショートヘアが今まで見てきたショートで1番似合っている。
・マジで似合ってる。可愛い。
・小顔で丸顔が1番似合う。

彼は緊張しまくっていて、とにかく彼自身の話をしていた。最後は怒涛の褒め褒めタイムで笑ってしまった。
ちょっと意地悪に「めっちゃ自分の話しますね?」とからかったら焦って「……ハッごめん、緊張すると話続ける癖あって、、」と謝ってきたのも好印象だった。
女に手馴れた感じが私は苦手なのだ。
食事が終わる頃には彼の基本情報はほとんど知り尽くしていた。

「この後どうする?」
「もう少しゆっくり話したいですね」
という会話からホテルに誘われちゃったらどうしよ……と心配したのも束の間

「夜景見に行かない?」
お腹いっぱいの彼が言う

うわ〜〜好印象〜〜夜景が好きな私は即答していた。
「良いですねぇ!!行きましょう!!」

運転中、気づいた。
もしかして福岡にいたってことは、博多弁話せるのでは、、?方言フェチの私はいても立ってもいられなかった。

「あの……もしかして博多弁話せるんですか?」
「話すよ、今は緊張してて出ないけど」

はいきたーーーーーーーーーーー。

なんだこの人???食事の時から思ってたけどスペックが異常じゃないか???
しかも話が尽きない。初めて会った人とはいえこんなに沈黙が無いことあるだろうか。
「ぷりんちゃん、ツイートではあんなやばい性癖の話してるのに、実際話すと全然そんな感じしないね」と言われ中身詐欺と思われそうだったため、そこからは性癖の話もした。
初対面の人に性癖の話をするなんてかなりぶっ飛んでいる。けど性癖を語り合うのもめちゃくちゃ楽しかった。

夜景を見てる最中も楽しかった。ただ、楽しすぎて時間を忘れてしまっていた。
駅に着いた時には彼の終電が行ってしまった。

「すみません…私が時間に間に合わせられなかったせいで……」
「全然かまんよ、明日休みやしその辺の快活とかカラオケで始発待つよ」
「え、それは申し訳なさすぎます!じゃあカラオケ私もちょっとだけ付き合います!」
「いやいや、眠くなっちゃうよ」
「眠くなったら帰ります!」
「いやいや、親御さんとか心配するし……」
「今友達と合流してカラオケ行くってLINEしました!」
「あ、え、う、本当にいいの……?じゃあ……有難く……」
なんとなく彼の歌が聞いてみたかったのと、もっと話がしたかった。かなり押しが強い気もしたが、日付が回る頃には満足しているだろうと考え一緒にカラオケに入った。

結局朝まで一緒にいたし
そこで色々あって「これ付き合うな」という所までいった
続きはまた今度

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