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自分語り Part1


無色透名祭の第2回の開催が予告されましたね。
私は第1回の無色透名祭に参加したので、その当時のことを思い出しながら書いていきます。
その時の曲↓


最初はチャンスだと思った

白背景に黒字幕、作者は完全匿名。可愛い女の子のイラストを依頼するツテも金もなければ、当時知名度も今の300倍カスだった(今も十分カスですが)私にとってはこれ以上ない機会だと思い、参加することはかなり序盤から決めていました。
ボカコレとはまた違うベクトルでの勝負ができると思い、戦略を練るために公式サイトに目を通したのですが、

あれ、このレギュレーションガバガバじゃね……?

というのが正直な感想。当時の記憶が正しければ、字幕は字幕でも、大きさを変えたり移動させたりが可能で、ただの歌詞表示に使うにしては勿体無いほど字幕で遊ぶことができる仕様でした(おまけに後からフォントの制約も緩くなったのでより自由度は増したね)。文字PVに詳しい知人もこのレギュレーションの緩さを同様に感じていたようで、身内で少し話題になったりした程。
どこまでが許されるかを知った上で、次に何をすれば他の応募曲と差をつけられるかを考え始めます。

サムネで釣ろう!

星の数ほどある曲の中で、最初の1再生を優先してもらうには再生前に得られる情報が大事になってきます。今回の場合P名が伏せられていて、ネームバリューの部分は皆平等となるので、曲名とサムネが全てとなるわけです。私なりに考えた結果、
・タイトルは少し長めにして視覚的に目立たせ、ネタ感を漂わせる
スキャット部分を字幕に起こしたものをサムネに採用し、奇を衒った見た目にする
という戦略を取ることとしました。

有名どころのボカロ曲は、タイトルがカタカナ英単語1個みたいなのが多く、それを真似して短く曲名をまとめる人が多数だと考えています。その中で文字量が多いタイトルの動画を入れれば、曲一覧を考えなしにスクロールしている間でも視覚的に目立つのではないかという戦略です。「謎の勢力」というワードは半分くらいネットミームに由来しているもので、サムネだけではどんな曲なのか想像がつかないような、その辺も喰いついてもらえたらとか考えていました。
スキャットを取り入れるという発想は必ずしもサムネの為に生まれたわけではありませんが、サビ歌詞や曲タイトルをサムネに設定する中で「あ」が不規則に並んだ画があれば興味をそそるんじゃねぇかな、という感じ。


歌無しパートは潰せ


先述の策を置いた上で、運良く1再生をしてくれた後のことについて考えていきます。
レギュレーション上映像で歌詞表示しかできないなら、間奏などの歌がないパートに入ったら真っ白な画面を表示することになってしまいます(コードを表記してる人ならいたけど)。それだと視覚的に満足感を得られないのではと考え、この曲は間奏を潰し、イントロ・アウトロを歌で埋めるという工夫を施してあります。
その他にも、
・歌詞表示の位置が自由であるなら、穴埋めのような歌詞表示にして歌自体に穴が開く演出が刺さるのでは?(アウトロ)
・字幕の大きさが自由であるなら、1文字を共有して複数の歌詞に跨らせる演出が可能なのでは?(サビ)
・歌詞のルビ振りが可能であるなら、当て字のルビを使えば印象的なのでは?(Bメロ)
といったように、レギュレーションを端から端まで活用して視覚的効果を演出する策を随所に散りばめようとしました。


話の段取りが若干前後してしまいますが、ここからは各パートに焦点を当ててより詳細な話をしていきます。

イントロ・Aメロ

2回目に出現する「あ」のスキャットは、直後のAメロと動きが一致するように作られています。1回目のスキャットは2回目から映像ごと音を適当に抜いて作っていて、空いた隙間にピアノの音を嵌め込んでいます。先にアイデアがあったアウトロに対して、曲頭は穴空きの状態から始めるとバランスが取れるかなと思いこの手法に至りました。サムネにも貢献できるし。

