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胡桃チョコを入れたガラス容器

比呂は甘いものが少し苦手。でもチョコレートは結構好きらしい。量はそんなに食べないんだけど、書類を持ち帰った時なんかは板チョコ食べながら作業してる事が多い。仕事帰りにコンビニに寄って俺のおやつと一緒に買ってくる。

板チョコはいつも同じメーカーのやつで、時々アーモンドチョコを買ったりもしてる。歴史が好きだからメーカー名が元号なのが気に入ってんのかもしれない。味の違いとか判らなそうだし。

そんなある日、比呂が大量の板チョコと素焼き胡桃を買って帰ってきた。「アーモンドがあんだけうまいんだから胡桃だったらヤバいはず」とか言って、鍋でお湯を沸かしながらボウルに板チョコをパキパキ割りながら入れていく。『湯煎』を知ってることに驚いた俺は遠くからスマホで動画を撮り隣の坂口に見せに走った。散々惚気て台所に戻った時には溶かしたチョコに胡桃を入れる作業は終わっていた。

ホーローバットにオーブンシートを敷いて、チョコを流し込む比呂。胡桃の量が場所によって結構偏ってたけれど本人全く気にしてないし美味しそうだからいいかーって俺は思った。チョコにつかないようにラップをしてから冷蔵庫で冷やすことにした。おいしくできるようにちょっとだけ祈ってから扉を閉めた。待ちの時間を利用して比呂はお風呂に入る。そういえば髪が濡れたままだった・・と思って俺はうきうきしながらドライヤーをかけた。

1時間くらいして冷蔵庫からそーっとバッドを取り出すと、なんかそれっぽく胡桃入り板チョコが出来上がっていた。比呂は机にラップを敷いてその上にチョコを置いた。そのラップでチョコを一旦くるんでから手で適当にパキパキ割る比呂。そしてガラスの容器を出してきて、それにチョコを入れて俺に差し出した。

「食べる?」

やったー・・って顔で俺はひとかけらつまむ。小さな声でいただきます。チョコに入った胡桃はなんかアーモンドよりも柔らかくて、でもしっかりと胡桃の味はして噛んでるうちにすうっと消えてく感じ。チョコと胡桃がめっちゃ合ってて本当に美味しかった。

「無くなったらまた作るから自由に食べて。思ったより簡単だった」って比呂が使わなかった分の板チョコや余った胡桃を片付けながら笑った。それ以降冷蔵庫に常備されてる胡桃チョコが俺の楽しみの一つになった。チョコにまつわる比呂との思い出、実は沢山あるから俺もチョコが好き。


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