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研究で興味あること,やりたいこと2024

なんとなく元旦に自分の思考(今考えていること,やりたいこと)を整理しておきたいな,とふと思ったので,折角なのでnoteにまとめてみました!何かコラボできる人がいたら是非,今年は一緒に仕事をしたいですね!

個人的には実験室を飛び出して,色々な社会の実際の現場で揉まれながら仮説を強くしていきたいなと思っています!!


・ロボットが共にいる(一人じゃない)感覚の形成

人に優しいロボットのデザイン 「なんもしない」の心の科学

人間は自分一人の責任で行動している,意思決定をしていると思うと,プレッシャーにより,冒険を避け,保守的な行動をとってしまうことが知られています.個人の自立を賛美しすぎる社会というものは,本当の意味での一人一人の個性が発揮されにくい社会ではないかと自分は考えています.一方,他者と一緒に行動するということは,他者の顔色を窺い,自分の欲望が抑制されてしまう恐れがあります.そこで,常に一緒にいてくれる,責任を分担してくれる感覚を提供してくれる(だけどこちらの意思決定に関与してこない)ロボットパートナーを開発することで,人間を委縮させずに,よりチャレンジングな行動(冒険)に誘える,すなわち個人の個性をより多様に発揮させることができるのではないかと思っています.このように人生の責任を共有している感覚を抱けるロボットを創り出すためには,単に表面的なロボットの見た目や動きを作り込むだけでは不十分で,ロボット自身が人間の変化に歩調を合わせて変化していく必要があると思います.このような人間に併走するロボットの内部学習メカニズムの計算モデルを今後は探求していきたいと思います.最終的には,人間同士ではなかなか容易に到達することができない「共にいる感覚」を人工的に創り出したいと考えています.

【関連文献】
高橋英之. (2022). 人に優しいロボットのデザイン:「なんもしない」 の心の科学. 福村出版.

末光揮一朗, 高橋英之, 伴碧, & 石黒浩. (2023). エージェントと共創した規範による関係性の評価と持続性の検討. In 人工知能学会全国大会論文集 第 37 回 (2023) (pp. 1K4OS11a03-1K4OS11a03). 一般社団法人 人工知能学会.

Minami, A., Takahashi, H., Nakata, Y., Sumioka, H., Ishiguro, H., The Neighbor in My Left Hand: Development and Evaluation of an Integrative Agent System with Two Different Devices., IEEE Access, 2021, 9, 98317-98326.

・ロボットを用いたコミュニティデザイン

ロボットを偶像としたコミュニティ形成

人間の孤独は,自分自身の帰属するコミュニティの喪失が生み出すのではないかと考えています.一方,人間だけで形成するコミュニティというのは,無用なルールによりやりたいことが制約されたり,ムラ化して息苦しい場所になってしまう恐れがあります.そこで二人称的な交流が可能なコミュニケーションロボットを偶像(アイドル)として用いた新しいコミュニティデザインについての研究を行っています.具体的には,人間が自発的に集まり,またそこから自由に去っていくことが可能な偶像ロボットを中心とした緩やかなコミュニティの設計原理について探求していきたいと思っています.例えば,ご当地キャラ(コミュニティの象徴)をロボット化し,人間との二人称的なコミュニケーションを可能にすることで,ロボットが象徴するコミュニティに対する人間の帰属感が変化するかどうかを調べています.また,このような偶像ロボットに必要な対話機能や記憶機能などを,大規模言語モデルなどを用いて開発していきます.様々なアイドルとそれを囲むファンのコミュニティを社会学的,文化人類学的,社会心理学的に分析することで,研究のヒントを得ていきたいとも思っています.

【関連文献】
末光 揮一朗, 伴 碧, 高橋 英之, 石黒 浩, 飯尾 尊優, 井澤 慶人, 染谷 有利奈, ザン ソニア ユーフイ, 雪田 恵子, 西村 祥吾, 堀川 優紀子 & 宮下 敬宏 (2024). アバターの社会的存在感を向上させるガヤロボットの提案 -複合商業施設における予備的検討. In 第206回 ヒューマンコンピュータインタラクション研究会.