メロディがリズム韻を踏むタイプではないので、ベースとコードのトラックを表拍重視で置き、スネア(+Clap)を等間隔にすることで曲のリズムの柱を担わせています。特にスネアのパターンが曲を通してほぼ変化しないことで、他のリズムが多少酔っていても拍子感が狂わないようにできています。(この辺りの話は機会を改めてもう少し深掘りします)

Bメロ

Aメロとサビが同じコードを流用していて、かつ割と王道めの繋ぎ方(4-5-6や2-5-6など)をしているので、それと差別化を図る目的で少し迂回したような繋ぎ方を取っています。具体的には属調(曲がC#minなので、G#min)で7-3-6のカデンツを取ることで、何度もC#mが回ることによる飽きを軽減しています。

真ん中に置いてあるブレイクの直前では前側に12分音符(4分音符を3分割した3連符のこと)、後側に16分音符をつけたリズム(下記画像にて強調表示)を置いています。私が某音ゲー曲から引っ張ってきた配置ですが個人的にリズム崩しの鉄板だと思っています。ブレイクは図らずも拍子変更点の1拍目と重なり、拍子感覚を一瞬迷わせる効果も期待できると思いました。

ブレイクは30小節目1拍目。下から順にKick,Hi-Hat,Clap,Snare

サビ

作曲当時、歌詞構造の発想を広げたいと思っていた影響で、サビ歌詞が3行1組になっているのが特徴となっています。サビはこの曲のうち一番最初に構想した部分でもあり、原初に「4+4+4+3=15拍の拍構造に5拍のメロディーを乗せたら面白いんじゃね?」という思いつきがあったからこそ、全体の拍子を4+4+4+3の可変拍子構造を基準にするに至ったのです。この発想自体は第一印象に残らない程度には形骸化してしまいましたが、サビ始まりから数えて「空言〜」のフレーズ頭、「空虚な〜」のフレーズ頭がそれぞれ5拍間隔となっている点で意匠が残っているとも言えます。

と言う風に、4+4+4+3の構造に重大な意味を持たせた風に説明したにもかかわらず、サビには5拍子が混じっています。これはサビメロの歌い終わりにはより余韻が必要と考えたのが最大の理由で、同時にそれまでの拍子構造を裏切る意外性も狙えるだろうという意図も含まれています。歌・メロディ・音のフレーズ終わりの時間感覚を(個人的に)心地よいものとするためにわざと拍を増やしたり削ったりするという芸当は、私は他の曲でもけっこうやっていたりします。

3行歌詞にして字幕サイズで遊べるというなら、3通りの読み方を持つ漢字を使ってそれを歌詞表示上で共有する演出が一番面白いんじゃねぇのかということで、そうなるように歌詞を書こうとしました。こういう言葉遊びは割と興味がある部類なので。しかし、同時期にアレを作曲していた影響でこのアイデアは限られた時間で十分に練ることができず、「(から/そら/くう)」「(ひと/にん/じん)」の2種類しか達成できませんでした。

2番

作者は2番Aメロで本気出さないと死ぬ病気に罹っているので、当然同じものを繰り返すことは(自分にとって)許されません。これらは既に色々な人が何回も擦ってきた手法を真似しただけに過ぎないのですが、
・AメロはHi-Hatを抜き、ピアノのフレーズを追加する
・Bメロはリハーモナイズし、ベースの動きを細かくする
・サビは長めのピアノのフレーズを追加し、1番サビにはなかった対メロも追加する
といった違いをつけています。(詳細は下のPF概略を参照)

PF概略・対メロの構造について

この曲はAメロとサビが同じコードで組まれているので、ひとつ対メロを作ってしまえば両方のセクションで使い回せるのですが、曲中では対応する対メロが2種類(+Bメロ用の対メロが1種類)存在し、それらがセクションの垣根を超えて交互に現れるという作りを取っています。イントロと2番Aメロで使われるピアノ音源以外の対メロがリリース長めの湿った音(主観)であるのに対して、リズムトラック・Vocal・ベースがリリース短めの乾いた音(主観)で構成されているので、対メロがある部分とない部分の対比だけでも相応の効果を出すことができる仕組みになっています。

