虚空を掴む

あーガチでなんで生きてるんだろう。
というか、なんで死んでないんだろう。

なんで生まれてしまって、なんで死ねてなくて、生き続けてしまっているんだろう。
もうこんな歳になった。ある時の自分からしたらとっくに死んでいたような歳。有り得ないほどの長生き。

生きることに意味も価値もない。だから生きてきた。
でもそもそも、生きちゃ、生まれちゃ、だめだったじゃないか。

「死んでくれ」「お前なんか産まなければよかった」
頭の中で怒号が蘇る。

自分の育ちを恨む機会はかなり減った。幸せなことだ。でもそんなのは半分嘘で、少なくとも三ヶ月に一度は自分の半生を振り返っては悲嘆に暮れる。三ヶ月に一度。一年に四度。これが一生続くのかと思うと、随分重い足枷をかけられたものだ。

生きるために自分の羽根をもいできた。家族、部活、学校。段々空は高くなっていった。人生ってそんなもんだ。身の丈に合った肩書きに収束する。「あの時に戻って頑張れば」という考えが頭をよぎる度に、その時の生々しい苦しみを思い出して、どうせ無理だったんだろうと結論づける。

自分が恵まれていないとは思わない。でも苦しい。時折他人と自分を比べて羨ましくなる。みんな、酷いこと言われてないから、病気になってないから、上手くいくんだ。私は可哀想なんだなんて言ってみて、慌てて取り消す。もう一度言って、取り消す。もう誰も、この世の誰一人として、自分と同じような辛さを味わって欲しくない。

いつか自分の過去と決別できる日が来るのだろうか。自分なんて生まれて来なければよかったと思う度に、トラウマを抱え続ける自分がダサくて惨めでしょうがなくなる。生きているなら、頑張らなくてはならない。頑張るって何?頑張っている人は、私より恵まれた環境や才能があったから認められているんだ。どうして私は頑張ってると思われないんだろう。

生きていていいと言って欲しい。生まれてきてよかったって言って欲しい。私が吐き出す恨み辛みを、都度受け止めて慰めて欲しい。全てを許して欲しい。もう立ち止まりたい。生きていたくない。いくら楽しく生きたって過去が消えてなくなってくれることがないから。

自分に期待しないことで、少しずつ心が鎮まっていく。代わりに妬み嫉みの地雷原が広がる。塞いだその期待がもし、もし成就していたら。その姿は彼で、彼女で、あなたで、みんなで。あー、なんで?あの時?あの時?あの時?いや、チャンスなんて一度もなかったんだ。鎮めた心が問う。なぜ生きている?

無い。理由なんて無い。死ねないから生きる。寿命を貪っている。


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