【バックギャモン】4away-2awayのキューブを紐解く

4away-2away、「残り4点対残り2点」のスコアのことを私は「魅惑のスコア」と呼んでいます。ダブルをテイクさせてギャモン勝ちすればきれいにマッチ勝ちすることができます。今回はこのスコアのキューブを紐解いていきます。
なお、今回出てくる結論は非常に簡単なものです。結論だけ見たい人は最後まで飛ばしてください。そのあとで「どういうこと?」というのを確認するために道中を読み進めるというのでも問題ないと思います。また、この先ここでは「Xaway-Yaway」を「XaYa」と示し、「Xawayクロフォード」を「Xa*」と示します。

リダブルパワーとキューブデッド

バックギャモンのダブルは、最初にテイクした側が次のダブル、リダブルをする権利を持つわけですが、このリダブルがどれほど強いかを示したものを「リダブルパワー」と呼びます。リダブルパワーが強いキューブは弱くなります。が、2a側がテイクするとそれを4倍にすることができません。いわゆる「リダブルパワーがゼロ」という状態で、このような状態を「キューブデッド」と呼びます。キューブデッドであればリダブルのことを考えなくていいので計算が簡単になります。

ギャモンプライス

一般的にギャモン勝ちを増やそうとする場合はそれに見合った勝率の低下をリスクとして負うことになります。ギャモン勝ちを狙う場合、「1点勝ちを2点勝ちにする」ため、ゲインは1点になります。それに対するリスクは「1点勝ちを1点負けにする」ため、2点になります。相手のギャモン率のことは考慮しないものとすると、おおむね「上がるギャモン率1%に対して払えるリスクは勝率2%」であると言えます。この比率のことをギャモンプライスを呼んでいます。この例の場合では、ギャモンプライスは0.5(1/2)となります。

4a2aを読み解くときに必要なマッチ勝率

そしてマッチ勝率の考え方。4a2aからあり得るスコアは、バックギャモン勝ちとマッチ決着を除くとほぼほぼ「3a2a」「2a2a」「4a1a*」のいずれかになります。それぞれのマッチ勝率は勝っている側から見て、
●3a2a→60%
●2a2a→50%
●4a*→81%

ダブルを考えるときの基本

ここは簡単のために「リダブルがない場合」という想定のもとで進めます。
ダブルは「かける側」と「受ける側」で数値も対応も変わるためそれぞれ別の視点で見ていくことにします。

(1)ダブルをかける側

それぞれの期待値を計算します。ダブルをしない場合の期待値とダブルテイク後の期待値を比較し、ダブルテイク後の期待値が高くなるならダブルです。ただし現状で期待値が1を超える場合はツーグッドとなります。
なお互いにギャモンがない場合は、「自分のもらえるゲインと払うリスクの比率」で計算ができます。ダブルすることで得られるゲイン(増えるマッチ勝率)をΔW、払うリスク(失うマッチ勝率)をΔLとすると、ΔL/(ΔW+ΔL)で必要勝率を表すことができます。

