【バックギャモン】第1回マカオオープンのあれこれ(6)

前回 【バックギャモン】第1回マカオオープンのあれこれ(5)

8.メイン2日目(2)

メイン2日目のR5まで終わり、残りは8名、無敗が2名、1敗が6名です。これが終わると無敗1名と1敗が4名になります。ところが無敗者はどちらもByeを取っているため次は1敗者にByeが回ってきます。入賞は4名なのでR6を勝ちR7のByeを引ければ入賞確定です。この時点では「同率のときの取り扱い」については特に確認しておらず、この段階ではどうなるかというのがわかっていませんでした。もっともR6を勝たないとほぼ意味がないのですが。

R6開始前に夕食。ここまで勝ち上がった日本人選手は私と松浦崚さんのみ。松浦さんは若手と食事に行ったようですが、私は…

ホテルの部屋でカップラーメン。こういうのもいいでしょうwホテルのコンビニで買ったものですが日本人でもおいしくいただける塩ラーメンでした。大体400円くらい。
実はこれよりも少し前に松浦さんと会っていてR6の対戦について聞いていました。R6で松浦さんとの「日本人最高位決定戦」が行われることとなります。勝てば入賞の見える大一番でもあり、互いに負けられません。

R6 vs 松浦崚(日本)

日本の若手選手有望株の松浦さんとの対戦。まさかこの重要な一番で当たることになるとは思っていなかったですね。さて、前述の通り「入賞確定になる可能性がある」ため、ここで私は「次にByeを引いたときに限り」という条件付きでセトルを申し出ました。同率時の扱いがわかっていなかったのでByeを引けないと入賞にならない可能性もまあまああったためです。セトルの調整も済んで、いざ決戦。
試合は私が1点先行したものの次に今大会初のギャモン負けを食らい1-4に。そこから食いついて4-4で迎えた5ゲーム目、1つ目の山場がやってきます。

ポジション1 黒 斎藤 4-4/11 白 松浦 白のキューブアクションは?

4要素を白側から冷静に見てみると、
・陣地→少し白が勝っている。
・バックマンの状態→割れている分だけ白がよし。
・チャンス→多いとは言えないが先に攻める権利がある。
・ラン→5ピップリード。ほぼ互角。
すべてがちょっとずついいという感じで実戦はダブル。XGは40点のエラーでやや早いとの判定。

これだとダブルを打つか打たないかのボーダー。これよりも陣地が弱いので原図はノーダブル、ということの模様。
結局ここから逆転した黒が4倍をテイクさせて4点勝ち、8-4に。

ポジション2 黒 斎藤 8-4/11 白 松浦 白のキューブアクションは?

5ポイントが埋まって5プラになる14通りはかなり厳しい。次に1を振れないと大体パスになりそう。まあこれだけでもダブルする価値はあるかな、ということでダブル。完成する1手前でこの形なら十分テイクできるので黒もテイクでOKです。5ポイントが埋まらない手は結構どうにかできそうですからね。
実戦はダブルテイク後に黒が逆転して「いつオールインするか」の状況を迎えます。

ポジション3 黒 斎藤 8-4/11 白 松浦 黒の4倍キューブアクションは?

1手前にベアインを完了させた黒。実は1手前にもダブルがあったんじゃないかという話もあるけれど、実戦はここで4倍の「オールイン」。計算できるレベルなので、必要な数字を全部並べつつ計算しましょう。
●ダブルする側
・ダブルして勝てばマッチ勝ち(勝率100%)、負ければマッチ負け(勝率0%)。
・このまま勝った場合のマッチ勝率は91%(7aクロフォードのマッチ勝率)。したがってダブルした場合のゲインは9%(100-91)。
・このまま負けた場合のマッチ勝率は65%(3a5aのマッチ勝率)。したがってダブルした場合のリスクは65%。
→以上から9:65のオッズであればダブルできる。9:65は勝率88%(9/(9+65)=87.8%)くらい。よって盤面勝率88%くらいあればダブルできる。
●テイクする側
これは簡単。パスすれば勝率9%なので、これ以上あればテイクできる。

