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『世界最高のデビデンスでやさしく伝える最新医学で一番正しい アトピーの治し方』_希望と絶望に向き合う本

世界最高のデビデンスでやさしく伝える最新医学で一番正しい アトピーの治し方(2019,大塚篤司(著)/ダイヤモンド社)

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 本書の感想を書くには誰の目線からということをはっきりさせておく必要があるだろう。

 私は17歳の時に再発し、以来ずっと塗り薬を使用している。初期症状は首筋から始まり、今は顔面・首・背中・脇・腕に至る上半身が範囲だ。引っ越しの都合上4つの病院を渡り、使用薬は現在メサデルム/ロコイド、保湿剤はヒルドイド、内用薬としてアレジオン。過去にはプロトピックを使用していたが、現在の医師からメサデルムへ変更された。脱ステロイドは2度ほど行っているが、どちらも症状をひどくして終了。

 なのでこの記事は一人のアトピー患者目線のものである。

患者と家族は2度読め

 まずアトピー治療に関してだけだが、私は医師を基本的に信用していない。病院に行っているのは処方箋がないと薬が入手できないから以外にない。それを踏まえても本書は「必読」と言える。

 医師を信用していない理由は簡単だ。医師からは、一目見て症状を判断し、パッと薬を塗って、じゃあこれこれこういう風に塗ってくださいではまた、以外の対応をされなかったからだ。大抵は5分掛からず終わる。

 4つの病院を渡ったと書いたが、つまりそれは4回初診があったということだ。初診は一番時間が掛かるものだが、それでも10分以上診察室にいたことはない。治る治ると(一応)言われているアトピーを何年も抱えている患者に対して、「あなたの治療方法のここに問題がある」と言った医師はいなかった。

 医師の名誉のため書くと、一目見て判断できることは悪いことではないし、皮膚科には大量に患者が来るから忙しいこと自体はまぁわかる。

 本書を「必読」たらしめる理由はここにある。「医師が診察室で患者に教えるべきだったこと」が書いてある。それは薬の正しい塗り方や薬の強さ、長期治療における病気との付き合い方、そして間違った方法といったものだ。訊いても教えてもらえなかったし、だから自己流で対応してきたし、それしかないと思っていた。

 恥ずかしながら私は本書に記載してあるような「薬の塗り方」自体知らなかった。ならどうやって塗っていたかといえば、医師が身体に塗ってくれる様子を覚えて「こういう感じか」とやっていた。素人なんてその程度だ。

 少し前にtwitterにて「体が硬くて背中に届かないです」「引っ掻き傷があるなら届くよね」「確かに」みたいなやり取りを見たが、届く=適量を塗れるわけではないのだ。

 確かに病気になる=自己責任で解決すべきことなのだとは思う。どれだけ医師が手を尽くそうと患者本人に治す気が無ければ無理だろう。上記のような医師の対応はそれが続いた結果なのかもしれない。患者ではなく顧客としてみてしまう点だ。間違った治療法が蔓延しているのかもしれない。なら正しい知識を得るには医師になるしかなかったのだろうか。

知りたいことがすべて、そして簡潔にまとめてある

 この本の特に良いところは、読むべき箇所と読むべきターゲットが明確にしてあるところだ。各皮膚科院がそれぞれのHPで指南を書いているし、多くの書籍に病気との付き合い方が書いてある。それらをまとめて、必要な部分のみ読めばいいように再構成してあるのが本書だ。

 上の文書で「患者の知識レベルは低い」という例を出したが、本書では必要以上に踏み込んだ説明も省いてあるように思える。

 つまり「症状」と「種類」と「使い方」と「付き合い方」に終始し、「原因」については触れる程度にしてある。患者目線を意識してあるということだ。最終的には「適切な塗り薬」と「保湿」、「よく食ってよく寝る」ことの徹底に行き着くわけだから、このシンプルさは当然なのかもしれない。今は体調を崩して適正体重にだいぶ足りていないが、経験上は太っていた時期が一番肌が良かった。デブは才能なのだなと改めて思う。