(2)ダブルを受ける側

テイクしたときのマッチ勝率がパスしたときのマッチ勝率を上回るならばテイクです。リダブルの権利がある場合は多少条件が悪くてもテイクできることもあります。

4a2aのキューブを紐解く

では本題です。
まずは簡単な「テイクパス側」の判断から書いていきます。
その教区面における、ダブルをした側の勝率をW、ギャモン勝率をWgとします。この場合シングル勝ちの勝率はW-Wgです。
まずパスをする場合、マッチ勝率は60%です(3a2aの勝率)。
続いてテイクして勝てばなんでもマッチ勝ちになります。その確率は相手の勝率を1から引いて1-Wとなります。
問題はテイクして負ける場合です。シングル負けをすると2a2aとなり50%ですが、ギャモン負けをするときっちりマッチポイントを取られるので負けになります。この場合の期待値は、0.5(W-Wg)です。
テイクした場合のマッチ勝率はこの2つの和になるため、(1-W)+0.5(W-Wg)=1-0.5W-0.5Wgとなります。これがパスしたときのマッチ勝率60%を上回ればテイクできるので、1-0.5W-0.5Wg>0.6、これを整理すると、(W+Wg)<0.8となります。この式の示す意味は「勝率とギャモン率の和が0.8を下回ればテイク」ということです。
そして、「W+Wg」とは「勝率とギャモン率の和」ということですが、単純な和で表されるということは、ギャモン率を1%上げるために払う勝率リスクは1%ということも示します。これは「ギャモンプライス=1」ということを表しています。通常ギャモンプライスが1になるということはないので相当にギャモンの価値が高いとも言えるわけです。
そしてもう1つ、W+Wg<0.8ということは、「ギャモンがない場合80%まではテイクできる」ということになります。通常のアンリミテッドでは78%程度と言われていますので、ギャモンが消えた状況のダブルは弱いと言えます。とはいえ2%の差なので通常よりも若干テイクに寄るという程度でいいでしょう(ほとんどアンリミテッドと同じと考えても良いです)。

続いてダブルする側から考えます。
シングルで勝てばマッチ勝率は40%です(3a2aの勝率を負けている側から見る)。ギャモン勝ちであれば50%となります。逆にシングルで負ければ19%となります。ダブルをかけてシングル勝ちをすると勝率50%、ギャモン勝ちはマッチ勝ち、負けはいかなる場合もマッチ負けです。これらをもとに期待値を計算します。
ダブルしない場合のマッチ勝率の期待値は、0.4(W-Wg)+0.5Wg+0.19(1-W)=0.21W+0.1Wg+0.19
ダブルテイク後のマッチ勝率の期待値は、0.5(W-Wg)+Wg=0.5W+0.5Wg
ダブルテイク後の期待値が高ければダブルできるため、0.21W+0.1Wg+0.19<0.5W+0.5Wg,整理して、0.29W+0.4Wg>0.19となります。
しかしこれは机上の計算です。これをもとにすると、「勝率50%、ギャモン率15%」でもダブルできることになります。

これが勝率52%、ギャモン率15%ですが、40点ほどのノーダブルです。これは「次のマーケットルーザーが少ない」ことが理由です。

勝率はほぼ同じ52%、ギャモン率が22%になり、これがダブルするかしないかのボーダーになります。

勝率54%、ギャモン率17%。これは約30点のダブルです。前図より勝率が2%高くギャモン率が5%低いですが勝率が上がっていることでマーケットルーザーが増えたのが理由と考えます。
机上の計算ではすべてダブルするべきとなっていますが、それはマーケットルーザーの多さとも関係があり、単純にダブルポイントを求めることはできません。1枚目だとほとんどマーケットルーズしないため「今ダブルしなくても」となります。2枚目は自陣の攻めが強いのでダブルも強烈に見えるのですが、攻め駒のない4ポイントボードは1手凌げばまだどうにかなる可能性があります。攻めゴマを2枚連れてこられてダンスする場合だけパスになると考えればダブルは考えてもいいかもしれません。3枚目はいい目と悪い目の交換が入るとパスになる可能性が高くなるのでダブルをするべきとなります。おおむね「追加の攻めが利くインナーメイクをできたらダブルを考える」としておくとよいでしょう。
逆に、ハイアンカーを取られたりレースになったりとギャモン勝ちがかなり減ったりなくなったりした場合はアンリミテッドと同じくらいのタイミングと見ていいでしょう。

まとめ

●テイクパスのボーダーは盤面において「相手の勝率と相手のギャモン率の和が80%」。
●ダブルは「自陣を1か所作っていて相手と同等かそれ以上で、追加で攻めるための駒があり、ハイアンカーを取られていない」ならば考える。先手やレスポンスで自陣をメイクできたら次のダブルを考えてもよい。
●それ以外はアンリミテッドとほぼ同じと考えてよい。2点を取るためのダブルは強くはない。

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