中学受験組が震えてて面白かった話

 私が住んでいる市は、駅から近ければ近いほど裕福な人が住んでいて、高級そうな一軒家が多くて、外車がたくさん止まっている、といった感じになっている。私の家は築60年くらいのベッコベコの木造家屋だが、それでも比較的駅に近いところに住んでいたので、裕福度ランキング上位3位には入りそうな地区の小学校に通っていた。
 
 小学校は、公立小学校だったのにまるで私立みたいだった。誇張して表現すると、親は医者か大学教授の2択で、御三家か私立大学の付属に入るためにSAPIXに通うのが当たり前で、「SAPIXに行けないならenaに通って都立の中高一貫校を目指せばいいじゃな〜い」と学歴アントワネット(誰?)が高笑いするみたいな風潮があった。ちなみに私は公文に通っていたので多分周りからは「公文〜!?ただの監獄やんけw乙ww」と思われていたに違いない(?)。

  小学校の裕福で賢かった人達はみんな有名な私立中学校に進学して行った。私は、駅から遠い地区に住んでいる人達もやって来る公立中学校に進んだ。駅から遠い地区の人達はびっくりするほど柄が悪くてヤンキーとギャルばかりだった。

 私は小学校では真ん中くらいの学力だったのに、中学校は私立に行かなかった絞りカスの集まりだったため、その中ではトップレベルに勉強が出来た。みんな勉強が得意なのが普通だと思っていたが、それは自分がいた小学校が特異的だったということに気づいた。

 中学はギリギリ窓ガラスが割れないくらいの治安だった。校則は厳しかったし、授業中は教室の対角線の端と端のヤツらが大声で会話していたり、ジャステンビーバーをでかい声で歌ってるやつがいたりして、クセの強い問題児ばかりだった。当然ちょこちょこいじめもあったが、当時の自分はいじめよりもカーストに怯えていた覚えがある。ヤンキーやギャルが圧倒的にトップの地位を誇っていて、我々のような陰キャヲタク(決めつけんな)は彼らには全く敵わなかった。とにかくカーストは絶対で、誰かが逆転することは無かったのが印象的だった。みんな容姿も運動能力も学力も民度も裕福度もバラバラで、中学校はこの世の縮図のようなところだった。

 時は流れ、コロナ禍の中、成人式があった。行ってみたら当時のカーストトップだった奴らが、袴を着て、自分の名前がプリントされた扇子を持って、酒瓶を回し飲みしながら叫び散らかしていた。北九州かよ!と突っ込みたくなるくらい、ごく一部が荒れていた。でも、叫んでるヤツらはみんな中学の時からチャラい人達だったので、なんの意外性もなかったし、全然予想できる範囲の事だったので驚かなかった。しかし、そうは行かなかった人達がいた。中学受験組である。

 成人式の会場で中受組がみんな隅で震えながら青ざめていた。彼らは小学校までしか地元を知らなかったため、成人式も当然落ち着いた雰囲気の中、お互いの大学生活についてしっとりと語れるものだと思っていたのに、実際には目の前に北九州があったのだから、とにかくおったまげていたのである。そりゃーそう。しかし、これが地元のリアルな実態なのであり、この世の縮図なのである。温室で育った彼らの、北九州に免疫がない様子が、私にはなんだか面白おかしくて仕方なかった。

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