 多数の参考資料をもとに、この文面はこの資料を理由にしている、といったところも良い。本記事のように大抵の書籍は1視点から書かれることが多いからだ。自己流で知識を追いかけていた場合も、参照元があるということは低コストで追うことができる。

 だがあまりにも医者不信でいる期間が長すぎた。本書を読んだだけでは信頼できない、直接診てもらう必要がある。

 本書にも記載されているが、アトピーは「死ぬような病気」ではないが「死にたくなる病気」であることは間違いない。その理由をここに書くのはその行為自体が苦しいので省く。

脱ステロイドのきっかけと再使用の理由

 2度あると書いた。つまらない理由だが、せっかくなので書いておく。

 1度目は多分に漏れず、家族からのアドバイスだ。当時言われたことはステロイド系外用薬の長期使用は副腎の機能低下をもたらすから使うなというものだった。半年ほど続けたが、皮膚は硬質化しひび割れが起き、表情を動かすだけでも痛みが出た。

 自己流だろうと知識を持つと、バリアである皮膚を弱くした状態のままにしておくことの方が怖かった。そのまま別の感染症になるリスクが高まるからだ。当時の私は柔道をやっていたので、皮膚を弱くすることは出血しやすいことになる。血の付いた道着を相手に触らせたくもなかった。

 医師からは「アトピーは付き合っていく病気」とも言われていたので、副腎機能が落ちようと使い続けることにした。弱い臓器を持ったことは運命なのだと考えた。明日より今日だ。

 2度目は大したことない、鬱状態で自暴自棄になっていたからだ。戻った理由は本当にそのまま死にかけない状況だったからだ。爛れた顔で横にはなりたくなかった。


余談

 本書では基本的に投薬治療による「改善」を目指している。だが患者としては「根治」したい。おそらくアレルギー患者全体の意見だろう。アレルギー症状が出ることはとても恐ろしいのだ。特に恒常的に晒されるアトピー性皮膚炎や食物関係ではそうだろう。

 自身の経験でも、先天的に持ち合わせたものならともかく、発症していなかった時期をなまじ経験しているからなおさらだ。どこかに根本的原因があって、それを治せば元に戻るのではないかと思ってしまう。だから医師から「ずっと付き合う必要がある」と言われると、「絶対治る/一定期間我慢するだけ」といった民間療法の言葉は甘い誘いに感じてしまう。

 アトピーについて言えば、ベビーブーム以降の急激な増加や暮らす地域による有意な差が報告されていたはずだ。原因として挙げられていたのが、環境の清浄化による人間の耐性値減少だったかな。(田舎ほど少なく、都会ほど多い/途上国ほど少なく、先進国ほど多いというもの)

 まぁ花粉症の場合は、アレルゲンの花粉量自体が年々増えていってるせいで「こんなのアレルギーない人でも症状で出るわ」という状況になってるらしいけども。

 手元の本『寄生虫のひみつ(2009,藤田紘一郎)』には寄生虫罹患率とアレルギー患者数の対応表や寄生虫罹患者のIgE抗体量の違いが説明されている。先のように根治目線から見ると、こういった資料がとても魅力的に思えるわけだ。

 ただし、日本においては「投薬」は認可されていても「投虫」は不認可だから患者に適用することができず、寄生虫研究者は自身の体を使うか症例報告に頼るしかない、というのが昔調べた時の情報だったと思う。また、たとえ投虫できても体内環境の違いで同じ効用が出るか不明ということもあるのだろう。相手は生物なので屋根があれば犬小屋もアパートも同じというわけではないらしい。だからこのアプローチは本書的にはエビデンスレベルが低いことになる。

 こういった根治に対するアプローチ(本書的には保湿のみになることがこの段階に当たる)については将来的に調べていって欲しい。禿げの人が育毛ではなく発毛を望むようなものなのだ。

余談2

同じように患者目線で書かれた本が出るらしいので、そちらも読んでみる。世界中の医学研究を徹底的に比較してわかった 最高のがん治療

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