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「新しい法律家の役割をリードしていきたいー。」 BIG PICTURE BOARD 齋藤 貴弘

この度、Public Meets Innovationへのアドバイザーとして就任することになりました。

▶︎現職について

弁護士10名ほどの法律事務所でパートナー弁護士をしています。様々なクライアント企業の案件を取り扱っているのですが、最近はいわゆるルールメキングや政策関係の相談も増えています。

そのきっかけとしては、一連の風営法改正、そして観光庁の観光政策にかかわった点が大きいと思います。ダンスをさせる営業を風俗営業から除外し、一定の条件下でナイトエンターテインメントを解禁するという規制緩和にかかわり、また規制緩和後は観光庁と一緒に夜という時間帯をどう活用して新産業を創出するのかという「ナイトタイムエコノミー政策」を進めています。

同じ流れで、ナイトタイムエコノミーを民間ベースでも推し進めるために、NYのエンターテインメント弁護士と一緒に、NYに会社を作ったりもしました。この会社では主に諸外国のエンターテインメントに関するリサーチやコンサルティングといったことを日本の企業や自治体などに対して行なっています。

他にはL.Aのインターネットラジオ“dublab”の日本ブランチを親しい音楽仲間と一緒に立ち上げて、街の色々なロケーションでDJや選曲などもしています。もともと弁護士になる前はバンドをしたりDJをしたりと音楽べったりの生活をしていたこともあり、今はこんな感じで音楽と弁護士のハイブリッドな可能性にチャレンジしている感じです。

イノベーションとルールメイキングは本来セットで考えなければならない関係にあるはず   


▶︎齋藤が考える “イノベーションと政策における課題”

法律が想定していないところで起きるからこそイノベーションなんだと思います。

例えば、シェアリングエコノミーは、これまでサービスの受け手だった消費者をサービスの送り手にしようとするもので、これは既存のサービスを質的に転換する非連続なイノベーションそのものです。

法的には、これまでサービスを提供する事業者を法律で縛って消費者を保護していたのですが、シェアリングエコノミーではこの立て付けが通用しません。

事業者と消費者の垣根をなくすのがシェリングエコノミーの本質なのでこれまでの事業者・消費者の二項対立モデルを前提にしたルールではなく、新しいルールを作らないと社会実装が難しい。法律の想定外の領域で起きるのがイノベーションなのであれば、イノベーションとルールメイキングは本来セットで考えなければならない関係にあるはずです。

これはシェアリングエコノミーに限られません。古くはインターネットと著作権も同様の関係にあったと思います。このイノベーションとルールメイキングをセットで考えるという点に対する意識がまだ低く、また実際の取り組みもまだ少ないように感じます。

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▶︎PMIに賛同した理由

実践ができるチームだと感じたからです。

ルールメイキングやロビイングに関する勉強会は最近弁護士内でも増えており、講師として話をする機会も増えているのですが、具体的アクションになかなか結びつきません。

私は、一連の風営法改正にかかわることで、ルールメイキングに至るプロセスを一通り経験することができました。

現場の課題をどのようにして政策アジェンダに載せるか?課題解決スキームをどう立案するか?どう政治行政に動いてもらうのか?業界をどのようにとりまとめるのか?規制緩和が実現した場合にそれをどのように活用していくべきか?といった点について走りながら考え、試行錯誤を繰り返しました。

これらの経験を風営法やナイトタイムエコノミーといった各論の話にまとめてしまいたくありません。できるだけ幅広い他分野に応用し、ブラッシュアップしていきたいと思っています。イノベーターと官僚、そして法律家からなるPMIは、そのような幅広い領域でルールメイキングの実践ができる座組みだと感じました。

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▶︎PMIに期待すること 

官によるさらに積極的なリーダーシップを期待したい

イノベーティブな官僚は実は多いと感じます。

少なく偏った実体験ですが、官が打ち出すイノベーティブな政策に民がついていけてないケースも少なからずある思います。民間の現場担当者が社内でイノベーティブなことをやろうとしても社内で通せない、あるいはスタートアップがチャレンジしようとしても投資家の顔色を伺ってしまう。民間にはまだそういった風土があるように感じます。

イノベーションを推し進めるために、官によるさらに積極的なリーダーシップを期待したいです。

まだだれも見えていない未来の産業や文化の可能性を示し、そのためのルールメイキングをリードしていく。そんな役割をイノベーターに期待したい。 


未来の風景を見ることができるのがイノベーターなんだと思います。

であれば、その風景の実現を邪魔している法規制にいち早く気づくことができるのもイノベーターであるはずです。新しいルールメイキングは、既存の産業の利益を守ることではなく、未来のイノベーション実装に向けられるべきだと考えます。

まだだれも見えていない未来の産業や文化の可能性を示し、そのためのルールメイキングをリードしていく。そんな役割をイノベーターに期待したいです。

イノベーションを邪魔している課題を法的に整理して、政治や行政に訴え、ルールに落とし込んでいく。それが新しい法律家の役割。 

イノベーションのボトルネックはもはやテクノロジーではなく法規制である、といった指摘があった場合、自分ごととして考えられるのがPMIに関わっている弁護士だと思います。

この主体性といった一番基礎的な部分を軸に、イノベーションを社会実装するための法的な課題を整理し、解決していく。これからの法律家にはそのような役割が求められてきます。

クライアントの主張を法的に構成して裁判所に対して権利を主張していく。これは通常の弁護士が日々行なっている仕事だと思いますが、これと同様にイノベーションを邪魔している課題を法的に整理して、政治や行政に訴え、ルールに落とし込んでいく。

そんな新しい法律家の役割をリードしていきたいです。

PMI BIG PICTURE BOARD 
齋藤 貴弘

2006年に弁護士登録の後、勤務弁護士を経て、2013年に独立。2016年にニューポート法律事務所を開設。法規制対応や政策立案を含むルールメイキング分野にも注力し、夜12時以降の営業が禁止されていたナイトクラブを含むナイトエンターテインメント事業を適法とする風営法の改正をリードする他、外国人受入れに関する政策提言等も行なっている。風営法改正後は、ナイトライフを推進する国会議員、観光庁等から構成されるナイトタイムエコノミー議員連盟の民間アドバイザリーボードの座長を務めるなど、ナイトタイムエコノミー政策の立案に関与している。

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