【バックギャモン】七盤勝負のバックギャモン【桑名七盤勝負】

「桑名七盤勝負」は、三重県桑名市の桑名囲碁将棋サロン庵で生まれた競技です。連珠・どうぶつしょうぎ・オセロ・チェス・9路盤囲碁・将棋・バックギャモンの7種を1列に並べて同時にプレイ、4種目先に取った方が勝ちというゲームで、2017年2月に第1回の大会が行われてから7年、明日(4/20)から2日間、「第9回世界大会」が開催されます。

今回は「桑名七盤勝負」、そしてそこから派生した「オンライン七盤勝負」のなかから、バックギャモンに焦点を絞ってお話ししようと思います。

桑名七盤勝負 ルールの変遷

私は本当の初期、プロトタイプのころから知っています。プロトタイプでは、7つを横一列に並べ、順番関係なくプレイして良く、手番が終わったらコースターを渡して相手の手番であることを示す、という方法がとられました。当時は盤の並ぶ順番も決まっておらず、はっきりしないことがいろいろあったように思います。桑名七盤勝負の第1回大会ではこれをブラッシュアップした「同時対局」というルールが採用されました。競技化するにあたり、いろいろと調整がされています。7競技の並び順はこのときに確立しています。並び順が決まっているということはプレイの順番も決まったことを意味します。また、同時対局では「相手が指した競技のあとをついてすぐ指してよい」というルールが採用されています。したがって長考派にはかなり厳しいルールになっています(すぐ後ろからついていってよい=長考派が相手だと自分の消費時間はほとんどなしで動ける)。その後現在のルールである「エキスパートルール」が採用されるようになり、これがそのまま第2回以降のルールとなり、現在に続いています。持ち時間も、同時対局では30分だったのですが、45分切れ負けになっています。1日5試合の対戦ということで考えるとかなり絶妙と言えるでしょう。その後派生して誕生した「オンライン七盤勝負」では、同時対局・エキスパートルールともに再現できないため、各競技を1つずつプレイするという形がとられています。順番は大会により規定が異なるようです。

バックギャモンの立ち位置

七盤勝負におけるバックギャモンの「立ち位置」について。ルールの変遷とともに当然立ち位置も変わってきます。
誕生当時の同時対局では、バックギャモンに慣れているかどうかは結構大きな問題だったように思います。桑名七盤勝負で最後に覚えるのがバックギャモンというくらいプレイ人口が少ないこと、また、1手の動作が「ロール」「ムーブ」の2種類であること、ムーブも動かすときには最大4手、動かせないということもありこの判断が初心者には難しいことからかなりシビアだったと思います。
エキスパートルールではほぼ単一の競技×7として考えることができ、同時対局に比べバックギャモンの重要性はかなり落ちたと言えるでしょう。同時対局であっても同じなのですが、バックギャモンが得意であっても勝てる保証がない(どんな相手でも7割勝てれば十分偏っていると言える)ので勝敗という点ではエキスパートルールになって価値が下がったと思います。
オンライン七盤ではもはや完全に単一の競技が7つあるという形になるので、さらに価値は落ちていると考えます。

戦術の変遷

七盤でのバックギャモンはDMP(1ポイントマッチ)で行われます。DMPでは戦術も作戦もなにもないのではないか?という話もありそうですが、そうではありません。当然七盤のルールによって考え方も変わってきます。
まず同時対局ルールの時代ですが、先述の通り慣れていない人が多いです。そのため相手を惑わせる指し手が有効になりやすくなります。具体的には「バックゲーム誘導」です。例えば初手21が出た場合、「6/5 6/4」のダブルスロットを指します。現代ギャモンにおいてこの手はブランダーであることは明白なのですが、バックゲーム誘導も視野に入るならこの手は有力と言えるでしょう。日本選手権でシャハブ氏と対戦したことがあり、DMPとなった試合のレスポンスでシャハブ氏は出目61に対して13/7 6/5のダブルスロットをしています。明らかなバックゲーム誘導です。このような手が同時対局ルールで有効になりやすいのは「相手に一方的に時間を使わせる」という目的があるからです。バックギャモンの戦術の幅と慣れは時間のマネジメントに大きな影響を与えることとなります。
ところがエキスパートルールになるとこれが通用しなくなります。単一の競技として見る向きがあるからです。当然単一の競技としてみた場合初手21でのダブルスロットは悪手になります。が、私は桑名七盤勝負においては、初手21をもらったら今でもダブルスロットします。バックゲーム誘導は必ずしも有効とは言えないのですが、バックゲームになっても構わない(相手も慣れていないだろうから時間を使ってもらう)というのも含みにあります。もちろんバックゲーム誘導に慣れていない人がやると大変なことになるので、やりたいと思った人は多少練習しておくことをお勧めします(そもそも、お勧めしませんが…)。
そして現在の桑名七盤勝負では、「バックギャモンの手番」が全体に大きな影響を与えることになっています。桑名七盤勝負の手番を決める手順は以下の通りです。
・バックギャモンの手番を決める。決め方は通常のバックギャモンと同じ。
・バックギャモンで後手の選手が残り6種目の先手後手を1つ決められる。
・以下、交互に残った競技の先手後手を1つずつ決める。
これが大きいのは桑名七盤勝負にも含まれる「連珠」「どうぶつしょうぎ」の存在が理由です。連珠は自由打ちであり禁手はあるにせよ黒有利、どうぶつしょうぎは後手必勝となっています。つまりバックギャモンの後手側は残りのうち「連珠黒」「どうぶつ後手」のいずれかを取るのがもはや定跡となっていると言っても良いレベルです。この辺りは相手を見てということになるでしょうが、桑名七盤勝負は「バックギャモンの手番」の時点からすでに互いの思惑が交錯する戦いが始まっているのです。
オンライン七盤では完全に単一のゲームとして考えてよいので戦術も何もありません。当然引き出しが多い方が強いので最善をやり続けるということだけ考えればいいと思います。

強い人同士の七盤では、バックギャモンの勝敗、ひいてはバックギャモンの手番が大きく影響することもあります。いろいろな意見はあるかもしれませんが、そういう意味ではバックギャモンが七盤にいることは興味深いところであります。実は大きな影響力のあるバックギャモンがいつまでも桑名七盤勝負に残ることを願っております。

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