ソニア ユーフイ, 末光 揮一朗, 星牟禮 健也, 伴 碧, 高橋 英之, 石川 怜, 馬場 惇 & 石黒 浩 (2024). 複数の"よっともアバター"との交流を通じた帰属感がある空間の構築. In 第206回 ヒューマンコンピュータインタラクション研究会.

・ロボットの背景世界のデザイン

ロボットの背景世界を間接的にデザインする

人間と長期間に渡って併走し続けるロボットをデザインする上で,ロボットが人間にとって魅力的で飽きない存在であり続ける必要があります.しかし,どのように魅力的なロボットの外見や振る舞いをつくったとしても,感覚的な新奇性に頼ったデザインだけでは,やがて人間はロボットに飽きてしまうでしょう.そこで,人間との関係の外側にロボットの独自の世界(バックストーリー)を創り出し,それを持続的に更新し続けることで,人間のロボットに感じる存在感が持続するのではないかと考えています.このようなロボットの独自世界を持続的に生み出す上で,生成AIなどの技術に大きな可能性があるのではないかと考えています.特に,人間自身の物語とロボットの背景世界がどこかで交差することで,人間はロボットの背景世界に対して好奇心を抱き,ロボットに対する高い興味を持続可能なのではないかと考えています.

【関連文献】
Hashikawa, R., Takahashi, H., Yanase, Y. (in press). The Unknown World of My Stuffed Animal -Effects of the presentation of social networks in virtual space on the social presence of stuffed animals-. Psychologia.

大道麻由, 高橋 英之, 伴 碧, 飯尾 尊優, 簗瀬 洋平 & 石黒 浩 (2024). 物語を生きるロボット -対話と大規模言語モデルを用いたロボットのバックストーリーの生成-. In 第206回 ヒューマンコンピュータインタラクション研究会.

・「刺激の喜び」から「文脈の喜び」への価値観のシフト

文脈を重視した価値体系

これはまだ全く手をつけていないネタなのですが,目的や結果に基準を置いた価値体系に疑問があります.このような目的や結果に基準を置いた価値体系は,根源的に物事の価値を人間の個人内の処理(脳内物質など)に還元して考えることにつながります.一方,刺激が足りないから,新たな刺激を求める,のような目的や結果の充足を志向する行動により,刺激の渇望が満たされることは殆どなく,さらなる強い刺激を求める気持ちや,依存を生み出してしまう恐れがあります.満たされない目的を満たすことで幸せになる,という前提が実は間違っているのではないでしょうか?自分は,刺激に注意を向けるのではなく,背後にある文脈の豊かさに注意を向けることで,新しい価値体系の学問がつくれたりしないかな,と妄想していたりします.例えば,子供時代の夏休みの晴れた暑い日に食べたアイスキャンディーのおいしさを,化学物質の摂取とそれに応じて引き起こされた脳内反応に還元してしまうことで,多くの文化的,体験的価値が喪失してしまいます.文脈自体の価値とはどのように心理学や神経科学的に記述できるのか,見えている刺激に囚われがちな我々の心の中で文脈の喜びをロボットなどのテクノロジーを用いて活性化することができないか,そんなことを考えながら研究のアイディアを練っています!特に深層学習などを用いて,多様な文脈をユーザーが言語的に理解できない(還元できない)形で保持,生成することで,文脈の喜びを活性化する技術が開発できるのではないかと考えています!

・内的世界の多様性の可視化とロボットのへの実装

心の世界の多様性とそれに介入するテクノロジー

これは昔から非常に興味があるトピックなのですが,直接目に見えない人間の思考はすごい大きな個人差があり,一人,一人全く異なる脳内世界をもっていることが分かってきています.しかし心の世界の多様性を記述したり,可視化したりする研究はまだ殆ど存在していません.VRやロボットなどのテクノロジーを用いて,人間の心の世界の多様性を明らかにするとともに,人間と同じような内なる思考(とその多様性)をロボットに実装してみたいと思っています!

学生それぞれが自分の心の世界とその差異について語りあった下記の動画はとても興味深いです.

このトピックに興味がある人がいたら,下記の原稿を読んでみてください!

【関連文献】
竹内英梨香, & 高橋英之. (2022). 心の世界の多様性を映像を用いて表現する. 研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション (HCI), 2022(20), 1-4.

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