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一石三鳥?東京の水上交通整備の目的とは

7月24日から8月2日までの平日8日間、東京都で「真夏のらくらく舟旅通勤」という社会実験が始まります。ワーカーの通勤時混雑からの解放を謳う一方、2020年に開催される東京オリンピック期間中の活用についても検討しているとのこと。私は、そんなエンターテイメント性と実用性を兼ね備えた水上交通に興味を持ちました。

2020東京オリパラに向けた陸路以外の選択肢
東京における水路活用が検討される中で、今1番注目されるトピックは2020東京オリンピック・パラリンピック開催時の交通輸送です。大会関係車両や観戦者の移動により、交通渋滞の悪化が予想され問題となっています。その混雑解消の一助とすべく、行政と民間企業による水上交通を利用した実証実験が行われています。

その一つが冒頭で紹介した「真夏のらくらく舟旅通勤」です。東京都の取り組みとして、民間企業8社に運航を委託するという形で実施されています。電車移動と比べて10分程度時間が余分にかかりますが、確実に座れてスマートフォンの充電もできる、快適な通勤スタイルを提供します。

2017年にはヤマト運輸、東京都、東京都公園協会による水上バスでの貨物運搬の実証実験が行われました。観光客の手荷物(スーツケースなど)を宿泊場所などに運搬し、快適な観光を提供するというものです。オリンピック開催時には陸路を避けられる貨物運搬経路としての活用を目指しています。

東京が抱える喫緊の問題に対し、水上交通は実用性のある手段としての可能性を持っています。

東京の「魅力」としての水路
2006(平成18)年、産業労働局により「東京の水辺空間の魅力向上に関する全体構想」が策定されました。策定から約10年の取り組みとして、「人々が集い賑わいあふれる交流空間を創出」、「多様で魅力ある舟運ネットワークを実現」、「美しく潤いある水辺景観を形成」、「誰もが親しめる水との触れ合いの場を創造」の4つをあげています。

大手デベロッパーにより構成される東京インナーハーバー連絡会議という組織はこの動きをオリンピック誘致活動の一環だとし、「東京が最新の都市施設を有する大都市であると同時に、歴史に裏打ちされた伝統や文化もあり、多様な観光資源を持つ成熟した都市であることをもっと積極的にアピールするため」と解説しています。

東京都の舟旅通勤に関する小池知事の会見においてもその意図が垣間見れます。「舟運は、江戸時代からの交通手段。東京の水辺の魅力を実感していただき、古くて新しい交通手段としてよみがえるきっかけになれば」という発言があるのです。

東京の水辺の魅力向上の動きとしては、運河ルネサンスの一環として整備されている天王洲のT.Y.ハーバーのように異国的な景観づくりも行われています。しかし、オリンピックに際してはかつて水の都として繁栄した江戸のイメージを東京のアイデンティティの1つとして確立させることで、「歴史ある国日本」を世界に発信したいという意思が見られます。

「防災」のための水路活用は推進中…課題解決に向けての東京ウォータータクシーの取り組み
東京の水路活用のために「防災船着場」の一部が解放されています。
この防災船着場とは災害発生時に物資や人材、資材を船で輸送するための施設です。1995年に発生した阪神淡路大震災で、災害時の水上交通網の有効性に注目が集まり、行政が整備を進めてきました。

この防災船着場、これまでは平常時には解放されていませんでした。しかし、日常的に使える状態をつくらなくては災害時に本当に有効活用できないのではないかという問題が懸念されています。

その課題の解決を視野に入れ水上交通サービスを展開しているのが東京ウォータータクシー株式会社です。その名の通り、東京湾にて船舶による旅客運送を行う企業です。観光船としてだけでなく、「タクシーサービス」を展開している点が特徴です。

東京ウォータータクシーが同社ホームページでミッションとして掲げているのは「社会インフラ」を目指すというもの。2011年に起きた東日本大震災をきっかけに陸路だけでなく水路の活用の推進に取り組んでいます。その結果、災害時に限らず日常的に水路の利用ができるようにと現在の事業が生まれました。交通や観光のためのサービスを提供しながら、マンション住民と共同での防災訓練や港区との「災害時等における船舶による輸送に関する協定」締結を行い、水上交通の日常および災害発生時の交通手段としての定着を目指しています。

まとめ
東京において水上交通の活用が進められている背景にあるのは、「オリンピック開催時の交通路として水路という選択肢をつくる」、「歴史ある水の都という東京のイメージを発信する」、「災害時の交通手段としての水上交通の実用化を進める」という3点であることがわかりました。特に、2020東京オリンピックに向けた動きであるという印象が強く残りました。水上交通がより実用的なものとして発展すれば、人は楽しく快適に移動でき、東京のイメージアップにつながり、災害時のリスクも減らせるという「一石三鳥」の交通手段となっていくのではないでしょうか。

(アイキャッチ画像:産経ニュースよりhttps://www.sankei.com/life/news/151105/lif1511050041-n1.html)

~反省~
〇今回も今回とて、とても時間がかかりました。最初に想定していた内容では情報が見つからず、路線変更したのも要因の一つです。 

〇レポートの調べものの結果、「・今、何が起きているのか。 ・何が課題なのか。 ・何が注目されているのか。」というものにうまくはめていけなかったという点で苦労しました。事前に持っている知識が無い故の失敗だと思います…



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