囲碁未経験の友人に真剣に教えてみた話
囲碁が好きだ。
ルールを覚えたのは小学生のとき。ヒカルの碁にハマった父が囲碁を始めたのがきっかけだった。本格的にのめり込むようになったのは、友人と大会に出るようになった中学生の頃で、白と黒の石が作り出す深淵にすっかり夢中になっていった。囲碁が好きな友人や指導してくれる先生に恵まれ、田舎の公立中学校だったが、中3の時には団体戦で全国大会に入賞したりもした。
高校に入ると、同学年に囲碁部員が1人もいなかったので、同じクラスにいた4人を囲碁部に誘い、一緒に囲碁を楽しんだ。当時は特に意識していなかったが、30人程度のクラスに囲碁部員が5人いるのは変わった光景だったかもしれない。通知表の担任所感の欄には「勉強になかなか本格的に取り組んでくれません。囲碁は頑張っています。」と書いてあった。囲碁を一からはじめた友人達と切磋琢磨した時間は、中学の時とはまた違った楽しさがあった。
前置きが長くなったが、今回は囲碁未経験の友人に囲碁を真剣に教えてみた話をしたい。友人というのは、高3の時のクラスメイトだ。私を含め4人。卒業して15年近くが経過した今でも、よく飲みに行ったり旅行に行ったりする仲である。
私を除いて、3人は大学までスポーツをやっていた体育会系タイプだったこともあり、これまで特に誘うこともなかったのだが、ふと思い立ちLINEで「囲碁をやってみない?」と聞いたところ、「やりたい!」と返ってきたので、「囲碁の体験会」を開催することにした。
囲碁にハマってもらうために
囲碁と接点がなかった友人が次第にハマっていく姿をこれまで何度も目の当たりにしてきた私は、「ひょっとすると3人も囲碁が好きになるかもしれない」と密かに思っていた。そうだ、「囲碁を続けてみたい」と思ってもらえる確率を上げる努力をしてみよう。
「体験会」の設計を考えるにあたって、囲碁に興味を持ってから継続に至るまでのステップを紙に書き出してみる。友人達の顔を思い浮かべながら、書き出したステップをぼんやり眺めているうちに、乗り越えなくてはならない「3つの壁」があることに気がついた。
1. 囲碁開始の壁(囲碁に興味を持つ⇨囲碁をやってみる)
入門者からすると「ちょっと囲碁をやってみたいと思った時に、何からはじめるのが正解かわからない」。これが最初に立ちはだかる「囲碁開始の壁」だ。
「囲碁教室に通ったりオンラインの入門講座を受講したりすれば良いじゃないか」という意見はごもっともなのだが、少し興味がある程度では、なかなかハードルが高い。友人が囲碁教室に通う姿は、現時点ではあまり想像できない。「これさえやっていれば囲碁ができるようになる」と言えるような、気軽な選択肢をこちらが示す必要がありそうだ。
体験会を終える時に、「もっと囲碁をやってみたくなったら、◯◯してみてね」と言うシーンを想像して、設計を考えることにした。
2. 囲碁習得の壁(囲碁をやってみる⇨囲碁ができるようになる)
次の壁は、一言で表すと「囲碁ができるようになったと実感できるまで、モチベーションを保ち続けるのがまあまあ難しい」というものだ。将棋であれば、王を取れば勝ちという基本ルールと駒の動きを覚えることで「将棋ができる」と実感してもらいやすいが、囲碁は「終局」の定義の難しさから、入門者がそう実感できるまでにどうしても時間がかかってしまう。
「囲碁ができるようになった!」と思える成功実感を、できるだけ学び始めの段階で持ってもらうためにはどうすればいいか、考えることにした。
3. 囲碁継続の壁(囲碁ができるようになる⇨囲碁を続ける)
最後は、「囲碁継続の壁」。いくつもの壁を越えて囲碁ができるようになっても、「はい!あとは、みんなそれぞれ頑張って!」となってしまえば、よほど囲碁に熱中していない限り、一人で継続することはできないだろう。友人達同士で楽しみながら継続する仕掛けが必要そうだ。
「3つの壁」を乗り越える体験会の設計
体験会は、この3つの壁を乗り越えられるような設計を意識し、以下の流れで進めることにした。
工夫1. 囲碁入門アプリ「囲碁であそぼ!」の活用
1つ目の「囲碁開始の壁」を乗り越えるために、今回の体験会では、一貫して囲碁入門アプリ「囲碁であそぼ!」を入門用の教材にすることにした。理由は単純明快。囲碁を1から丁寧にわかりやすく教えてくれる素敵アプリだからだ。体験会ではこのアプリ通りに、「基本ルールの説明⇨石取り⇨陣取り」という流れで進行することにした。
そしてここからが重要なポイントだが、体験会の最後に「囲碁であそぼ!」をDLしてもらい、「今日やった内容はこのアプリで全部復習できるので、ぜひやってみて!」と声をかけることにした。「このアプリで勉強しさえすれば、囲碁ができるようになる」と思ってもらうことが狙いだ。
工夫2. 「石取り」による成功実感の醸成
2つ目の「囲碁習得の壁」を乗り越えるために、「石取り」をキラーコンテンツとして位置付けた。石取りであれば、比較的単純なルールですぐに理解することができるし、「石を取る喜び」を味わいながら成功実感を得てもらえると思ったからだ。
「石取りクイズ」で全員に正解してもらて成功体験を積んでもらい、「石取りゲーム」でわいわい盛り上がる。この流れがうまく機能するかが、体験会の成功の鍵を握っている。
工夫3. 友人と一緒に楽しみながら囲碁を続ける仕掛け
最後の「囲碁継続の壁」を乗り越えるために、LINEグループに当日の写真を共有して会を終えることにした。体験会終了後もLINE上で囲碁についてみんなで共有し合える空気感を作り、継続しやすい環境を作ることを心がけた。
この3つの工夫がうまくはまれば、「囲碁であそぼ!」で道に迷いなく囲碁が学べるようになり、「石取り」で囲碁の楽しさや成功実感を得て、友人と楽しみながら囲碁を続けられるようにきっとなる・・・はず・・・!
実際に体験会をやった結果
この設計で体験会をやってみた結果は・・・
「成功!!!」
と言ってもいいのではないだろうか。
「石取りゲーム」は想像以上に盛り上がり、勝ち負けだけでなく「ここどう打てばよかったの?」と局後の質問もたくさん出てきた。
そしてさらに驚いたのが、翌日の話。
あえて自分からはLINEで囲碁の話題は出さないようにしていたが、友人達から次々に「囲碁であそぼ!」の進捗を共有をしてくれた。
「囲碁であそぼ!」の内容に関する質問まで来てさらにびっくり。
ものすごく真面目にやってくれて嬉しくなった。
まとめ
今回何より友人達には楽しんでもらえたようだったので、ほっと一安心した。囲碁をする人としない人の差は紙一重で、きっかけさえあれば囲碁をする人はもっと増えるのだろうなと、改めて感じた出来事であった。
今後友人達が囲碁を続けるかどうかはわからないが、その行く末を見守りながら一緒に楽しめたらいいなと思う。