肩こり持ちの14歳が28歳で整体師になって開業するまでの話。#6
私は普段甘い飲み物を飲みません。
それでもスタバのさくらラテだけは大好きで、春が待ち遠しいシーズンになると、必ず飲みます。
単純に味が好きだからという理由の他に、実は特別な思い入れがあるのです。
私がさくらラテを初めて飲んだ時。
それは『整体師になる』と決めて、初めて臨んだ転職面接の前でした。
今でもあの緊張感を覚えています。
近くのトイレで笑顔が不自然になっていないか、何度も確認したこと。
久々に袖を通したスーツの裾を気にしながら、恐る恐る店舗のドアを開けたこと。
面接が始まったら、私1人に対して、相手は3人もいたこと(笑)
ただでさえ人前で話さなきゃいけないときには緊張して手が震えてしまう人間です。何を話したのかなんて覚えていません。
それでも、経験もないのに、学校に通ったわけでもないのに、『どうして整体師になろうと思ったのか』という質問の答えは覚えています。
自分の手を使って仕事がしたい、と思ったこと。
整体について学びたい、勉強が楽しいと思えたこと。
好きなことを仕事にして、生きていきたいと思ったこと。
うまく話せた手応えはありませんでしたが、その1週間後。
掛かってきた電話の向こうから
『採用です。』
という言葉が飛んできました。
そのとき、「とうとう始まっちゃった…」という恐ろしさで震えました。
スタバのさくらラテは、そんなきっかけの味。
私にとって初心を忘れないための、特別な飲み物なのです。
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実際に働き始めてから少し経ったとき。
興味本位で、何故私が採用になったのかを先輩に尋ねてみたことがあります。
「うん、いい人そうだったんですよね。」
先輩はそう答えました。
なんだ、けっこう普通の理由だな、
と拍子抜けしたのですが
紆余曲折を経て、その先輩と社長と3人で飲む機会がありました。
楽しく笑い話をしながら、からかわれてちょっと憤慨しながら、私はお手洗いに席を立ちました。
すると、焼肉屋さんの薄い壁の向こうから
『来てくれたのが根岸さんで、本当によかったよね』
という社長の声がしたのを聞いてしまいました。
ーーー今までそんな風に、他人から思ってもらったことなんてなかった。
思わずしゃがみ込んで、泣きました。
ここで働かせてもらえて本当によかった。
なにがあっても、この人たちを裏切るようなことはしない、と思ったのです。
そう思ってから約1年後。
私はこの人たちに、独立したい、と話すことになるのでした。
次回からは、そんな、紆余曲折のお話。
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