この上にドラム一式が見切れています


歌詞について

説明しやすいところを列挙して、大凡の意味を挙げていきます。作者自身が文字PV寄りの映像をよく使うこと、イラストアドバンテージで評価を得るだけがボカロの全てではないよねという(きわめて個人的な)思想、無色透名祭のレギュレーション内でも工夫のしようがある、といったメッセージを畳んであります。
視覚(MV画面上の情報)は機略(運営の指針)に遮られた
・此処は(イラストが映えるMVが持て囃されると言うボカロ界での)定石の通らない街
欠落のあるこの映像(せかい)(=レギュレーション上の情報量の少ないMV)でも
・人は生まれ、硝子は割れる(日常通りの営みが行われる、という意図を込めています / 曲としての本質は普段のボカロ曲と変わらない)
・行き場のない焦点は 何に向けているの?(MVにしか興味がない視聴者を皮肉った表現)

箱庭(動画)に(イラストの)は居なく
他人行儀色(無色透名祭が白背景に黒字幕統一であるため、”モノクロ”の比喩として考えていました)
毒に落とした色素(上に同じ。色が落ちて無くなるため)
・諍う理由はない(作者はこのレギュレーションを不満に思っているわけではない)
・不条理(人口に膾炙するボカロ曲に対しては制約が特殊)
・理は殖える(でもその分新たにアイデアが出るだろう)

・(MVのイラストで差をつけようという)知略を武器に(動画が)栄える夢は(無色透名祭の制約によって)故意に破られた
文学の雄弁な刻(歌詞字幕しか原則表示できないので)
・(無色透名祭の制約によって出来た映像が)つまらない平面(ぬけがら)だなんて誰が決めたことなの?


応募後の動向・なぜ参加宣言をしなかったの?

※ここから先ネガティブな内容を含みます

ハナから曲作るき満々だったにもかかわらず、作者はTwitter上では『参加は乗り気ではない』という嘘を流しました(参加しないとは一言も言っていない)。
一応隠したのは理由があって、
・曲が明らかに井荷麻奈実の作風であり、投稿宣言をすればすぐにどの曲かバレてしまうから
・井荷麻奈実が居るとわかればアンチ共が荒らしに来ると思ったから(当時は自分の曲でもかなり的外れな批判コメが多かった)

というのが本心でした。






まあ結局叩かれたんだけどね!!!!!!!!!!!!!!(スーパー激怒)

レギュレーションもろくに確認せずにちょっと派手な映像だからと言って荒らしてくる[自主規制] 私は今でも根に持ってるからな なあ 投稿者自身が数日間被害を報告できない∴言い返してこないのをいいことに匿名で[自主規制]言いやがって ニコ動コメのそういうところが一番嫌いなんだよ[自主規制]
無色透明祭2回目がどんなレギュレーションになるかわかりませんけど、もし同じようなことが起きて、例えば私の場合よりもっと大規模に荒れたらどうなるんだろうね 無実の罪を突きつけて叩いてくる奴はどうせ出てくるだろうし そうなった作曲者側が可哀想で仕方ないわ

とはいえ、こういう事態は制度上運営がどうこうできる話じゃないだろうから、正しいルールを作曲者側も視聴者側も把握・共有するのが有効な解決策な気がします。私はイラストアドがない状態で勝負できる貴重な機会なので第2回も参加したいと思ってます。私の精神安定の為にも、次に私と同じ被害に遭う人を出さない為にも、みなさんの良識のあるコメントお待ちしてますね。


本文は以上です。最近私を知った人は知らない曲だろうので興味があったら聴いてみてね↓


次回はこれと同時期に作った例の曲について話そうと思います。ではまた!

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