実際には91%で覚えることが多いですが、90.7%とのこと。盤面勝率は91.2%なのでわずかなパス。でもどちらも四捨五入すれば91%だからきわどいよね。よくノータイムで行ったな、これ…今にして思えば「なんてことしてくれてんだ」と思いますよ。本当に。
実戦はテイクされたものの何事もなく勝利し、日本人最高位となりました。

試合が終わったのが21時過ぎ。もうさすがに今日は終わりでしょうと思ってケータリングメニューにあったビールとワインを1杯ずつ飲んでホテルへ戻って落ち着くことに。少しするとR7の組み合わせが発表され、Byeを引けなかったことがわかりました。ごめん松浦さん、私はギャモン運はあったけどそれ以外の運はなかったみたいだ(その後大阪オープンのドミトリー代を私が出すことで簡単なセトル完了ということにしたw)。そして同時にこの先Byeを引くことがないことも確定します。よっしゃこうなったらMAXで試合をやって優勝してやろううじゃないの!ということで確認したR8の相手は無敗のTobiasさん、その場合4名が1敗で残ることになるので純粋なベスト4のトーナメントになるからです。あとから計算したのですが、このByeは9000HKDの価値があるBye引きで、ここでのByeの価値がめちゃくちゃ大きかったじゃないのよ。大会後、そのことをある人に話したら「そんなこと言うならバカラでもやっとれ」と言われてしまいましたwたくさんギャモンできるんだからそれでいいじゃないか、ということで。なるほどなぁ、そういう考えもあるのね。
※もちろん悪気があるわけじゃないというのはわかってますのでw

ここで突然初日の話に戻るんですが、初日私はほぼ1000HKD紙幣しか持っておらず、食事代の支払いに少し小さなお金を用意しなくてはならなくなってホテルロビー横のコンビニで小瓶のお酒を買っていたんですね。そのおつりで支払えたわけですが、ここだけの話、R6のあと部屋にもどってそのお酒も軽く飲んでましたwここで飲まないと飲む機会ないと思って…

で、その後何が起きたか?
LINEに着信が来ます。相手はMochy。
「すみません、もう1試合あるので戻ってきてください」
なんですと?連絡が来たのは現地時間の22時過ぎ。マジですかい。
ということでちょっと休んで(飲んじゃったからw)から着替えてRIOへGO。
早速試合…とはせず、少し水を飲んで休んでから「順位決定」について確認することに。残り5人でとても重要なところですからね。確認したところ「同じラウンドで敗退した場合はすべて同率としてスプリット」ということでした。実はこの時点で負けても4位タイで入賞だったようです。賞金は10000HKDの半分、5000HKDになっちゃいますが(同率4位が2人出るので)、この時点でマカオオープンの入賞までが確定していたわけです。

R7 vs Tobias Hellwag(ドイツ)

ドイツの選手で、バックギャモンジャイアンツにも名を連ねる方です。ここまで唯一の無敗です。

ポジション4 白 斎藤 4-0/11 黒 Tobias 黒のキューブアクションは?

あまり4点負けることもないし、穴も開いてるし、こういうのは大体テイクなんですが、ピップ差27というのがさすがに重すぎてパスらしい。アンリミテッドはテイクパスのボーダーなので「大体テイク」は合っているんだけど、スコア的にはパスのほうが良いと。
これをテイクするとギャモン負け。これをギャモン負けするんだなぁ。厳しい。次のゲームも落として4-5になった第6ゲーム、試合は急展開を迎えます。

ポジション5 白 斎藤 4-5/11 黒 Tobias 白のキューブアクションは?

