大学何年生のときからだったろうか。
気の合ったクラスメート男二人女二人でときどき遊んでいた。
女の子は二人ともとてもかわいいのだけど、それぞれ定まった恋人がいたり、みんなそんなに恋愛体質じゃなかったりで、その4人のうちの誰かと誰かがどうなることもなかった。
最後に会ったのはたぶん4年ぐらい前で、女の子のうちの一人が結婚するというので「わーマジか、おめでとー」という温度でお祝いした。

一昨日、その4人で4年ぶりに集まった。
昼の11時半に池袋駅で待ち合わせ、ベトナム料理を食べ、カフェでコーヒーを飲んだ。
女の子は二人とも一児の母になっていた。
もう一人の男はブラックな働き方をしていた。
お互いの近況や、大学時代の思い出話や、山口メンバーの話を5時間半した。

大学時代のゼミの話になったとき、俺と同じゼミだった女の子が「そういえば私、林くんとゼミのことで軽くバトッたことあったよね」と言った。
俺はすぐさま「あ、それ絶対俺が悪かったわ」と答えた。
その場を丸くおさめようと思って適当に言ったのではなく、本心である。
なぜなら俺はその出来事をほとんど何も覚えていなかったからだ。
ずいぶん前に佐藤雅彦が「便りがないのはよい便り」的な“情報がないという情報”について書いた文章を読んだことがあるが、「自分に都合の悪いことはすぐ忘れる」性質を持つ人間にとって、「相手が覚えていて自分が忘れていること」は必ず自分に都合の悪いことなのである。

結局、そのときの顛末にまで話は広がらず、話題は別に移った。

「これからは年一ぐらいで集まろうよ」と言い合って池袋駅で別れた。
きっと本当にまた会うことがあるだろう。
そしてそのときには俺はまた忘れているのだろう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?