打つ側からすれば「これ結構厳しくない?」と考えるわけで。ただスペア配置とエースの1枚が良くないのが問題でテイクできるようです。結構怖いけどね。参考ポジション2つ、以下の2つはわずかに駒の配置を変えていますが、これだとどちらもパスになります。駒の配置がかなり改善されているからです(どちらも100点程度のパス)。

原図はテイクが確定というくらいのダブルなので実はきわどいところだった模様。実際そのきわどさが仇となり逆転されて今回の大会全体通して一番の勝負所を迎えます。
※JBS会報に載りますが今回の大会で重要な局面のため紹介させていただきます。

ポジション6 白 斎藤 4-5/11 黒 Tobias 黒の4倍キューブアクションは?

怖いね。怖すぎる。何せテイクしていい目を振られるとほぼギャモン負けなのでテイクすること自体がオールインに近くなります(ギャモン負けか、そうでなければ早めの8倍が打てそうになっているかなので)。ここはじっくり時間を使いましょう。
・黒は2も5も振らなければ3回耐えられるかどうか。6を振ると3回耐えられないかも。
・黒が必要なのは「(2→5)または(5→2)→5」の3段階。ボードキープのための猶予は3回だが、その間に3段階必要なこの形はまあまあのハードモードではなかろうか?
と考えるとこの局面は「黒はなかなかなハードモードを抜けると結構なギャモン勝ちになる」ということになります。言い換えると「勝率は高くないがギャモン率が高い」局面で、このスコアでは4倍を打つ価値は下がっています。実は似たような局面をパスして「XG先生大激怒」の経験があり、それを思い出したということもあります。はい、Mochyとの対戦でですね。試合後そのMochyとお話しし、「4倍はブランダーだと思う。パスするんじゃないかと思ってひやひやした」とのこと。実際4倍リダブルは大ブランダーでした。冷静にこれをテイクすると、黒はこの後31→31→64と振って崩壊するのです。

ポジション7 白 斎藤 4-5/11 黒 Tobias 白の8倍キューブアクションは?

この手の前に黒が振った64(9/3 6/2)で「崩壊」が確定したので64を見た瞬間にキューブアクションを考え始めていますが、「こんなのオールインするやろ」と即断。この形になったらオールインする価値があります。ほぼ時間を使わずに8倍ダブルを決断。消費した時間は写真を撮るための数秒のみ、即断即決のオールインは横で観戦していた来住野さんをしびれさせたと聞きます。実戦は8倍テイク。解析結果もダブルテイクで問題なし。今すぐこれをヒットすることはできなかったものの2枚エンターした後に66を振って一気に決着をつけることができました。

23:30、ベスト4進出。
この日の5試合に共通していたのは「強気を取り戻せた」ということでしょうか。ずっと弱気が祟って勝てなかったのですが、自分のいいところが返ってきたような気がします。それと、良くも悪くもいつも通りという感じもよかったかもしれません。やっと自分のいいところが出た5試合だったかと思います(PRは別にして)。

それではここで、おまけのコーナー。

おまけ1。4-5の4倍の局面で黒に振られて嫌なのは2ですか?5ですか?
どちらも嫌だけど、私は2のほうが嫌です。2を先に振られるといつまでも5の飛び出しチャンスが残るのに対し、先に5を振っても結局2を振らないことには解決しないので。皆さんはどうですか?

おまけ2。今回スコアシートにいつもと違う記号を入れています。撮影をしていないのでどこで写真を撮ったかわからなくならないように「p」を丸囲みにして書いています。それでも結局は書き洩らしとかあったのでクロックを見て判断しているんですがね…

おまけ3。今回スコアボードをもっていかなかったんですがもっていけばよかったですね。R6からはMochyが貸してくれました。R7勝ち上がった後で「スコアボード持っています」とLINEしたときは「勝ち上がっている人が使うべきなので持っていてください」とのこと。ありがたやー!

深夜の決戦を制し、ようやく就寝することができます。おやすみなさい。

とすんなりいけばよかったんですけどね。
いよいよメイン最終日です。その模様は次回にしましょう。

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